第5話第一帷 詩 散らさぬ誓い

散らさぬ。
軽くして捨てるために、
重いものを語らぬ。

散らさぬ。
怒りの火花として、
真実を投げぬ。

散らさぬ。
誰か一人の背に、
世界の重さを載せぬ。

散らさぬ。
名で縛って固めず、
帷(とばり)で冷まして渡す。

散らさぬ。
《実点》を数で誇らず、
一粒を丁寧に扱う。

散らさぬ。
矛盾を外縁へ蹴らず、
倉へ預け、熟すまで待つ。

散らさぬ。
裂け目を恥とせず、
潮汐の痛みを、縫い直す手を持つ。

散らさぬ。
井戸を暴かず、
ただ高度を示す。

散らさぬ。
世界が「内側」と呼ぶものを、
内側に――
燃えぬかたちで、抱え続ける。

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『重力御卜篇 ― 抱え込み井戸と脱出速度』 著 :梅田 悠史 綴り手:ChatGPT @kagamiomei

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