第8話:午前11時のアモーレ(完全版・改)
***
「はは」
俺は妻の背中に向かって、珍しく素直な言葉を投げかけた。
「愛してるよ(アモーレ)」
「はいはい。ゴミ出しといてね」
妻は振り返りもせず、掃除機のスイッチをオンにした。
ブオオオオオ!!
俺の愛の囁きは、ダイソンの爆音にかき消された。
俺は残ったコーヒーを飲み干し、ふっと天井を見上げた。
そして、掃除機の音に負けないように、リズムを刻んで鼻歌を歌った。
「what.ever.you.say……♪(君の言う通り……)」
俺は指定されたゴミ袋を手に取った。
そして、一心不乱に掃除機をかけ続ける彼女の背中を見つめ、もうワンフレーズ継ぎ足した。
「what.ever.you.are……♪(君が何者であろうとも……)」
そう、君が深夜2時の破壊神だろうが、昼下がりの芸術愛好家だろうが、関係ない。
君が君である限り、俺はこの生活を続けるんだろう。
俺は軽やかなステップで玄関へ向かった。
平和で、少し騒がしい午前11時だった。
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