第8話 再び
カマルは静かな寝息をたてていた。
いつの間にか眠ってしまったようだ。
続きは、またにしよう。
キダイは、窓辺から見える月を見上げて呟いた。
|(明日だ1年で最も美しいと言われる白銀の満月)
なぜだか分からないがキダイには確信があったのだ。
ここで魔女に会えると。
月は静かに街を照らし夜は静かに更けていった。
昼間の街は、とても賑やかだった。
街の中心にあたる位置に市場があって野菜や果物、魚に肉、それにきらびやかな衣装や雑貨を売る屋台がひしめき合って並んでいる。
道行く客に声をかけあっている。
キダイとカマルは、朝日とともに起きて海辺を散歩し街の屋台で軽く朝食をとっていた時のこと、隣のテーブルから魔女に関する会話が聞こえてきた。
「今日は、その…
と話を中断して思いっきり僕たちとその会話をしていただろうと思われる男の人と目が合ったと思う。
確実にカウィは、合っただろうな。
聞き耳と言うか、ガン見ってやつ(笑)
やっぱり魔女は、いるんだ。
カマルは、嬉しくなった。
その会話の続きは、聞こえなくなっちゃったけど、早々と朝食を済ませユウへのお土産を買う為、市場を散策した。
沢山の人達が行き交うなか、ふと立ち止まる。
誰かに見られてるような気がした。
その視線の方に顔を向ける。
当然僕には、見えていないが感じるのだ。
不思議とキダイも感じたようで屋台と屋台の間、向こう側に建つ建物の隙間を見つめた。
薄暗く人が通れるほどの隙間もない建物との間。
だけど何故かその間から確かに人の視線を感じるのだ。
キダイと僕は、向こう側に行く為に通り抜けできる道はないかとまわり道をしてその建物と建物の間に近づいて行った。
すると
「ニャァァ!!」
驚いた僕は、尻もちをついてしまった。
黒猫が飛び出してきたのだ。
それにはキダイも驚いた様子だったが尻もちまでは、つかなかったようだ。
すぐ僕を立たせてくれた。
「大丈夫だったかい?」
「うん、だけどビックリしたよ!まさか猫だったなんて」
二人して吹き出してしまった。
そんな二人は、先ほどの黒猫が、少し離れた屋台の影からこちらを見ていることに気づいていなかった。
「今日の報酬といきましょうかねぇ。」
黒猫は、そう小さく呟くと姿を消したのだった。
そう、煙のように…。
「ねぇキダイ、魔女に会えるかな〜?」
僕は、期待と不安で聞かずにはいられなかった。
市場で買ってきた野菜を馬に与えてから部屋に戻ったキダイは、明日の帰る準備をしていた。
キダイは、荷物の整理をしている手をとめてベッドに座っているカマルの隣に座った。
「今夜がその満月の夜になる。自分でも、何故そう思うのか分からないんだがこの街に魔女がいると感じるんだ…。何故だかわからないが…勘というやつだろうか。」
不安がる僕の肩をそっと抱き寄せてキダイは話を続けた。
「大丈夫だ。勘が外れたとしても魔女がいることには、間違いないんだ。また探せばいい。だけど一旦、ユウのところに帰ろう。満月の夜は、これからだって何度もやってくる。だからチャンスはいくらでもある。そうだろ」
僕は唇をきゅっとつぐんでから
「そうだね。チャンスはいつでも転がっている、それを見つけられるかどうかなんだ。今日、見つけられなくても今度、見つけられるかもしれないよね!」
と明るく笑って応えた。
「そうさ、今日が駄目なら明日があるさ〜、それでも駄目なら明後日がある!」
「それでも駄目なら…。」
「1日休んでもう一度振り出しに戻って考えよう!」
「それでも駄目なら…。」
2人は、お互いの顔を近づけて一緒に
「それでも駄目なら……やっぱり明日があるさ!」
楽しい笑い声が廊下までこぼれた。
日が暮れ空には美しい白銀の満月が現れた。
昼間の市場とは違い、いつの間にか昼間とは違う店が並び店のオレンジ色のランプの光があちらこちらに灯り始めた。
そのぼんやりとしたオレンジ色の光がとても幻想的だった。
昼間と同じ場所だとは、とても思えない風景が広がっていた。
キダイに手を引かれゆっくりと闇市を歩いている。
一つ一つ、屋台を見て回る。
キダイが歩くのを止めた。
僕も足を止めた。
感じる。
そうだ!昼間感じた視線と同じ感覚!猫?
気がつくと足元に気配を感じた。
ゴロゴロと喉を鳴らしている。
キダイがしゃがんで猫を撫でた。
「もしかして昼間の猫かい?」
とキダイに訊ねた。
「あぁ、よく似ている。だが昼間と違ってとても人懐っこいぞ、この黒猫。」
きっと優しい顔をしているんだろうなキダイは。
カマルは、思った。
「…、…。」
「聞こえたかカマル。」
キダイは、立ち上がり僕に言った。
「うん、聞こえた。ついて来いと」
その声の主は、黒猫だった。
2人は、お互い視線を合わせ頷いた。
そしてこの黒猫は、魔女の使いの者なのだろうと。
魔女に会うことが出来るのだと。
なぜ、我々の前に現れたのか疑問に思うがそんな事、今はどうでもいい。
とりあえず黒猫を見失わないように人混みを避けついて行く。
カマルは、キダイの手を握る手にも力が入った。
すると街外れの一角に目立たぬよう赤紫色をしたワンポールテントのようなものが建っていた。
黒猫は、中に入っていく。
2人は一旦入口で立ち止まりはしたが躊躇なく中に入っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます