第8話
2. 運命を焼く者
巨人が吠えた。
絶対零度の吐息がイグニスを直撃する。触れるもの全てを分子レベルで崩壊させる死の霧。
だが、イグニスはその中を、まるで小雨を浴びるかのように悠々と歩き続けた。
「……師匠に教わったことがある」
イグニスの脳裏に、白銀の髪を揺らしながら不敵に笑う師匠の姿が浮かぶ。
『イグニスよ。お主の火は、いつ
「当時は意味が分からなかったが……。最近、ようやく少しだけ理解できてきた」
イグニスが両手を前に出す。
その手のひらの間に、一粒の火花が生まれた。
それはもはや『ファイアーボール』という名称では括れない、異質のエネルギー体だった。
黒く縁取られた、青白い輝き。
それが生まれた瞬間、迷宮の「法則」が狂い始めた。
巨人が周囲に展開していた『絶対零度の結界』が、悲鳴を上げるように歪み、逆流し始める。
「熱は加速だ。加速は時間を歪め、空間を削る。……お前の理不尽な冷気ごと、この場の『絶望』というシナリオを焼き払わせてもらう」
イグニスの魔力が、その小さな球体へと吸い込まれていく。
極限まで圧縮された熱量は、ついに特異点へと到達した。
「極点術式――『
彼がその手を離した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます