『俺達のグレートなキャンプ212 オムライスを作り続けて70年のシェフから御指南を』
海山純平
第212話 オムライスを作り続けて70年のシェフから御指南を
俺達のグレートなキャンプ212
オムライスを作り続けて70年のシェフから御指南を
冬の冷たい風が吹き抜ける一月の週末。長野県の山奥にある「翠湖キャンプ場」の受付前に、三台のアウトドアワゴンが停まった。車から降りた三人の息は白く、防寒着に身を包んだ姿が朝日に照らされている。
「よっしゃああああ!今日のキャンプ、マジでグレートになる予感しかしねぇ!」
石川が両手を天に掲げ、冷たい空気を思い切り吸い込みながら雄叫びを上げる。その目は爛々と輝き、口角は限界まで上がり、全身から湧き出るテンションが周囲の冷気を吹き飛ばすかのような勢いだ。吐く息が真っ白な煙のように広がる。
「石川さん、朝からハイテンションっすね!寒いのに元気!」
千葉も負けじと両手を挙げ、石川の真似をして叫ぶ。キャンプ歴まだ半年の彼は、毎回石川の企画に心の底から感動し、目をキラキラさせている。厚手のダウンジャケットを着込んでいるが、それでも寒さで鼻の頭が赤くなっている。
「はぁ...また始まった」
富山が大きなため息をつきながら、車のトランクから荷物を下ろし始める。彼女の表情には明らかな不安と疲労の色が浮かんでいる。眉間にシワを寄せ、肩を落とし、「今回は一体何をやらかすつもりなの...」という心の声が顔全体から滲み出ている。
「富山!テンション低いぞ!今日のキャンプはマジでヤバいんだから!」
「ヤバいって...良い意味で?悪い意味で?」
「もちろん良い意味に決まってんだろ!なんたって今日は!」
石川がポケットから一枚の名刺を取り出し、富山と千葉の目の前で掲げる。その動作は大げさで、まるでマジシャンがトランプを見せつけるかのよう。
「『洋食屋 竜』店主 竜三」って...これ誰?」
千葉が首を傾げながら名刺を覗き込む。
「誰って!オムライス一筋七十年の現役シェフだよ!御年九十二歳!伝説の料理人!」
「九十二歳!? それで現役!?」
「そうだよ!しかも今日、わざわざこのキャンプ場まで来てくれて、俺たちに韓国風オムライスの作り方を伝授してくれるんだ!グレートだろ!?」
「韓国風...オムライス...?」
富山が眉をひそめる。その表情には「また訳の分からないことを...」という諦めと疑念が混ざり合っている。
「そう!コチュジャンを使った特製のオムライス!これがまた絶品らしくてさ!俺、ネットで評判見つけて、直接店に行って頼み込んだんだよ!」
「頼み込んだって...断られなかった?」
「最初は『キャンプ場で教えるなんてふざけるな!』って怒鳴られたけど、三時間粘ったら根負けしてくれた!」
「三時間も...」
富山が頭を抱える。彼女の肩が小刻みに震えているのは、寒さのせいなのか、それとも石川への呆れなのか。
「でもさ、石川さん!冬のキャンプでオムライス作りって、めちゃくちゃロマンあるじゃないですか!寒い中で温かいオムライス!最高!」
千葉が目を輝かせながら拳を握る。その純粋な興奮ぶりに、石川がニヤリと笑う。
「だろ!? 千葉はわかってるなぁ!」
「わかってない...わかってないから...」
富山が小さく呟く。
三人がテントを張り終えた頃、キャンプ場の入り口から一台の軽トラックが砂利道を踏みしめながら入ってきた。エンジン音が静かな冬の空気に響き渡る。
「来た!竜三さんだ!」
石川が子供のように駆け出す。軽トラックが停まり、ドアが開くと、小柄だが背筋のピンと伸びた老人が降りてきた。
白髪を短く刈り込み、深く刻まれた皺が人生の年輪を物語る顔。だが、その目は若者顔負けの鋭さで、まるで研ぎ澄まされた包丁のような光を放っている。真っ白なコックコートを着込み、首にはタオルを巻いている。
