第2話

そう深い意味なしに、「火」という、なんというかイメージや概念にいろいろな連想が纏わりつきそうなアイコン?を考察してみようか?というアイデアを敷衍してみるだけですが。


「プロメテウスの火」という神話があり、有名な気もするが、これは、よく文明の、諸刃の剣的な比喩に使われる。

 原発の事故の時にも、新聞のコラムが「プロメテウスの火」というタイトルでしたが、これも首肯しうる用法。

 「火」が禁断の技術というその神話は、便利になる新しい技術とかへの畏怖の念が、犠牲を伴うという神話になっているのですが、知恵の木の実というアダムとイブの神話にもニュアンスが似ている。

 ベベルの塔というのも、「神をも恐れぬ所業」という場合の素朴ななんというか敬虔な?まあ平衡感覚とも思う。


 武田信玄の「風林火山」は、四か条の兵法の心得で、火は「侵掠すること火のごとし」または「猛きこと火のごとし」というくだり。


 トランプだとハートが火のエレメントの意味らしい。


 鍛冶屋の神・ヘラクレイトスというのがあったり、日常に「火」は、現代も必須の重要な要素。 火だけでない、エネルギーと思うともっと根源的。


 人体もいろんな栄養素を「燃焼」してエナジーを合成している…火力発電やら、バイオマスもあるが、人間社会に燃焼はつきもの。 焼き畑農業も肥料を合成している。 窒素同定法が発明されて、農業は飛躍的にコストが下がったとか。


 だから現代は「火」というより光熱費というようにエネルギーでくくりますが、ロビンソンクルーソーの如き文明から隔離される境遇になれば、すぐ「火」が必要…不可欠、必須にならざるを得ない。


 恋心が火のように燃え上がる、とかいって、精神の情熱の比喩にも「火」がよくつかわれる。 (オレ、燃え上がったことないけど)


 「地獄の業火」とか言うのは、火災の恐怖、絶望的な被害の大きさから連想しているのか。 炎上、とネットで攻撃の矛先が集中することを言うが、これも「火」の怖さで、「マッチ一本火事の元」も、同じ謂い。


 まあ、激しくて怖くて、破滅をもたらすのが「火」。それとうらはらに錬金術的な化学変化、合成、そういうものにも「火」はつきもの。


 で、花火というものがあるし、火焔はそれ自体が非常に美的な現象でもある。

 アートな感性が不足していると「火が綺麗」とまで思いにくいが? 燃えている焔は、それ自体が夢幻なゲージュツにも思える。 蛍は古い字では螢。で、火垂るとも書く。 人魂を漫画で描くと、炎になるし、幽玄な感じがそれを連想するからか? 英語ではfirebug らしい。


 炎色反応の化学実験でも火がずいぶんきれいというのは初めてわかるような? 高エネルギーの星が紫色に燃えていたり、赤色巨星が老いていたり?そういう焔も意味深げで美しい。

 

 「風と共に去りぬ」で、豪壮な邸宅が燃え落ちる中をかろうじてヒロインたちが馬車で逃げ延びるというシーンがありますが、ああいうすごいシーン、絶対にNGをだせない、?よく撮影できたなあ、映画史上の最も印象的な火? ですかな?

 そうして、あれはアメリカ南部というひとつのレジェンドの終焉、「夢」が潰え去っていくことの象徴といううがった見方もできる。 それゆえに「火焔」のように儚げであり、悲壮であり、尚且つ壮麗でなければならなかった、と、こういうのが映画の文法というものかなとも思う。

 

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12月22日の人声天語 夢美瑠瑠 @joeyasushi

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