第6話 再びのループと転校生 5/後

「フン、貧相な面構えだ」


なに?

初対面で喧嘩を売るつもりか、いい度胸じゃねえか。


「斯様に矮小な下郎のどこが優れているという」

「は? なんだお前、俺に何か用か」


品定めするような目つきがムカつくな。

大体さっきからブツクサ呟く内容が意味不明だ、気持ち悪い。


「貴様如き下民が何ぞ問う権利があると思うな、痴れ者よ、身の程を弁えよ!」

「お前なあ、何なんだその口調、王侯貴族気取りかよ、痛い野郎だな」

「我は斯様な地位にこそあらぬが、貴様と比ぶるまでもなく遥か雲上の存在よ」

「自分でそういうことを言うか、拗らせてるな転校生、中二病は中学卒業までに治しておけよ」


まともに相手するのもバカらしい。

大体お前もこんな場所で俺に絡んでないで教室に戻れ、こいつと一緒に遅刻して叱られるなんて冗談じゃない。

放置だ、放置。

先に行こうとした直後―――


「下郎め、疾く逝け」


何かがギラリと光り、咄嗟に避けた! つもりだった。

制服のジャケットとシャツが切れている。

斬られた? 肌に赤い筋が走って血が、う、嘘だろッ、痛い! 刃物? 何のつもりだ!


「ほう、避けるか、ならばッ」


ちょっ! ちょっと待て! こいつ何を持っている!

刃渡り三十センチはありそうな曲刀、まさかの剣だ! 嘘だろ、銃刀法違反だぞ!

振りかぶって更に襲い掛かってくる!

と言うかどこに隠し持っていた!

こいつ、生徒のフリをした殺人鬼だったのかよ!


「ッチ! ちょこまかと逃げよって!」


あ、当たり前だッ、斬られたら死ぬ!

既に斬られているし、傷がずっとズクズク痛む、ちくしょうッ、どうなってるんだ!


「大人しく成敗されよ!」

「ふッ、ざけんな! てめえッ、どういうつもりだ!」

「貴様を殺すッ」

「だから、何でだって訊いてんだろ!」

「我より奪ったからだ、貴様如きがよくもッ」

「何の話だ、主語を言え、主語を!」


くそ、刃物相手じゃ今は分が悪すぎる。

いっそ―――いや、それは下策だ、上手くいく可能性が低い、何か別の手を考えろ。

しかし真っ直ぐな太刀筋だな。

不意打ちなんて卑怯な真似をする割に綺麗だ、でも、だからこそ型を見極めやすい。


そろそろ一発くらい入れられるか?

まずは大人しくさせよう。

校内で刃物を振り回すなんてまともじゃない、多少無茶をしても正当防衛が認められるはずだ。

言い訳を聞いてやるのはそれから。

とにかく早く取り押さえないと、こんな場所に誰か来たら被害が増えちまう!


「健太郎!」


意識が逸れた。

理央!?

どうしてここに、教室に戻ってなかったのか!


「よせ!」

「はああああああッ!」


ッあ!

間際で避けたと思ったが斬られた!

脇腹が焼けるように熱いッ!


「やめろッ、彼に手を出すな!」


理央?

ダメだこっちに来るな!


「逃げろ理央!」

「健太郎!」


叫んだ直後にズンッと衝撃があって、刃が俺の、胸を。

ってぇ。

うそ、だろ。


「終いだ」

「健太郎!」


視界が赤く染まる。

理央、逃げてくれ、理央。

お前だけはどうか。

くそぉッ、守れないなんて、先にやられてどうするッ、チクショウ!


―――ああ。

せっかくループを抜けたのに、薫に殺されなかったのに。

今度こそ死ぬのか。

訳も分からないまま、後悔を残して―――嫌だッ、死にたくない、嫌だッ!


口からゴボッと血の塊が出る。

手足が冷たい、視界が暗い。

理央、理央、理央。


どうか逃げてくれ。

お前だけは、どう、か。

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