#五
――観測補助員 仮登録
――識別番号:第三一二号
ヘッドギアを装着すると、視界が暗転した。
そして、映像が流れ込む。
路地に倒れた人物。
周囲に人影はない。
ドローンのカメラ映像だ。
私は、静かにそれをただ見る。
人物は動かない。
生きているのか、死んでいるのか、わからない。
未確定。
私が見ることで、確定する。
息を吸い、吐く。
視線を、人物に固定する。
その瞬間、何かが変わった。
映像の中の人物が、微かに動いた。
そして、動かなくなった。
――確定
端末に表示されたその文字に触れた。
ヘッドギアが外れる。
職員が立っていた。
「お疲れ様でした。これで一件、完了です」
「……もう、終わりですか?」
「はい。次の映像は三十分後です。休憩してください」
私は椅子に座ったまま、手を見た。
震えてはいない。
心拍も正常だ。
ただ、見ただけだ。
確定させただけだ。
清掃員の時と、何が違うのか。
あの時も、私は死を見ていた。
ただ、それが「確定後」だっただけだ。
今は、「確定前」を見る。
それだけの違いだ。
それだけ、のはずだった。
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