第3話 出会い


「キダイ、今日は、何処まで行くの?」

目をこすりながらカマルは、大きくあくびをした。

日は昇り太陽の光が大地の砂をキラキラと輝かせていた。

どれくらい進んだかな?今日は、穏やかな風が吹いている。

なんだかウトウトと馬の背で寝てしまいそうだ。

馬が突然、悲痛な鳴き方をし馬が暴れ出した。

僕は馬から振り落とされそうになった。

何が起こったんだ!!僕は、必死で馬にしがみついて耳を傾け耳で見た。

正確に言えば耳から聞こえる音で頭の中で描くのだ。

どうしたんだ?

何か嫌な予感がした。

不安になったカマルは、キダイを呼んだ。

「キダーイ!!」

キダイの手が僕の両肩ををつかんだ。

「カマル!ここにいるんだ。いいね。動くんじゃないよ」

馬から降ろされた僕は、コクリと頷き、その場に立ち尽くした。

「よし!いい子だ!頑張って登るんだ!頑張れ」

キダイは、馬の手綱を引いた、

「もう少しだ。頑張れ」

馬の鳴き声が聞こえる。ヒーンヒーン

何も見えない僕だけど今の状況が分かったぞ!!

蟻地獄にハマったんだ!!

カマルの思った通り馬が蟻地獄に足を取られてしまったのだ。

流砂ともいうのかな、この一帯は、突如現れるらしい。

のみ込まれたら最後、もうこの世に戻ってくることはできないらしい。

だが、気づいたのが早かったのと頑張った馬とキダイのお陰で間一髪で脱出できたのだ。

キダイがカマルに近寄ってきてこう言った。

「もう少し行ったところにアヤという街がある。そこで休むことにしよう。馬も疲れただろう。」

そう言ってカマルを軽々と馬に乗せた。

壮大に広がる砂の上を夕日がオレンジ色に染めてゆく。

アヤという街に着いた時には、辺りは真っ暗ですっかり夜になっていた。

だけどあちこちで人々が食事をしたり買い物をしている。

とても賑わっていた。

とある1軒のレストランで食事を摂ることにした。

キダイの料理も嫌いじゃないけどやっぱりレストランの食事は、なんだかウキウキしてしまう。

|(ん?コレは、豆を潰してペースト状にしたものをパンに塗ってあって焼いてある!!とってもいい香りだ!美味しい!)

