#九
数日後、マルタが姿を消した。
「第三三号はどこだ?」と私は管理官に尋ねた。
「配置転換です」
「どこへ?」
「上位部門です」
それだけだった。
私は観測室に戻り、一人で昼食を取った。
カフェテリアは静かだった。
他の観測補助員たちも、黙々と食事をしている。
誰も会話をしていない。
以前は、こうではなかった気がする。
もっと、何か……活気があったような。
だが確信は持てなかった。
記憶が曖昧だった。
午後、案件を処理していると、また表示された。
――事象番号 3,821,889
発生確率 6.7%
内容:不明
観測要請:保留
また保留だ。
私は詳細を開こうとした。
――権限不足
そして端末が、追加メッセージを表示した。
――注意:本事象はあなたに関連しています
私に?
どういう意味だ?
だが、それ以上の情報は得られなかった。
私は作業を続けた。
翌日、第六二号も姿を消した。
翌々日、第二四号も。
その次の週、第八号が配置転換された。
観測室は、だんだん空席が増えていった。
そして、ある日。
観測室にいるのは、私一人だけになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます