第5話
白く細い指が、私の首筋を下から上へ優しくなぞる。そのまま首の後ろまで手がまわされ、髪を少し掴まれる。そのまま後ろへ引っ張られる。
私は今まで感じたことのない感情を抱いた。
-もっと私を飼いならして-
そう思っていると、この体勢のまま歩かされ、ソファに座らされた。
前屈みになる静の長く綺麗な黒髪を、耳にかける。
私を見下ろしている、熱を持ち艶っぽい瞳を見つめかえす。これだけで私の心臓は早くなり、呼吸が浅くなる。
これ以上見つめられたら、どうなってしまうのだろう。
何も出来なくなってしまうだろうか。
知りたい。その先がどうなるのか…
「‥夜」
「なっ何?」
「…はい。でしょ?」
抑揚のない冷たい声で言われる。
その声と連動するように心臓は早くなる。胸が締めつけられ、言葉が出てこない。
もう一度、名前を呼ばれる。
ただ名前を呼ばれる。それだけで静の特別になれた気がしてしまう。
「は‥はい」
どうにか声を発する。
静は少し嬉しそうに目を細めながら、首の後ろにまわしていた手を離す。その手は、静の元へ戻らず、今度は私の頬に触れてきた。
優しく頬を撫でられ、そのまま人差し指と中指で唇も撫でられる。
その感覚に体の内に熱がこもり、呼吸が乱れる。
唇を撫でていた指が、いきなり口を割って入ってきたので思わずその手を掴み、静を見上げる。
静は指を二本、口の中に入れたままじっと私を見ている。まるで私が掴んでいる手を離すのが当たり前のように…
私は仕方なく手を離す。
「それでいいのよ。良くできました」
そう言いながら、口内を指で撫でまわされる。
私はもう考える事をやめ、その指に集中する。キスをするように舌を絡めながら舐め上げる。弱く吸い、少し歯を立てながらまた舐める。どうせなら指じゃなく、静の舌が欲しいと願いながら舐め続ける。そのうちまた私の呼吸は浅くなり、切なくなって静を見上げる。
見上げた先にある顔は、少し頬が赤く、呼吸が早いように感じる。私は静に触れたくなり腕に手を伸ばす。今すぐ触れたい…そう思いながら口内にある指に舌を絡めていると、急に指を抜かれた。
「夜来さん。あなたの首の赤い印は最近目立ち過ぎです。もう少し節度をわきまえて行動するように。以上です」
何事もなかったかのように机に戻り、資料を見だした静に、急に突き放され寂しいような。でも嬉しいようなわからない感情に支配されながら、
「生徒会長、もしかして他の子達みたいに私とヤリたい?別にいつでも空いてるからいいよ」
そう言いながら、静のそばに行く。
近づくと、少し低い声で名前を呼ばれ、体が硬直する。
「私はあなたの遊び相手の中の一人ではないのよ」
そう言い放ち、私を見据える。
その切長の眼で見つめられると何も出来なくなってしまう。
ずっと私だけを見てほしいと願ってしまう。
その願いが叶うなら、あなたに全てを捧げても悔いはない。そう思いながら…
「申し訳ありません。言いすぎました。」
素直に謝る。
「理解できたのならいいわ。もう帰っていいわよ」
もう関心がないかのような口調でいわれ、生徒会室を後にした。
生徒会室での出来事以来、静とは全く何事もなく、つまらない学校生活は過ぎていった。
もちろん、静以外の子達とは遊んでいたが、首にキスマークは付けるなと言っていた。
たまに静と目は合うが、ほんの一瞬で、それ以外何もない。そんなつまらない毎日が、2年生の最後まで続いた。
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