1-3 宿屋にて お別れとお土産

 空がオレンジ色に染まり、街の灯りが揺れ出した夕刻。

 ユリオは身支度を済ませ、宿屋の夫婦に受付で報酬を受け取り、別れの時を過ごしていた。


「今日の夜まで、泊まっていってもいいんだぞ?どうせ空き部屋ばっかりだしな」

「いえ、十分お世話になりましたので」


 頭を深く下げて礼を言うと、店主は名残惜しそうに入り口に置いてある箱を指差した。

 そこには、ユリオが整頓した倉庫にあった品々が入っている。


「なにか使えそうな物があったらどれでも好きに持って行ってくれ」

「いいんですか?」

「もちろんだ。こんな在庫処分みたいなもので悪いが、旅の役の立ててくれ」


 さぁさぁと勧められて覗き込む。

 自分で入れたのだ。中身はだいたいわかっている。


「なら…」


 と、ユリオは色が違う三冊のノートと、タオルを二枚貰った。


「それだけでいいのか?」

「はい。ちょうど新調しようかと思っていたので」


 もらった物をボディバッグに詰めていると、今度は女将さんから紙袋が差し出される。


「これ、持って行って」


 渡されたのはお弁当と地図だった。

 そして「この街にまた来た際は顔を見せて」と二人は笑顔で送り出してくれた。

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