第3話 俺様タイムとタケルとハヤト

塾の授業が始まる。

教室内はタケルの質問でざわついたが、

所詮ここは学校ではない。

他校からの寄せ集まり。

たとえこの冬休みの講座全部を受講しても

たった10日程度だ。10回会うだけだ。

それに今日に限って言えば50分後には、

さようならの関係だ。

結構言いたいことをさらりと生徒達は言う。

たぶんだが、通常の学校と塾での顔は

生徒たちは違うようだ。

まあ、塾に限らず。人間はそんなものだ。

だとすると俺様はこの目の前の席の

タケルの日常の顔と。

学校での顔が見たくなった。

生命体の時間制限がある人間はやはり面白い。

ころころと違う顔を持つ。

そこが無限ループ人、俺様たちと違う。

俺様はすべてが無限だ。

自由だが面白くない。

空気を切っても切れないようなそんな、

何もない世界で時を過ごしている。

タケル、そのマイペースぶり。気にいった。

早く授業が終わらないかな。

講師の早川も気になるが

今は目の前の人間タケルだ。

『それがいいと思うぞ。』

「!」なんだ今のは!

俺様は思わずペンを落とした。

ペンが転がる。

タケルが拾う。振り返り俺様に

「タイムはい。君のペン。」

「ありがとう。」

俺様は言葉を発した。

『それでいい。』また誰かの声がする。

講師の早川と目が合った。

ニヤリと俺様を見た。

授業終了の時間。

「では。今日の授業は終了です。また明日。」

みんな、塾のビルから出て行く。まるで蟻が散らばるように。

タケルが「タイム。じゃあ、あした。」

「じゃあな。」俺様もタケルと別れる。

そして俺様は姿を変えて虫に変身。

タケルのカバンに潜り込む。


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