第3話 再びのループと転校生 3

「天ヶ瀬のやつ、相変わらず人気者だなあ」

「最近ますますファンが増えたらしいよ」


虹川の言葉に「なんでさ?」と清野が訊き返す。

理由なんて訊くまでも無いだろ、理央が魅力的だからに決まってる。


「うーん、前より綺麗になったとか、でも、確かにそんな感じするよね」

「男が綺麗なんて意味無いじゃないか、私はパス、体力あるとか筋肉凄いとか、そっちの方が断然いい」


そう言って清野は不意に「な? 健太郎!」と俺の二の腕を叩く。

俺は綺麗な方がいい、体力はともかく、美人でいい匂いがすることの方が重要だ。


「で、でも、最近の天ヶ瀬君、前より雰囲気が柔らかくなったよね」


愛原、お前はよく分かっている。

確かに最近の理央は女神と見まがう麗しさだ、まあ男なんだが、男が女神だっていいだろう。

俺の姫の薫という前例が既にあるわけだからな。


「確かに、何となく前以上に穏やかというか、優しい表情が増えたよね」

「う、うん」

「そういえば健太郎、最近よく天ヶ瀬とつるんでるよね?」

「まあな!」


俺を見上げる三人に笑顔で頷き返す。

今ではすっかり友人として周知された俺だ、そしていずれは恋人にランクアップするだろう。


「さては、金持ちの天ヶ瀬に飯とか奢らせてるんだろ?」

「は?」


おい、聞き捨てならないぞ。

そんな恥ずかしい真似するか、清野め、俺にも理央にも失礼極まりない。


「なあ、私達も連れていくように言えって、駅前のフルパラ食べ放題でいいからさ!」

「お前なあ」

「リン、ダメだよ、そういうのよくない」

「ええ~ッ、だって天ヶ瀬金持ちだし、健太郎の友達なら私達の友達ってことで!」

「こら、リン!」

「うぐッ、ごめん」


虹川に窘められてシュンとなる清野と、そんな二人を愛原がおろおろと伺っている。

まったく仕方ない。

でも、これも慣れ親しんだ日常のじゃれ合いだ。


「だったら俺が奢ってやるよ」

「えっ」


途端に三人が揃って目をキラキラさせながらこっちを向く。

いや、待て。

もしや今の発言で三人に奢るって流れになったのか?


「健太郎、それマジで言ってる?」

「い、いやその」

「いよっし! 太っ腹だねえ! 二人も聞いたよね? ミキも、愛原さんも!」

「聞いちゃった、それじゃ、今日の帰りに皆で行こうか?」

「わ、私も一緒でいいの?」

「勿論! なっ健太郎、まさか男に二言はないよな?」

「う、ううっ」

「ご馳走になるね、健太郎君」

「あの、有難う」


やっちまった。

まあ、美少女三人と食事させてもらえると思えば、むしろ俺が払うのが当然か。

やむを得ない、ここは腹を括ろう。


楽しく喋っていると、教室に入ってきた担任から席に着くよう促される。


三人と別れて自分の席に着き、改めて少し前の方に座っている理央をこっそり見詰めた。

改めて美人だな。

最近は一緒にいる時間が前より少し減ってしまったように感じているが、御曹司としてきっと色々と忙しいに違いない。

むしろ俺が理央のためにしてやれることって何かないだろうか。

うーん、そうだ! 久々に昼飯に誘うか、丁度弁当も二つあるし。

勢いで二つ作っちまったんだよな、どっちも食うつもりだったが、片方を理央にあげよう。

―――理央。

いつかこの想いを伝えさせてくれ。

結果がどうなろうと、俺はありのまま受け止める。

独りよがりの押し付けだろうが、お前への想いが溢れすぎてどうにかなっちまいそうなんだ。

ああ、理央、好きだ。

理央、理央、理央、理央、理央―――


「今日は転校生を紹介する」


担任の一声に、俺の意識は現実へ引き戻された。

転校生?

妙な時期に転校してきたな、親の都合か?


「入りなさい」


担任が促すと、開いた教室のドアからデカい図体がぬうっと入ってきた。

なんだ、野郎かよ。

黒髪に浅黒い肌、どことなくエキゾチックな雰囲気のイケメンだ。

ふーん、男に興味無し、終了。

理央以外の野郎なんぞどうでもいい。


磐梯ばんだい 阿男あだん


担任が黒板に名前を書く。

仲良くするよう言われて、女子だけ「はーい」と返事した。

やれやれ早速浮かれているな、まあ顔はいい野郎だ。

理央はどうだろう?

様子を窺うと、特に何の反応もしていない。

よかった、まあ男だし、理央も俺と同じで興味ないか。

―――俺には興味を持って欲しいけど。


磐梯の席は俺と同じ最後列、通路と女子の机を一つ挟んだ隣になった。

俺達みたいにデカいのは前に座ると邪魔だから、常に後方の席をあてがわれる。

それでいてデカくて目立つせいで後ろの席の恩恵を何一つ受けられず、居眠りどころか余所見するだけで速攻バレて叱られる。

高身長が招く業だ、同じ穴の狢として頑張ろうぜ転校生。


ん?

今、なんか睨まれなかったか?


思いがけず様子を窺うが、転校生は自分の席に着いてまっすぐ前を向いた。

勘違い?

目付きの悪い野郎だし、たまたま視線が合ったのをそう感じただけ?

恨まれる覚えはないしなあ、まず知り合いじゃない。

ふむ、気のせいだな。

奴は俺の名前すら知らないだろう。

そして俺達は今後クラスメイト以上の付き合いをすることもない、だから構う必要もない。


そうこうするうちに朝のホームルームが終わり、担任と入れ替わりで一時間目を担当する教師が教室に入ってきた。

姿勢を正して気持ちを切り替える。

一応、後で薫にも教えてやろう。

あいつもきっと興味ないだろうが、元クラスの一員として情報を共有しておきたいだろうからな。

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