#八

ある夜、私は端末のログを見返した。


過去三ヶ月分。


清掃員だった頃の記録。


現場の住所。


到着時刻。


作業内容。


そして、気づいた。


私が担当した現場の多くが、


私の生活圏に近かった。


通勤ルートの途中。


よく行く店の近く。


休日に散歩するエリア。


偶然ではない。


最初から、私は誘導されていた。


死を見ることに慣れさせるために。


清掃員という職業そのものが、


観測補助員の養成プログラムだったのだ。


端末を閉じた。


何も言えなかった。


怒りも、悲しみも、湧いてこなかった。


ただ、納得した。


システムは、完璧だった。

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