口いっぱいにほおばって美味しそうに食べているカマルを眺めながらキダイは言った。

「美味しいかい?ユウに手紙を書こうかと思う。元気でいると…きっと心配しているだろうから。ん〜僕のためにも」と笑った。

「うん、そうだね!!」

カマルは、慌てて口いっぱいの食べ物を飲み込んで言った。

笑顔の二人の姿は、誰が見ても仲の良い兄弟にしか見えない。

「そうだ、キダイ。少し前になるけど不思議な体験をしたんだ。」と周りを意識しながらテーブルから身を乗り出しキダイに囁いた。

12、3台ある丸テーブルは、全て席が埋まっていた。

そのテーブルの間を忙しなくウエイトレスが料理を運んでいる。

誰もが楽しくおしゃべりをしていて中には歌を歌っている客もいる。

入口から一番奥には、ステージがあり生演奏をしているのだ。

だからちょっとやそっとの話し声なんて誰も聞いてもいないし、気にもとめないだろう。

「あのね…」

そう、話しだそうとした時に僕らのテーブルに注文した料理が届いた。

「あら?タイミングが悪かったかしら、ごめんなさい」と料理を運んできたウエイトレスが言った。

カマルが身を乗り出し口元に手のひらを添え、いかにも内緒話をしようとしていた姿だったからだ。

「いや大丈夫だよ。ここにおいておくれ」とキダイがウエイトレスにいうとニコッと笑顔で、言われた場所に料理を置いた。

笑顔がとても素敵な女性だった。

しばしキダイはその女性から目が離せなくなり女性が去っていっても目で追うのである。

「キダイ?どうかした?」

なんだかキダイの様子がおかしいのに気がついた。

何事もなかったかのようにキダイは、空いたお皿に運ばれてきた料理を盛り付け、カマルの前に置いた。

「どうかしたかって?別に何もないさ。」

と、とぼけたキダイにカマルがすかさず突っ込んだ。

「とても素敵なお姉さんだったの?僕が見えてないと思ったら大間違いだよ。見えなくたって空気で分かるからね」とキダイをからかった。

キダイが目を奪われたそのウエイトレスは、金色の綺麗な長い髪に、吸い込まれそうなブルーの瞳、陶器のような白い肌。

そして印象的な首から下げていた首飾りの宝石だ。

もちろん彼女も魅力的だったが、彼女が身に着けていたその・・石に見覚えがあるようで気になったのだ。

カマルは、なんだか話すタイミングを逃してしまい黙々と食べだした。

|(宿に行ったら話せばいいよね)

キダイも静かに食事を始めた、

何かを思い出そうと考えてはみるが思い出せない。

この・・不思議な感覚はなんなんだ。


お腹がいっぱいになり会計を済ませ店を出ようとした時、先程の女性が両手に沢山のお皿を持って横を通り過ぎようとした。

その時、キダイがその皿を軽々と彼女からとってみせた。

|(不思議だ。どうしてこんな行動にでたんだ僕は…)

びっくりした彼女は、少し困惑した顔でキダイを見た。

「あ〜びっくりした。ソレ|(皿)どうする気??」

「いや、大変そうだなと思ってどこに運べばいい?」と微笑んでみせた。

「お客様にそんな事させられないわ。大丈夫よ!こう見えて腕力には自信があるの」と、力こぶをみせつけた。

キダイも彼女と同じポーズをした。

もちろんキダイの力こぶには、負けを認めざるおえない。

2人は揃って笑った。

キダイは彼女に質問をした。

「とても素敵な首飾りだね、特にその石が綺麗だ。恋人にでも貰ったのかい?」

なぜだかその石が気になっていたのだ。

綺麗に磨かれた淡いブルーの石は金細工で装飾されていたが派手すぎずとても彼女に似合っていた。

まるで彼女の為に作られたように思えた。

彼女は、少し顔を曇らせて言った。

「実は、私も分からないの。気が付いたらこの店の前で倒れていて、ここのオーナーが助けてくれたの…それで今こうして働かせてもらってるの。…自分でも私が誰なのか何をしてたのか…全く思い出せなくて……」

とうつ向いた彼女だったがすぐに何かを思い出したかのように

「ただ…誰かを待っている気がするの。それが誰なのか分からないけど……」

彼女は、キダイを、見つめた。

またキダイも彼女を見つめ返した。

「ルア〜こっちも手伝ってちょうだい」

奥から恰幅のいい女性が彼女を呼んだ。

「分かったわ、今行く!」

有難うと言わんばかりにキダイからお皿を奪い返す。

キダイは、素直にお皿を渡してしまった。

「名前…」

「えぇもちろん覚えてないわ。だけどさっきの女性、この店のオーナーがつけてくれたのよ。ルア、気に入っているわ」

ニコッと笑うとルアという彼女は、急いで店の奥へと消えていった。

彼女の姿が見えなくなってもキダイはその場から動こうとしない。

なぜだかキダイは、何かを思い出そうとしている。

|(記憶が無い。僕と一緒だ。なぜか彼女のことが気になるのだ。)

カマルは、キダイのシャツを思いっきり引っ張った。

「早く行こうよ。眠くなってきたよ。」

キダイは、ハッと我に返りすぐに店を出た。

カマル達は、近くの宿に泊まることにした。

久々のシャワーで砂埃だらけの体を洗う。

さっぱりとしたキダイとカマルは、別々のベッドに横になった。

「さっきの話の続きだけど」

とカマルは、あの砂嵐の中での不思議な体験をキダイに話した。

てっきり笑われて終わりかと思っていたカマルだったが予想を反し、真剣な顔|(きっとそんな顔をしていると思う)で、カマルの話を聞いていた。

少し間があって、

「ユウから教えてもらった話があるんだ。この地には、悲しい伝説があるそうだ。もしかすると…」と話し始めた。

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