四話
みた。
見た。
見てしまった。
今度は足が勝手に動き始める。
さっきはピクリともしなかった足が。
勝手に身体が前へ進んでいく。
校門をよじ登って越える。
ザリリと校庭の砂を踏みしめながら。
ハッ
ハッ
ハッ
息が乱れる。
見た。
見てしまった。
人が、
足が止まってくれない。
確かめたいとでも言うのか?
死体を?
わざわざ?
石田の言ってたことが脳内を過ぎる。
『死体の無い飛び降り自殺』
本当かどうか?
バカバカしい。
筈だった。
だった。
「あー」
「みりゃれひゃったか」
なにかが、立っていた。
血に塗れて。
人ではない。
人であるはずがない。
頭は斜めにほぼ半分、潰れた状態。首がおかしな向きに曲がっている。右肩から四分の一くらい、胴体が潰れている。右腕は足元に落ちており、脚だけは無事なのか、直立している。
明らかに、致命傷だ。
「こんかいはあしがこわれなかったからねー。
すぐにげられるとおも、思ったんだけど、
こんな早く現場に向かって来るとは。
スプラッタ映画とか好きなタイプだったり?もしかして。」
片方しか残ってない目が、こちらを怪訝に見つめている。
少しずつ、首の角度が真っすぐに戻っていき、シュウシュウと音を立て、半分ほどだった口と舌が元に戻ってゆく。
潰れていた肩がメリメリと盛り上がって、かたちを取り戻す。
「なんなんだよ、それ。」
思わず出た声。震えている。
訳が分からない。
身体が再生する?
何故?
「これ?、、、うーん。なんて言うんだろうね。」
落ちていた右腕を再生中の肩に押し当てる。
「君らの言葉だと、"不死身"ってやつ?」
メリメリ。
メリメリ。
シュウシュウ。
シュウシュウ。
段々と、それは元の形を取り戻していく。
「ま、とりあえず。」
「死んで?」
そいつは、ニタリと笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます