ボーナストラック 弾き手は空からやってくる

奈落。

そこは地の底に存在する暗黒の世界。

地獄より恐ろしい場所とも呼ばれる世界に、まばゆい光に照らされる。


「やぁやぁ、ラク。また来たよ。」

光に包まれし、美形の男性がポージングしながら降ってきた。


奈落の神であるラクはそれをみて、

「ジョルヴァンか、うむ…………よく来たな。」 

笑顔で歓迎した。



「オスカー殿はすごかったよ。君もコンサートにくればよかったのに。」

残念そうな顔で話す。

「我は奈落からは出ることはないよ。わかるだろう。」

「そうかい? しかしオスカー殿も有名になったね。」

「うむ」

「私たちがチェロをつくり直したおかげだね、あの素晴らしい演奏を聞いて狂うことはもうないよ。」

オスカーにかかっていた、穢れはもうない。

彼は自由なのだ。

「ふむ、やつは天上でも上手くやってるようだな。」

ラクは誇らしげに微笑んだ。

「そうだよ、私達以外の神たちにも気に入られたみたいでね。引っ張りだこみたいだね。」

「…………そうか。」

ラクの声は、少し低くなる。

「ラク…………寂しいんじゃない?」

「寂しくないといえば嘘であるな。」

我慢できず、寂しさを隠せない声をはきだした。

「だったらさ、お前は専属の弾き手だから奈落にいろ……って言わないのかい?」

「ふん、言わないさ」

「なぜ?」

ジョルヴァン大袈裟に首をかしげる。

「やつは地上生まれだ。こんな地の底よりも煌めく天上のほうがよかろう。」

そうオスカーは地上の人間だ、本来はここにはいない生物なのだ。

「…………けどさ」

「やつはどう思っているかは知らんがな、我は友人だと思っているよ」

「では尚更戻ってほしいと思わないのかい?」

「いいのだ、もういいのだよ。」

息を吐くように言った。それはまるですべてを諦めたような声だった。

ジョルヴァンにそれは友と離れる覚悟を感じさせた。

「そ、そうかい」

「…………………」

うつむくラク。表情は読めない。

それをみてジョルヴァンは慌てて提案した。

「そ、そうだまた奈落のみんなで芸術大会やろうよ。彫刻でもつくろう?」

大袈裟に身振り手振りしながら、彼は言う。

「…………うむ」

「私はドラゴンでもつくろうかな? ラクはクラムボンかい?」

「我は……。」


奈落の上部に、光の線が走った。

「うん?流れ星かな?」

ジョルヴァンは目を凝らしてみる。

「奈落では星ではみえんぞ、…………は!?」

空がみえないから流れ星も見えるわけがない。

そのはずだった。

しかし、その星は確かにあった。それはどんどん近づいてくる。

まさに流星のように。

それは徐々に大きくなっていく。

細長いそれは星屑のように、仄かに散らばり光っていた。



「こ、これは流星列車だね。」

それは夜空の色の流星列車だった。

「なぜだ!?ここには駅などないぞ。」

予想外の出来事に思わず叫ぶラク。


列車は目の前で、完全に停車した。


そして豪華な扉が、音を立てて開く。






「ラク、ただいま。あっジョルヴァンさんもどうも。」

中からはオスカーが出てきた。



「………………オ、オスカー!?」

「うん、コンサート終わったからさ。帰ってきたよ」

「な、なぜ」

「なぜってまぁトトや皆に楽器を教える約束したからさ。楽器も買ってきたよ。」

当たり前のようにいうオスカー。その後ろにはドラムやトランペットなど様々な楽器があった。

「そ、そうか」

「ジョルヴァンさんもいるから、みんなで演奏する?」

「いいね、わたし実はハープも弾けます。」

どこからともなく金色のハープをだした。

「いいですね、じゃあ今日は音楽祭ってことでね?ラク」

笑いかけるオスカー。もういつでも演奏できそうな顔だ。


「………………」


「ラク?」


「そうだな、やろうではないか、音楽祭を。」


ある日から奈落で、音楽がたえることはなかった。


それはオスカー達 『奈落の音楽団』が演奏してるからかもしれない。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

奈落のチェロ弾き ジミー @JimmyB

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画