バラバラになった身体
村田鉄則
バラバラになった身体
「身体がバラバラに・・・」
「嘘でしょ・・・」
立方体状の食品工場の一室、一面真っ白な部屋でそれは発見された。
その部屋は天井、四方の壁、床がどれも四畳半の大きさで統一されていた。
真四角まみれの部屋で入り口から見て、両脚、腰部、両手、胸部、そして顔面を潰された頭部、といった順番でその身体は並べられていた。
バラバラと言っても身体の内蔵物を切るのは難しかったのか、きちんと切れてない部分もあった。
「誰がやったのかしら」
「わからないな・・・今の状況だと」
第一発見者である工場長とその妻は、この事件の真相がわからず、両者とも頭を抱えていた。
そして、AI探偵にこの事件の解決を頼むことにした。
AI探偵は、リアルタイムで、ユーザーが持つカメラに写ったものをビックデータを使って分析し、犯人当てやトリック当てをするサービスのことだ。一回百万円と高額だが、事件の真相を知りたい夫婦は身銭を切って頼んだ。
AI探偵は現場の様子を見て、混乱を示した。
『私には難しすぎます』
無機質な機械音声が真っ白な部屋で響く。
「いや、何を言ってるんだ!百万円も払ってるんだぞ!」
『すいません・・・こんな状況初めてで・・・そもそも、誰が殺されたんですか?』
工場長は眉間に皺を寄せに寄せた。
そうなのだ。そこがわからないのである。
『まあ、良いです。とりあえず、容疑者を全員集めてください』
部屋に、従業員エフ、従業員エヌ、従業員エムが集められた。
この三者が事件当日、アリバイが無い者だったからだ。
エフもエヌもエムも皆、施設内の給電室で昼休憩を取っていた。
この他の従業員は工場内で検品作業を続けていたので、アリバイがあるのだ。監視カメラにもきちんと映っていた。
『誰がエフさんでエヌさんでエムさんなんですか?』
「ええっと、俺も忘れっぽいからな…」
そう言いながら、工場長は頭を掻いた。
『それだったら、何もわからないじゃないですか?』
「まあ、そうなるな…」
『だって、
時は22世紀。工場ではアンドロイドが働いていた。
会社の中で生身の人間は、工場長とその妻のみだったのだ。
数十年前、アンドロイド法にある項目が追加された。
美形アンドロイドと暮らし、パートナーにする人々が増えたせいで、人口が減り続けた結果から出来たものだった。そこで、アンドロイドの顔面は政府が規定した物以外が存在してはならないと決められた。つまりは、この国では、どの場所の、どのアンドロイドも全く同じ顔をしているのだ。
誰が従業員エスを壊し、身体をバラバラにし、配線まみれにしたのか?
結局のところ、AI探偵に解けることは無かった。が…後に、自身のレプリカを秘密裏に作り、入れ替わりトリックを行ったエフ氏が犯人だと判明した。皆が同じ見た目なので身代わりになる素体が簡単に手に入ったのだ。事件の謎を解いたのは生身の人間である探偵だった。
こちらは五十万円で済んだ。
バラバラになった身体 村田鉄則 @muratetsu
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