俺と転校生の××フラグが立ち過ぎている!

九澄羊

第1話 再びのループと転校生 1

LOOP:1

Round/retry



ゆっくりと瞼を開ける。

―――朝だ。

当たり前に訪れる、何でもない、いつも通りの朝。

だが、それがどれだけ貴重で、どれだけ特別な事かを、今の俺は知っている。


カーテンを開くと眩しい朝日!

おはよう、世界!

俺は今日も生きている! ああ、生きているって素晴らしい!


俺の名前は 大磯おおいそ 健太郎けんたろう

17歳の高校2年。

血液型はB型、好きな食べ物はカレーとから揚げ―――と、最近もう一つ、理央が握ってくれたおにぎりが加わった。

塩加減が絶妙なんだよなあ。

なによりも味に愛を感じる、きっと勘違いなんかじゃないぞ、俺のために握ってくれたおにぎりだからな。


身長は、この前たまたま測る機会があって、春から179センチまで伸びていた。

あと一センチで180だ。

相変わらず成長痛に悩まされる日々だから、もっと伸びるに違いない。

このまま20センチくらい伸びて、いっそ二メートルの大台に乗らないかなーと期待している。

自販機はあと少しで追い越せそうだ。

何事もデカいのはいいことだからな、うん!


顔を洗って寝癖を直し、パジャマから制服に着替える。

まだジャケットは羽織らず、上だけシャツのままエプロンを着けた。

親は相変わらず多忙で不在気味、そしてばあちゃんが鬼籍に入ってからずっと俺の世話を焼いてくれた薫も海外へ行っちまったから、今は身の回りのことは全部自分でやるしかない。


藤峰ふじみね かおる

俺の大切な幼馴染。

生まれた時からずっと一緒だったのに、俺は少し前まであいつの悩みに気付いてやれなかった。

そのせいで何度も何度も薫に殺されて―――あの時は大変だったよな。

殺されたことを恨んではいない。

俺が悪かったからだ、無自覚に薫を追い詰めていた、だから自業自得だと思っている。

でも、死ぬのはつらかったし、怖かった。

謎の力が働いて、死ぬたびに特定の日に戻るのを繰り返したおかげで薫と和解することは出来たが、あれは本当に何だったんだろう。

結局今も分からないままだ。

理央は魔女だの何だのと可愛いことを言っていたが、そんなのいるわけないよな。

まあ、実際に体験した俺は今更否定もできないわけだが。


もし本当に魔女がいて、俺を助けてくれたのなら―――

どうして助けてくれたんだと思わなくもないが、それ以上に感謝している。

多分、いや、きっとその魔女は俺の『運命の人』だ。

魔女だから『運命の魔女』か?

どのみち恩人に変わりない、いつか会うことがあったら、その時は礼を言おう。


朝食は、冷蔵庫の中身や昨日の残り物なんかでササッと用意する。

ばあちゃんと薫仕込みの俺の料理の腕は我ながら結構やれる方だと思う、和洋中なんでもござれ、スイーツだって得意だぜ。

食い終わった食器を洗ったら、エプロンを外してジャケットを羽織る。

通学用のリュックを背負って外へ出ると、空は快晴! 清々しい一日の始まりだ。

よーし、今日も張り切っていくぞ!


通学路を一人で歩いていると、不意に肩の辺りをトントンと叩かれた。


「おはよう、健太郎君!」


ニコッと微笑みかけてくれたのはクラスメイトの虹川にじかわ

最近髪を切ったんだよな、ショートもよく似合ってる。

相変わらずうなじのラインが眩しいぜ。


「おはよ、虹川さん」

「最近いい天気が続いてるね」

「そうだな」

「朝ごはん、ちゃんと食べてきた?」

「勿論」


虹川は面倒見がいい。

同い年だけど、優しいお姉ちゃんって感じだ。


「ねえ、カオルンがいなくなって、健太郎君、寂しいんじゃない?」


思いがけず見透かされて苦笑した。

確かにまだ隣に薫がいないことに時々戸惑う日々を送っている。

ちなみに『カオルン』というのは薫のあだ名だ。


「まあな」

「そっか、でも元気出して! その、私もいるから、ね?」

「おう!」


虹川は照れたように頬を赤く染める。

可愛いなあ。

薫と仲が良かったから、きっと虹川も寂しいんだろう。


「カオルン、今頃どうしてるかな」

「きっと元気でやってるさ」

「そうだよね」


二人で薫の思い出話に花を咲かせながら歩く。

学校に辿り着き、昇降口で上履きに履き替えていると、突然背中を容赦なくバシッと叩かれた! 痛ぇッ!


「よっ、おはよ、健太郎!」


やっぱり清野きよのか。

叩かれた辺りをさすりながら溜息を吐く。こいつもクラスメイトだ。

男勝りというか、他の奴より俺の扱いが若干雑というか、でも可愛いところもある女の子なんだよな。

だから許す。

男だったら絶対に許さん。


「おはよ、リン」

「ミキもおはよー! 二人で登校したんだ?」

「うん、途中で会って、ね?」

「へえ」


清野と虹川はお互いをあだ名で呼び合う仲だ。

前はここに薫も加わっていたんだよな。


「清野おはよう、朝練か?」

「そうだよ、朝から汗を流すと気持ちがいいんだ」

「そうだろうと思って、リンのためにスペシャルドリンク用意してきたよ」

「おおっ、さっすがミキ! お嫁さんにしたい候補ナンバーワン!」


バッグから水筒を取り出そうとしていた虹川は「えぇっ」なんて動揺しつつ、また赤くなる。

うーん、可愛い。

ニヤニヤ笑う清野から「健太郎もそう思うだろ?」と話を振られ、大いに賛同して頷いた。


「虹川さんはきっといいお嫁さんになる、俺が保証する」

「も、もう、健太郎君まで」

「えーっ、じゃあ健太郎、私は?」


なんで清野まで訊いてくるんだ。


「お前は、そうだな、肝っ玉母さんになるんじゃないか?」

「おっ、いいねぇそれ、だったら健太郎を尻に敷いちゃおうかな~ッ」

「敷かれてたまるか」

「もう、リンったら、その話はやめよう? もうおしまい!」


恥じらう虹川は可愛い。

清野も見習うべきだ、まあ清野には清野のいいところがあるけどな。

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