第7話 王冠と転校生 1
LOOP:2
Round/Jealousick
「りおおおおおッ!」
叫びながら飛び起きた! はっ、はぁッ! はぁッ!
あ、あれ?
夢?
いや―――違う。
この展開には覚えがある。
枕元の携帯端末を掴んで日付と時刻を確認した。
やっぱり、戻っている。
今日の朝だ。
つまり、あのクソ転校生野郎に殺されて時間が巻き戻った。
薫に殺され続けた時と同じだ。
謎のループ、また魔女の仕業か?
端末を握ったままベッドに倒れてボーッとしていると、着信音が鳴る。
発信元は―――理央だ!
「り、理央ッ」
慌てて通話のボタンを押す。
「理央!」
『健太郎、おはよう』
「お、おはッ」
『また時が巻き戻ったようだね』
「おっ、おお!」
理央にも記憶があるのか。
よかった! でも、また巻き込んじまった。
『君、また殺されてしまったね』
「お前は無事だったのか?」
間があって、端末の向こうから『うん』と返ってくる。
理央は殺されなかったのか。
ホッとした、死ぬなんてキツい目に遭うのは俺一人で十分だ。
「ごめんな、理央」
『何故君が謝る』
「だって俺のせいで」
『違う、君のせいではない』
「でも」
『君の死に関しては、僕の責任だ』などと言い出す理央に胸が痛む。
どうして?
あの時お前は俺を心配して来てくれたんだろう。
なのに理央が悪いなんてことあるかよ。
俺が油断したんだ。
理央に気を取られて咄嗟の判断を誤った、最悪だ、大失態だ。
―――以前、薫に何度も殺されたことに関しては、ある意味仕方ないと思っている。
俺は薫を傷つけられない、それに振り返れば心のどこかで、どんな形であれ薫を受け止めてやりたいって気持ちがあったように感じる。
だが見ず知らずの、しかも野郎に殺されるなんて、思い返すだけではらわたが煮えくり返る。
あまつさえ先に死んだせいでろくに理央を守れもしなかった、最低最悪な顛末だ、自分のこともまとめてブン殴ってやりたい。
くそ、ふざけるなよ。
俺は理央と子供と年寄り以外の男には一切容赦しないって決めているんだ。あの野郎、絶対に許さん。
「なあ理央、お前の忠告って、このことを言ってたのか?」
返事はない。
そうか、理由も事情も話せないって言ってたもんな。
だが既に俺は被害に遭ってしまった。
「悪いが、こうなった以上は訳を聞かないことにはどうにもならない、頼む、話してくれないか?」
『そう、だね』
「お前は奴について何を知っているんだ?」
こうなる前から警戒していたとなると、理央は何かしらの情報を得ているはず。
はッ!?
ま、まさか、知り合いだったりしないよな?
しかも特別な何かしらの事情が絡んでいたりしないよな? 二人だけの因縁があったりしないよな!?
『阿男と僕は』
阿男?
な、名前、それは奴の名前か?
名前呼びだと!?
嫌な予感が的中なのか、うそだぁッ! そんなの認めない、理央ぉッ!
『遠縁にあたる、つまり親戚だ』
「は?」
あのクソが、理央の身内?
ポカンとすると理央は言いづらそうに話を続ける。
『あいつは幼い頃から気性が激しくて、思い込みだけで突っ走る悪癖があり、常々手を焼かされていた』
「えっ」
『今回はどうやら僕と親しい君の噂を聞きつけたようで、しかしまさか学園に乗り込んでくるとは』
「はい?」
『すまない健太郎、あいつは君を敵視している』
「えぇッ!」
な、なんだ、それ。
つまりクソ野郎は理央の身内で、理央と仲良くなった俺を殺すために転校してきた、と?
マジか。
いやまさか、それって嫉妬か。
あいつも理央が好きなのか、男なのに?
俺と同じ?
つまり、敵か。
『健太郎』
情状酌量の余地は一切なくなったな。
奴は潰す。
俺と理央の前から消し去ってやる。
『阿男のこと、本当にすまない、あの時君に包み隠さず全て話せばよかった』
「いいって、そんなの構うなよ」
『僕のせいで君を死なせた、二度とあんな思いを味わわせたくなかったのに』
「理央」
『すまない』
待て。
こんな話は端末越しにするべきじゃない。
「なあ理央、今から俺の家に来られるか?」
尋ねると、間を置いて理央から『いいよ』と返ってくる。
「学校、遅刻するだろうけど」
『構わない、すぐに向かおう、待っていてくれ』
「分かった」
では後ほど、と通話は切れた。
よし、理央が来るまでの間に、俺なりに状況を整理しておこう。
取り敢えずはシャワーだ、酷い寝汗で体中臭う。
このまま理央に会ったら幻滅されちまう、最低限の身嗜みは整えておかないと。
湿ったスウェット姿のまま風呂場へ向かい、脱いだもの全部を洗濯機に突っ込んでシャワーを浴びる。
しかしムカつくな。
馴れ馴れしくするなって俺に文句をつけてきた理央のファンクラブの子達なんて可愛いものだ、同担拒否で命まで奪うか? 無茶苦茶すぎる。
ええと、まず野郎が転校してきた理由についてだな。
俺を殺すためだ、状況と理央の話から推察するに恐らくそういうことだ。
正気かよ。
だが行動の早さだけは評価できる、俺以外を巻き込まなかった点に関しても認めよう。
つまり、転校してきた地点で奴は決意を固めているってことだ。
殺害方法は刃物による殺傷。
刃渡り三十センチ以上ありそうな片刃の曲刀だった、あんなものをどこに隠し持っていた? 流石に目立つだろ、なのに剣を出すまで気付けなかった。
独特の形状、確かシャムシールとか呼ばれる中東が発祥の武器だよな?
何故それをわざわざ選んだ、何か意味があるのか?
殺害道具にこだわる利点は何もない、効率第一だった俺の薫を見習え。
雰囲気重視とか象徴的意味合いがあったとか、確かにエキゾチックテイストな雰囲気の野郎だったからな。
拗らせ気味のナルシスト野郎の可能性も範疇に入れておこう。
思い返すたびに腹が立つ、あの野郎、許さん。
とにかく、あんな目に遭うのはこれきりだ。
目的が分かっているなら手の打ちようは幾らでもある。
俺は俺を嫌いな男が心底嫌いだ。
しかも同じ相手を好きな野郎なら、徹底的に潰すしかない。
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