「おう、お前が石川か」
低く、しゃがれた声。だがその声には、七十年間料理に向き合ってきた職人の重みがある。
「はい!今日はわざわざありがとうございます!」
石川が頭を下げる。普段の調子とは違う、珍しく真面目な態度だ。
「礼はいらん。だが覚悟はできてんだろうな」
「覚悟...ですか?」
「俺の指導は厳しいぞ。泣いても知らんぞ」
竜三がギロリと三人を睨む。その眼光に、富山がビクッと肩を震わせる。千葉も思わず一歩後ずさる。
「へ、平気です!俺、結構根性あるんで!」
石川が胸を張る。
「ほう...まぁ、見てろ」
竜三が軽トラックの荷台から、大きなクーラーボックスと調理器具の入った箱を降ろし始める。その動作は九十二歳とは思えないほど機敏で、力強い。
「お、俺も手伝います!」
千葉が慌てて駆け寄る。
三人のテントサイトに、竜三が持ってきた調理器具が並べられた。大きなツーバーナー、フライパン三枚、ボウル、まな板、包丁セット。そしてクーラーボックスからは、玉ねぎ、人参、ピーマン、ハム、卵、そしてコチュジャンの瓶が次々と取り出される。
「うわぁ...本格的だ...」
富山が呟く。
「本格的?当たり前だ。俺は妥協しない。たとえキャンプ場だろうが、一流の味を作る」
竜三がキッパリと言い切る。その声には絶対的な自信と誇りが満ちている。
「さぁ、準備はいいか。まずは材料の下ごしらえからだ」
「はい!」
三人が声を揃える。
「玉ねぎをみじん切りにしろ。大きさは五ミリ角だ。それ以上大きくても小さくてもダメだ」
「五ミリ角...了解です!」
石川がまな板の前に立ち、包丁を握る。玉ねぎの皮を剥き、半分に切って、ザクザクとみじん切りにし始める。
「待て」
竜三の低い声が響く。
「は、はい?」
「それは八ミリだ」
「え?でもこれくらい...」
「八ミリだと言ってる。俺の目は七十年、食材を見続けてきた。誤差は許さん」
竜三が石川の隣に立ち、切った玉ねぎを指でつまんで目の前に掲げる。
「ほら、見ろ。大きさがバラバラだ。これじゃ火の通りが均等にならん」
「で、でも...」
「でもじゃない!もう一回だ!集中しろ!玉ねぎの声を聞け!」
「玉ねぎの...声...?」
石川が困惑した表情で玉ねぎを見つめる。千葉と富山も顔を見合わせる。
「そうだ!玉ねぎがどう切られたいか、どんな大きさになりたいか、食材の声を聞くんだ!それができなきゃ一流にはなれん!」
「い、いや、でも玉ねぎって喋らないですよね...」
千葉が恐る恐る口を挟む。
「喋らなくても聞こえるんだよ!心で聞くんだ!」
竜三が大声で怒鳴る。その声に、隣のテントサイトでコーヒーを飲んでいた若いカップルがビクッと飛び上がる。
「あ、あの...ちょっと声が...」
富山が小声で言いかけるが、竜三の鋭い視線に言葉を飲み込む。
「もう一回だ!今度は五ミリぴったりに切れ!」
「は、はい!」
石川が汗を拭いながら、再び玉ねぎに向かう。今度は慎重に、一切れ一切れの大きさを確認しながら切っていく。その表情は真剣そのもの。額には冬だというのに汗が浮かんでいる。
十五分後。
「...よし、これなら合格だ」
竜三がわずかに頷く。その僅かな動作に、石川がホッと息を吐く。
「つ、疲れた...玉ねぎ一個切るのに十五分もかかった...」
「当たり前だ。基礎こそが全てだ。次、人参とピーマンも同じように切れ」
「まだあるんですか!?」
「当たり前だろ。オムライスは具材が命だ。手を抜くな」
一時間後、ようやく全ての野菜のみじん切りが完成した。石川の額からは汗が滝のように流れ、千葉は既に息を切らしている。富山は黙々と作業をこなしていたが、その表情には明らかな疲労が浮かんでいる。
「よし、次はケチャップライスだ。フライパンを熱しろ」
