第2話 再びのループと転校生 2
可愛い女の子二人と気分よく教室へ向かう途中、突然廊下に「あーッ!」とデカい声が響き渡った!
「見つけたぁッ、ケン!」
「朝稲?」
こらこら、廊下を走るな。
あいつは同じ園芸部に所属する
どう見ても園芸なんてやりそうもないギャルな雰囲気だが、俺達が通っているここ、私立光輝学園は何かしらの部に所属することが校則で定められている。
それでやむなく適当な部に籍を置く幽霊部員が大勢いて、以前は朝稲もその一人だった。
だが、同じく園芸部所属の
俺達三人、園芸部のエースとして目下仲良く活動中だ。
「はよ、俺に何か用か?」
「おはよ! 用だよ用! ほしっちから伝言ッ、今日鉢の植え替えやるから、放課後花壇に集合ね!」
「了解、わざわざ言いに来てくれたのか、サンキュ」
「まあね、感謝しなさいよ?」
ニコッと笑う口元から覗く八重歯が可愛い。
ちなみに『ほしっち』というのは同じ園芸部員で俺と朝稲の師匠でもある星野のあだ名だ。同い年なんだけどな。
朝稲からはいつも甘い匂いがする。
こいつに限らず、女の子ってどの子も不思議といい匂いがするんだよな。
シャンプーや制汗剤、コロンなんかの匂いだろうか。
「じゃあね、ケン、放課後遅れんなよ?」
「はいはい」
「また後でね~!」
現れた時と同じ勢いで去っていった。
朝から元気な奴だ。
「相変わらず嵐みたいな子だな」
「フフッ、
感心する清野に、虹川もクスクスと笑う。
友子は朝稲の名前だ。
虹川は友達が多いからなあ、朝稲もかなり顔が広い方だが、虹川は更にその上を行く。
「健太郎君」
また呼ばれて振り返ると、今度は
俺の小説仲間、控えめに微笑む姿が清楚で可憐で可愛い。
「おはよう、霜月さん」
「おはよう」
そうだ、この前借りた恋愛小説の感想、まだ伝えてなかった。
話を切り出して感動したシーンを熱弁すると、霜月は嬉しそうに笑う。
「楽しんでもらえたみたいでよかった」
「ああ、最高だったよ、特に終盤で親友が実は女だったって判明するシーン!」
「あの場面、私も凄くドキドキした」
「だよな? 幼馴染と親友、主人公はどっちを選ぶんだろう、気になる終わり方だったぜ」
「来月続きが出るから、読み終わってからでよければ、また貸そうか?」
「本当か? ぜひ頼む!」
「うん、いいよ」
霜月は頷いて、それじゃ、と自分の教室へ歩いていく。
本の趣味の合う友達っていいよな。
続きも読んだら、絶対にまた霜月と感想を語り合おう。
「健太郎、ボンジュー!」
今度は
帰国子女でフランス語交じりに話すが、生まれは確かアメリカだったはず。
まあ生粋の日本人な俺からすればどっちも外国だ、大した違いはない。
「杉本さん、ボンジュール」
「今朝も両手にフルールね、美しいものを愛でる感性はエクセレント! でも」
不意に手を伸ばして、俺の鼻の頭を指でピンッと弾く。
「いてッ」
「インフィデリテはノン!」
「は? インフィ?」
「男性は誠実さが大事よ、それじゃね、サリュー!」
言いたいだけ言って去っていった、相変わらず掴みどころのない奴だ。
まあでも、そこが杉本の面白いところというか、個性なんだよな。
美人で目にもいいし、いつも楽しませてもらっている。
「君って相変わらず女の子の知り合いが多いな」
何故か清野が呆れている。
虹川まで「そうだね」なんて苦笑して、どうしてだ? 悪いことじゃないだろう。
友達は多いに越したことはない、しかもどの子も可愛くてたいへん結構だ。
中学の頃は男友達ばかりだったからな。
お陰で今、俺は楽しい学園生活を謳歌している。
三人で教室に入ると、小柄な姿と目が合う。
途端に嬉しそうに駆け寄ってくる様子が小動物っぽくて可愛い。
「愛原さん、おはよう」
「お、おはよう、健太郎君」
薫の親友の
いつも一緒だった薫がいなくなってから、一人でぽつんとしていることが増えた。
少し気になっているんだよな、薫にも頼まれているし。
だからなるべく話しかけるようにしている。
虹川と清野も、薫繋がりで愛原を気に掛けてくれているようだ。
「あの、虹川さんと、清野さんも、お、おはよう」
「おはよう、メグちゃん」
「はよ!」
「う、うん」
愛原の方も、ぎこちなくも交流を持とうとしている。
そして『メグ』っていうのは愛原の愛称だ。名前が
恥ずかしがり屋な愛原には、緊張させないよう、こっちからゆっくり歩み寄ってやらないと。
まさに臆病な小動物を慣れさせる感じで、だ。
「なあ、愛原さんにも薫から連絡あったか?」
「あ、あったよ、キルト体験したって、健太郎君にも連絡あったの?」
「当然、ほら」
リュックから携帯端末を取り出して、メッセージ付きで送られてきた画像を見せる。
愛原だけじゃなく虹川と清野まで覗き込み「おおーっ」と歓声を上げた。
「カオルン、向こうでの生活を満喫しているみたいだね」
「流石はうちのファッションリーダーだっただけのことはある」
「うん、薫ちゃん、凄いよね」
清野の言い分はよく分からないが、三人とも海外へ羽ばたいていった薫に感心している様子だ。
俺も鼻が高い。
なんたって薫は、俺の自慢の幼馴染だからな。
不意に教室内がざわつき、廊下の方からキャーキャー騒ぐ声が聞こえてきた。
俺もハッとして振り返る。
そして―――大勢の女の子に囲まれながら教室に入ってきた姿と目が合った。
理央。
俺の、特別。
今朝も眩しいくらい綺麗だ。
見惚れていると、理央がフッと微笑む。
ぐあッ、好きだ!
存在自体が心臓に悪いッ、ああもう、ドキドキする!
ファンクラブまであるモテまくりの超美形だが、俺はそいつに惚れてしまった。
まさかの男に。
でも好きで好きでたまらない!
しかもこれは性愛の方の感情だ、叶うならキスしたいしエッチもしたい、我ながらどうかしている。
まあ男同士じゃ進展はほぼ絶望的だが、それでも俺は諦めたくない。
だって、こんなにもただ一人を深く、熱く、激しく想うのは初めての経験だ、簡単に切り捨てられるものか。
このときめきは嘘じゃない。
だからいつか絶対に振り向かせてみせる。
お前に惚れてもらえるよう、俺はもっともっと男を磨くぞ!
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