第4話 愛は五段階評価じゃ測れない――痛みを数値にできない料理人は、表情で測られた
「正木さん、痛みはありますか?」
「はい。」
「一番痛いを5とするとどのくらいですか?」
いや、痛いは痛いだろ。
五段階評価しろと言われても。
イレギュラーな質問に私は必死で考えた。
日常感じない様な強すぎる痛みは4か5ってのは分かる。
難しいのは2と3だ。
私は痛みがどの程度なのかただでさえ痛い頭を必死に巡らす。
……非常に面倒臭い。
考えるのを諦めかけた時、奇跡のように最適解が降りて来た。
謎は全て解けた。
考える余裕があるというのは、多分まだ大丈夫という事。本当に痛い時は痛いしか考えられなくなる。
「2です。まだ我慢できる程度の痛みです。」
我ながら的確。
だけど看護師さんは少し訝しむように言葉を切り、私の目を見てゆっくりと言った。
「我慢しなくて良いので、痛いときはナースコールを押してくださいね」
「はい」
我慢が必要な程つらくなったらそうします。
ある日
「ちょ。
「黙っとけ。」
看護師さんは私ではなく
「五段階で今何段階ですか?」
「4です。この子我慢しいで、痛いとかよう言わん子なんですよ」
ちょ!!子供扱いすな!!
看護師さんが去って行って私は言う。
「ほんまにやめて!最大が5やで?4とかそれもう陣痛レベルやんか。恥ずかし事せんといて」
ちなみに私にとっては陣痛より顔をぶつけて歯の骨が溶けた時の方が強烈だった。
「アホか。人生の全部の痛み
「じ、人生じゃなく、この入院前提?!」
「考えるまでもないやろ。陣痛と比べたら今後一生痛み止め飲めやんで」
「た、確かに」
そもそもの基準が間違っていたとは目から鱗。私はこの新しい発見に自らの考えを改める事にする。
いやいや!そうではなくて!!
危ない。また言いくるめられるところだった。
「けど痛いぐらいで看護師さん呼んでええんか?看護師さんて忙しやろ。私極力迷惑かけたないんよ」
外来ですら散々邪険にされてきたのだから病棟でならもっと嫌がられるに違いない。私は病院生活を満喫したい。ゆえに看護師さんに疎まれたくはない。
「ほっといて何かあったら余計迷惑や。ええか、今ぐらい痛なったら絶対に呼べよ。治す事だけ考えよ」
「よ、余計迷惑か。わかった。ありがとう」
迷惑と言われたら私は黙るしかない。
次に痛みで看護師さん呼んだ時、彼女は顔の絵を描いた紙を見せた。表情評価スケールだ。
「正木さん。今何段階ですか?」
ちょ。私何やと思われてるんですか!
ちゃうんです!私看護師さん煩わせたないだけなんですよ!
「これ何ですか?もしかして小児用ですか?」
看護師さんはにっこりと、慈愛の笑みを浮かべる。その微笑む眼差しが飛び込んできて、どきりとした。看護師まじ天使!
私の耳に届いたのは、ゆっくりとした、子供に言い聞かせるような声。
「具合悪くて会話できない人用です。今どんな感じですか?指さして下さい。」
いやそれ絶対嘘!!!
くそっ!多分なんか情報共有された!
それもこれも
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