竜三がツーバーナーに火をつける。青い炎が勢いよく立ち上がる。
「油を引いて、まず玉ねぎから炒める。中火だ。強すぎず弱すぎず、ちょうど中火を維持しろ」
石川がフライパンに油を注ぎ、玉ねぎを投入する。ジュワッという音とともに、甘い香りが立ち上る。
「よし、その調子だ。玉ねぎが透き通るまで炒めろ。焦がすな」
石川が木べらで玉ねぎを混ぜる。冬の冷たい空気の中、フライパンから立ち上る湯気が白く見える。
「いい香りっすね...」
千葉が鼻をヒクヒクさせる。
「当然だ。玉ねぎは炒めると糖分が出て甘みが増す。それがオムライスの味の基盤になる」
竜三が腕を組んで説明する。その語り口には、七十年の経験に裏打ちされた確信がある。
三分ほど炒めると、玉ねぎが透明になってきた。
「よし、次は人参とピーマンを入れろ」
石川が野菜を追加する。色とりどりの野菜がフライパンの中で踊る。
「ここでハムも入れる。そして...」
竜三が小さな瓶を取り出す。
「コチュジャンだ。大さじ二杯、入れろ」
「おお!韓国風の秘密兵器!」
石川が目を輝かせながらコチュジャンをフライパンに投入する。真っ赤なペーストが野菜に絡まっていく。
「よく混ぜろ。コチュジャンは焦げやすいからな」
石川が必死に混ぜる。すると、今までの甘い香りに、ピリッとした辛みのある香りが加わる。
「うわ、香りが変わった!」
「コチュジャンは唐辛子と麹の発酵食品だ。旨味と辛味が同時に加わる。これが韓国風オムライスの肝だ」
「へぇ...勉強になります」
千葉がメモを取り始める。
「次、ご飯を入れる。三合分だ」
石川がボウルに入った白いご飯をフライパンに投入する。
「ほぐせ!ダマにならないようにほぐすんだ!」
「は、はい!」
石川が木べらでご飯を切るように混ぜる。
「違う!そんな優しく混ぜてどうする!もっと力を入れろ!ご飯を叩きつけるように混ぜるんだ!」
「え、でもご飯が潰れちゃいますよ!?」
「潰れて何が悪い!多少潰れた方がコチュジャンが絡みやすくなる!やれ!」
「う、うおおおお!」
石川が叫びながら、ご飯を激しく混ぜ始める。その様子はまるで格闘技のよう。
「そうだ!その調子だ!」
隣のテントサイトから、困惑した視線が注がれる。若いカップルが「何あれ...」と小声で囁き合っている。
「気にするな!ここはキャンプ場じゃねえ!韓国だと思え!」
竜三が大声で叫ぶ。
「韓国!? いや、ここ長野ですけど!?」
富山がツッコむが、竜三は聞いていない。
「次、ケチャップだ!たっぷり入れろ!」
石川がケチャップのボトルを傾ける。ドバドバと赤いソースが注がれる。
「混ぜろ!全体にケチャップを行き渡らせろ!」
「は、はい!」
ご飯が徐々に赤く染まっていく。そこにコチュジャンの辛みが加わり、独特の色合いになる。
「塩コショウで味を調えろ!」
石川が調味料を振る。
「味見しろ!」
石川がスプーンでご飯をすくい、口に運ぶ。
「...うまい!」
「だろう?これがケチャップライスの基本だ。だがまだ終わりじゃない」
竜三が別のフライパンを取り出す。
「次は卵だ。これが一番難しい」
「卵...オムライスの卵ですよね」
千葉がゴクリと唾を飲む。
「そうだ。オムライスの命は卵だ。これを失敗したら全てが台無しになる」
「プレッシャーやばい...」
石川が額の汗を拭う。
「まず、ボウルに卵三個を割れ。そして箸で混ぜる。ただし混ぜすぎるな。白身のコシを残すんだ」
「混ぜすぎず...でも混ぜる...難しい...」
石川が慎重に卵を混ぜる。
「よし、フライパンを強火で熱しろ。そしてバターをひとかけら入れる」
ジュワッとバターが溶ける音。甘い香りが広がる。
「卵を一気に流し込め!」
石川が卵液をフライパンに流し込む。ジュワーッという音とともに、卵が一気に固まり始める。
「箸でかき混ぜろ!素早く!」
