第3話 バカデカい

 今日ほど緊張感のある入浴は、後にも先にもないだろう。すぐ隣で、アイリがシャワーを浴びてる。




 別に、ドキドキしてるわけじゃない。いや、ある意味ではドキドキしてるけど、良い意味のドキドキではない。




 俺もアイリも十代後半の思春期。互いに異性の体には少なからず興味を抱く。血の繋がった兄妹といえど、見境なく、無情に反応を示してしまう。その際、男の俺は一目瞭然だ。アイリの純粋な瞳が俺の汚点を捉えられないよう立ち回らなければ。




「ねぇ、お兄ちゃん。大きくなってるよね?」




「な、なにが!?」




「私の胸」




 くそっ、見てみたい! 性的興奮を覚えないのは当たり前だが、単純に女性の膨らんだ胸というものを見てみたい!




 落ち着け。アイリは単純に大きくなったかどうかを他人から確かめてほしいだけなんだ。そこに他意など無い。それなら、兄として妹の成長を確かめるべきだろう。




 よし、見るぞ。バッと見て、サッと戻す。




「え、凄―――」




「え? 急に湯船に潜ってどうしたの?」




 全然パッと見じゃなかった。




 全然サッと戻れてなかった。 




 なんか、アイリの胸にメロンが二つ付いてた。それでいてお腹周りはシュッとしてるし、足もスラリと長くて、男の理想を体現してた。




「ねぇ。いい加減潜るのやめてよ」




「ブハァッ!? あぁ、久しぶりの潜水ごっこ楽しかっ―――え、凄い」




 目の前に男の理想が存在してる。兄としての贔屓目抜きに、これ以上理想的な女性は存在しないと断言出来る。




「ちょっと足退けて。私が入るスペース無い」




「え? あ、あぁ、悪い」 




 なんか自然と一緒に入ってきた。しかも向かい合ってる。湯船のおかげでお互いの隠してほしい場所は隠れているが、見つめ合うのは気まずい。




「……エッチ」




「えぇ!? 何が!?」




「私の裸、あんなに凝視してさ。実の妹に興奮してるの?」




「してないしてない! 俺が興奮するのは、バカデカい建造物を発見した時だけだから!」




「そう……」




 大丈夫。下半身の一部から今の所痛みは感じない。ちゃんと兄貴出来てるぞ。




「……私は、お兄ちゃんと一緒のお風呂に入れて……ちょっとだけ」




「ちょっとだけ?」




「……言わせないで」




 まーじで、世界一可愛い妹め。お前は何処まで男の理想届かぬ高さまで駆け上る気だ。 

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