第4話 戦国武将、参戦。スクロールで描く領土

領土は地図に描くものじゃない。人の頭に描かせるものだ。



 俺は戦を百回やって、一度だけ勝ち方を変えたことがある。

 戦場に火をつけず、噂に火をつけた。

 今日のこれは、二度目だ。場所は戦場に似て、戦場ではない。

 匿名掲示板。兵の顔は見えないが、指の速さは見える。


15:信長:戦よりスレのほうが強いってマジ?

16:創造神:定義次第だ

17:妲己:炎上は領土です♡


 領土という言葉に反応が走る。

 俺は地図を広げない。スクロールする。

 今日の敵は速度、味方は退屈、将は笑い。


30:信長:お前らの“城”はどこだ?

31:妲己:ここよ♡

32:ルシファー:ここは城ではありません


 城ではない。だから攻めやすい。

 俺は書き込む。


40:信長:城を持たないと、落ちない。

41:名無し:名言出た

42:太公望:まぁいいか


 太公望の四文字で、兵が整列する感じがある。

 創造神は笑い、仏は頷き、地獄は踊る。

 いい時代だ。槍より速く、炎より長く、言葉が残る。


66:信長:スレ主、次は“現世タワー”の話をしよう

67:創造神:タワー?

68:信長:天まで届く通信塔だ。祈りもバズも、同じ線で運ぶ


 領土を持たないために、塔を建てる。

 矛盾は甘い。甘さは人を呼ぶ。

 俺は画面を閉じ、古い鎧に触れた。

 鉄の匂いは消えなくていい。新しい戦でも、古い心で勝ちたい。



次回「天界と地獄、メディア戦争前夜」。塔は誰のもの?

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