「は、はい!」
石川が箸を動かす。
「違う!もっと速く!そんなトロトロやってたら固まっちまう!」
「う、うおおおお!」
石川が必死に箸を動かす。
「よし、半熟になったら火を止めろ!」
「今ですか!?」
「今だ!」
石川が火を止める。フライパンの中の卵は、まだトロトロとした状態だ。
「ケチャップライスを真ん中に乗せろ!」
石川がお玉でケチャップライスをすくい、卵の中心に乗せる。赤いご飯が黄色い卵の上に盛られる様子は、まるでアート作品のよう。
「フライパンを傾けて、卵を折りたたむんだ!」
「お、折りたたむ!?」
「そうだ!オムライスの形にするんだ!」
石川がフライパンを傾ける。だが、卵がうまく動かない。
「あ、あれ!?」
「動きが遅い!もっと一気に!」
「で、でも...」
「でもじゃない!やれ!」
「うるせえ!今やってんだよ!」
石川が思わず叫び返す。
その瞬間、周囲の時間が止まったかのような静寂が訪れる。千葉と富山が息を呑む。隣のテントの若いカップルも固まる。
竜三が...ニヤリと笑った。
「...いい根性だ」
「え?」
「料理は戦いだ。食材と戦い、火と戦い、時には師匠とも戦う。その覚悟がなきゃ、本物の味は作れん」
「竜三さん...」
「続けろ。お前ならできる」
石川が深呼吸をして、再びフライパンに向かう。今度は躊躇なく、一気にフライパンを傾け、卵を折りたたんでいく。
「よし!その調子だ!」
卵がゆっくりと、でも確実に、ケチャップライスを包んでいく。黄色い絨毯がご飯を優しく覆っていく様は、まるで魔法のよう。
「できた...!」
石川が皿に滑らせるように、完成したオムライスを移す。ふんわりとした卵に包まれた、美しいオムライスが完成した。
「最後の仕上げだ。ケチャップをかけろ」
石川がケチャップのボトルを手に取る。そして、慎重に、卵の表面にケチャップを描いていく。
「うまい...書けた...」
黄色い卵の上に、赤いケチャップが弧を描く。
「できたああああ!」
石川が両手を挙げて叫ぶ。その声は山に反響する。
「よくやった。合格だ」
竜三が小さく頷く。
三人は完成したオムライスを囲んで座る。湯気が立ち上り、バターとケチャップ、そしてコチュジャンの香りが混ざり合って、食欲を刺激する。
「じゃあ...いただきます!」
石川がスプーンを入れる。ふわっとした卵が簡単に崩れ、中から赤いケチャップライスが顔を出す。コチュジャンの色が混ざった、独特の赤さだ。
一口、口に運ぶ。
「...!」
石川の目が見開かれる。
「どうですか!?」
千葉が身を乗り出す。
「やべえ...」
「やべえ?」
「魂が韓国行ったぜ...」
石川が恍惚とした表情で呟く。
ふわっとした卵のクリーミーな味わい。その下から現れるケチャップライスの甘酸っぱさ。そしてコチュジャンの辛味と旨味が、口の中で爆発する。甘み、辛み、旨味が三位一体となって、味覚を刺激する。玉ねぎの甘さ、ハムの塩気、そして何より、丁寧に作られた一つ一つの工程が、この一皿に凝縮されている。
「千葉も食ってみろ!」
「は、はい!」
千葉がスプーンを取る。一口食べた瞬間、彼の表情が歪む。
「キマるううううううう!」
千葉が椅子から転げ落ちそうになる。
「これやばいっす!甘いのに辛い!でも辛すぎない!コチュジャンの発酵した旨味が、ケチャップの酸味と混ざって、新しい味になってる!」
「だろ!? これが韓国風オムライスだよ!」
富山も恐る恐る一口食べる。そして、目を閉じる。
「...美味しい。本当に美味しい。こんなに手間をかけて作ったオムライス、初めて食べた」
彼女の目に涙が浮かぶ。それは味への感動なのか、それとも無事に完成した安堵なのか。
竜三が腕を組んで、三人の様子を見ている。その顔には、満足そうな笑みが浮かんでいる。
