五話
バッと跳ね起きる。
ハッ
ハッ
ハッ
首。
ついてる。
生きてる。
酷い夢を見た
、気がする。
何ともない。
逆に何があったんだと言いたいくらいに、心臓が跳ね回っている。
フゥーーーー。
息を整える。
何故こんなに乱れているか分からない。
が、何ともない。
ちゃんと自分の体だ。
ここにある。
、、、?
どんな夢だったか、
思い出せない。
、、、
まぁいい。
時計を見る。午前八時二十八分。
、、、
「遅刻確定じゃねぇか」
慌てて飛び起きる。一気に現実に引き戻されたような感覚。
急いで身支度を始める。
クッソ。やらかした。
昨日のワンオペで、思いの外疲労したのか、ここまでガッツリ寝坊するのも珍しい。
あの
クソが。
朝メシなんぞ、食ってる暇は無い。しかし、朝の挨拶はしっかりしなければ。
制服を着て、リュックを背負い、部屋を出る。階段を駆け下り、リビングへと向かう。
そこにある仏壇の前で、手を合わせる。
「お早う。行ってきます。」
これだけは、しっかりしておく。
よし。
バッと再び急いで動き出す。急いで玄関へと走り、靴を履く。ガチャリと鍵を開け、扉を開く。
「行ってきます。」
改めて言い、外へ出る。誰も答える人間などいないが、気休めにはなる。
おっと、鍵を閉めるのを忘れてた。
焦るな焦るな。
あまり寝坊はしないタイプなので、こういった事態では若干焦る。かといって、気を緩めてはいけない。
「よし。」
オーケー。大丈夫だ。
ダッと走り出す。
現在、八時半。始業の時間である。
いくら家と高校が近いと言っても、流石に間に合わない。が、それでも諦めて歩くことは許されない。
変に生真面目なのは百も承知だ。でも、人には変えられない性根というものがある。
そういうこった。
まあ滅多にないことなので、担任には勘弁してもらえるだろう。
優しいし、あの先生。
そう考えながら、走る。
====================
「しっかし、YOUが寝坊とは。珍しい。」
「はい。すいません。」
「いや、いいわ。人間だもの。そういう時もあるさ。」
フゥー
良かった。やはり優しい。
「それより、顔色スッゴイ悪いけど。大丈夫?」
うん?
そんなに悪く見えるか。
「朝、鏡も見ずに急いで出たので、分からないっす。
走ってきたせいかもしれません。」
「ふーむ。まぁ、そゆことなら。いいわ。
体調悪いって感じたら、すぐに保健室に行きなさいな。
体調管理は
「うす。」
なんか妙なニュアンスを感じたが。
まあ良い。
なんとか担任には勘弁してもらえた。
「失礼しました。」
そう言って職員室の扉を閉める。ガラガラ。
現在、八時三十八分。
まだ一限は始まってない。
セーフ。
サッサと教室に戻るとするか。
渡り廊下の手前の角を曲が
「きゃぁ!」
「うおぁ!」
ろうとした瞬間、人が飛び出してきてぶつかりそうになった。
バサバサッと数枚のプリントが舞う。
「あーあーあー。すみません。よく見てなくて、急いでて。」
そう言いながら慌ててしゃがみ、拾い上げる。
ん?
あれ、昨日の課題プリントだ。
あ。
やってねぇ。
、、、
あれ?
昨日バイトの後何してたっけ?
「あのー大丈夫です、、、?」
思わず考え込み、座り込んでしまったところに声をかけられる。
おっと、そうだった。
「ああ、すみません。ちょっと、
はい。プリント。」
ハッと我に返り、立ち上がって手渡す。
てか、うちのクラスの課題プリントってことは、
「ありがとうござ、、、
あれ、──君じゃん。おはよう。遅刻?」
そう言ってパッとプリントを受け取り、その場でトントンと片膝を使って整える。
やはり須山さんでしたか。
「あー、そう。遅刻、」
「じゃああのー課題プリント今持ってる?みんなの分まとめて出さなきゃだからさ。」
、、、
「あー、そのですね、」
「やってない?じゃ、後から自分出してねん。」
こちらが課題をやってないことを察したか、問答無用とばかりにひらひらと手を振ってサッサと職員室へ向かっていった。
流石の須山委員長。判断が早い。
シゴデキというやつだな。
痺れるね。
美女は何をやっても様になるな、と感心する。
須山香穂。
我らがクラスの委員長。
いわゆる、学年一の美女。というやつである。
その美貌に加え、明晰な頭脳を持ち、ハツラツとした性格であることもあり、男子からの人気は高い。
当然、女子からの人気も高い。
その魅力に囚われた者が俺の周りにもひとり。
何を隠そう、石田である。
中学の時、ヤツは無謀にも須山さんに突撃していった。
あのチキン野郎の告白は、俺からすると最高に面白かったもんだ。
石田は誰も居ない時間、誰もいない場所に須山さんを呼び出した。
ひっそりとした告白だった。
その一部始終を、幼馴染の俺は影から見ていたわけだが。
、、、まあ、酷いもんだった。
『あなた誰?』
から始まる告白劇など、誰が見たいものか。
そういやアイツ、須山さんのことはまだ諦めてないとか言ってたな。
高校では同じクラスになったのだから、何かあれば面白いんだが。
っと、こちらもサッサと教室に向かわねば。
急げ急げ。
一限が始まってしまう。
死ぬにゃいい日だ。 言描き @shousetsusukisuki
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