第二話「帰還、過去のライル」
ー龍太ー
ライル過去の駄目っぷりを思い出しながら一人森を歩き町を目指す。
ライルの過去ってオワコンだ、ライルを演じるの気が咎める。
いっそのこと黒龍にやられて記憶喪失がいいよな!ニヤリ
森の木々が途切れ、遠くに王都の外郭が見えてきた。
高い石壁と、門の上で揺れる旗。……あれがライル・フォン・グランベルの“故郷”か。
俺(龍太)はボロボロの貴族服を払い、わざとフラフラした足取りで歩き出す。
(さて、記憶喪失の演技、始めますか)
空が薄明るくなり、朝日がようやく顔を覗かせていた。
デカい門構えだな!
そこにフル装備の護衛が二人!
ライルの記憶からして碌な扱いだろうにちげーねぇだろうな!
よし取り敢えず貞子で記憶喪失装って様子見るか(ニヤリ・ズリズリ……
血まみれの服を引きずり、ズルズル鳴らしながら這い寄る。
女神に癒されたばかりなのに、糞仙人の地獄スキルのせいで痛みが残ってやがる……。
護衛A「おい、あそこに誰か倒れかけて這ってくるぞ……クソッ!貴族の服か?」
護衛B「待て、あの紋章……まさか黒龍に喰われたライルか…!?」
護衛A「……生きてたのかよ(小声)」
俺(龍太)ズリズリと近づき、地面に膝ついて体を起こす「……ここは……俺は……誰だ……?」
護衛たち大慌てで「ライル様がご無事だ! すぐに屋敷へ連絡を!!」
護衛が急ごしらえで用意した馬車が、ガタガタと石畳を揺られながら大きな伯爵邸の門を潜る。
門の内側では、すでに使用人たちがざわついていた。
「ライル様が……生きて帰られた?」
「死んでなかったのか……クソッ」
小声で呟く若い使用人の言葉が、風に乗って耳に入る。
(おっと、いいね。セバスの胸の内か!世知がねぇ〜)
俺は馬車の揺れに合わせて体を任せ、目を閉じたまま微動だにしない。
門を潜り抜け、馬車が玄関前で止まる。
「ライル様! ライル様!」
慌てた声がいくつも重なる。
足音が近づき、馬車の扉が開け放たれる。
俺はそっと目を開けた。
目の前に立っていたのは、絵に描いたような執事だった。
白髪交じりの髪をきっちり撫でつけ、黒い燕尾服に白手袋。姿勢は完璧で、表情は硬い。
(コイツか……ライルの記憶にあるセバスティアン執事だな。忠実で真面目で、でも内心ではライルの駄目っぷりに頭抱えてるタイプ)
執事「ライル様! 大丈夫でございますか!?」
俺は弱々しく体を起こし、ぼんやりとした目で執事を見上げる。
俺「……お前は……誰だ?」
執事の目が一瞬、見開かれた。
執事「ライルお坊ちゃん……セバスティアンと申します。グランベル家の執事を務めております」
俺(龍太)は首を傾げ、困惑した表情を完璧に作り上げる。
「……セッ…セバス? ……俺は……誰なんだ?」
周囲の使用人たちがざわめく。
「記憶が……飛んでる?」
「黒龍にやられたせいか……?」
「まあ、少しはマシになるかもしれないわね」
最後の小声は、若いメイドのものだった。
(ふふ、名前はリアナだったな。やっぱこっち世界も同じか!)
執事「皆様、騒がないでください! まずはライル様を部屋へお運びし、医者を呼びましょう!」
俺は執事に抱きかかえられ(重いって顔に書いてあるな)、屋敷の中へ運ばれていく。
廊下の壁に飾られた肖像画、豪華な絨毯、高い天井。
ライルの記憶がフラッシュバックする。
――ここで散々金使い荒らしたな。
――メイドを腹いせに泣かせたこともあったっけ。
――父親には何度も叱られた。
(全部、覚えてるよ。全部…………やっぱ!世知がねぇ〜‼︎)
執事の腕の中で、俺はそっと口角を上げた。
(これからが本番だな。こっちの世界も情報からだな!……傭兵リーダー探し出すか)
『転生したら神に地獄スキルを貰った件 ~10倍の痛みで死ねない俺は這ってでも復讐する~』 帰って来た火星人 @DR30RS
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