「お前たち、よくやった。特に石川、お前は見込みがある」
「竜三さん...ありがとうございます!」
「だが、まだまだだ。料理は一生勉強だ。七十年やってても、まだ学ぶことがある」
「七十年やっててもですか!?」
「そうだ。だから面白い。だから辞められない」
竜三がゆっくりと立ち上がる。
「さて、俺はそろそろ店に戻る。お前たちは残りの時間、キャンプを楽しめ」
「もう帰っちゃうんですか!?」
「ああ。俺は夜の営業がある。客が待ってる」
竜三が軽トラックに向かって歩き出す。その背中は小さいが、とても大きく見えた。
「竜三さん!」
石川が叫ぶ。
「今日は本当にありがとうございました!俺、一生忘れません!」
竜三が振り返り、片手を挙げる。
「忘れるな。料理は愛だ。食材への愛、食べる人への愛。それを忘れなければ、どんな料理も美味しくなる」
そう言って、竜三は軽トラックに乗り込み、エンジンをかける。排気音が冬の空気に響き、車は砂利道を進んでいく。
三人は、その背中が見えなくなるまで見送った。
「...すげえ人だったな」
石川が呟く。
「本当にすごかったですね。あんなに厳しいのに、あんなに優しい」
千葉が頷く。
「で、石川。次回のキャンプはどうするの?」
富山が尋ねる。その表情には、既に次の企画への不安が浮かんでいる。
「うーん、まだ決めてないけど...あ、そうだ!次は『世界最速でテントを張る大会』とか!?」
「はぁ!?」
「いや、絶対盛り上がるって!タイムアタックだよ!グレートだろ!?」
「盛り上がらないから!普通にキャンプしようよ!」
「普通のキャンプなんてつまんねーだろ!俺たちのキャンプは『グレート』じゃなきゃダメなんだよ!」
「グレートの定義おかしいから!」
三人の掛け合いが、冬のキャンプ場に響く。隣のテントの若いカップルが、呆れた顔でこちらを見ている。
だが、三人は気にしない。なぜなら、これが彼らの『グレートなキャンプ』だから。
石川がスプーンで残りのオムライスをすくう。まだ温かいそれを口に入れ、目を閉じる。
「やっぱり...魂が韓国行くわ...」
「まだ言ってる...」
富山が苦笑いする。
だが、彼女も、そして千葉も、スプーンを止めない。なぜなら、このオムライスは本当に美味しいから。竜三という職人の七十年の技術と情熱が、この一皿に込められているから。
冬の冷たい風が吹き抜ける。だが、三人の心は温かい。美味しい料理と、仲間と、そして『グレートなキャンプ』の思い出で満たされている。
遠くの山々に日が傾き始める。オレンジ色の光が雪を被った山頂を照らす。
「さて、じゃあ次は...焚き火でもするか!」
「いいですね!焚き火最高!」
「もう...好きにして...」
三人の影が、夕日に長く伸びる。
そして、どこからか竜三の声が聞こえたような気がした。
「お前たち、風邪引くなよ。冬のキャンプは体調管理が肝心だ」
三人が振り返るが、そこには誰もいない。ただ、冷たい風が吹くだけ。
「...幻聴かな」
「いや、竜三さんの魂が見守ってくれてるんですよ!」
「だから魂ってそんな簡単に...」
こうして、『俺達のグレートなキャンプ212』は幕を閉じた。
次はどんな『グレート』が待っているのか。それは誰にもわからない。
だが一つだけ確かなことがある。
それは、三人がまた『グレートなキャンプ』を求めて、どこかのキャンプ場に現れるということだ。
おわり
※追記:後日、石川たちは「洋食屋 竜」を訪れ、竜三さんに完成したオムライスの写真を見せた。竜三さんは「まぁ、六十点だな」
『俺達のグレートなキャンプ212 オムライスを作り続けて70年のシェフから御指南を』 海山純平 @umiyama117
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