第6章 「文化祭本番とドキドキの瞬間」
文化祭当日。校舎は色とりどりの装飾と生徒たちの熱気で溢れていた。咲(蓮の身体)は、普段通りの笑顔を保ちつつ、心臓が早鐘のように打っていた。
「桜井、今日は気合入れていこうな」
「う、うん!」
蓮(咲)の声に、咲(蓮)は胸の奥がぎゅっとなるのを感じる。入れ替わっているからこそ、互いの存在を意識せずにはいられなかった。
教室の模擬店は大盛況で、二人はお客さんの対応に追われる。
「いらっしゃいませ!」
「ありがとうございます!」
慣れない蓮の身体で大きな声を出す咲は、少し戸惑いながらも、笑顔を絶やさない。
すると突然、クラスメイトの子どもが転びそうになり、咲(蓮)は咄嗟に手を伸ばして支える。
「大丈夫?」
「ありがとう…!」
その瞬間、蓮(咲)の手が咲(蓮)の手に触れ、二人はお互いを見つめた。周囲の喧騒も、まるで遠くに消えたかのように感じられた。
「……桜井、手、冷たいな」
「えっ…そ、そう?」
咲(蓮)は顔を赤くしながら、視線を逸らす。心臓の高鳴りが止まらない。
午後になり、教室の出し物の準備も一段落。二人は片付けを手伝いながら、自然と近くに座ることが多くなった。
「……桜井、今日はありがとうな」
「うん、私も楽しかった」
その瞬間、手がまた触れ合い、二人の間に甘い静寂が流れる。
夕方、文化祭の終了後。教室は片付けの最中、二人きりになった。窓から差し込む夕陽が、二人の髪を赤く染める。
「……ねえ、蓮」
「ん?」
「今日は、ありがとう。私、ちょっと勇気が出た気がする」
咲(蓮)は心の奥で、蓮の存在がどれだけ特別かを改めて感じていた。
蓮(咲)もまた、普段は見せない笑顔で答える。
「俺もだ。桜井と一緒にいると、なんだか落ち着く」
二人は自然と手を取り合い、その温もりに胸を締め付けられた。
その夜、帰り道。夕焼けの校庭を二人は歩きながら、文化祭の余韻に浸る。
小さな胸キュンの連続、手が触れた瞬間、目が合った瞬間――どれも、二人だけの秘密の思い出になった。
「……私、蓮のこと、もっと知りたいな」
咲(蓮)は心の中でつぶやく。
「……俺も、桜井のこと、もっと知りたい」
蓮(咲)も同じ気持ちを抱き、二人の距離はさらに近づいていった。
入れ替わりのドタバタはまだ続くけれど、胸の奥のときめきは確かに育っている――そんな一日だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます