第3話 出会い
ドアをノックする。
「入れ」
部屋に入ると、マスターと青年がソファに向かい合わせで座っていた。
「来たか、彼の隣に座ってくれ」
言われたとおりに座る。
隣の青年は、漆黒の髪に紫の目の眉目秀麗な容姿をしている。
世間的には顔立ちが良いとされる部類だろう。
何となく誰かに似ている気がするが、気のせいだろう。
「紹介する。ヴァイスだ」
「噂は聞いてるよ。同じS級同士、よろしく!」
この人も噂を知っているのか。
自分、結構有名なのか?
「……ルネです。よろしくお願いします」
「さて紹介を済ませたことだし、本題に入るぞ。今日お前らを呼んだのは、スタンピードの処理にあたってほしいからだ。最深のボスを倒して欲しい」
スタンピード──
ダンジョンから大量の魔物が出てくる現象で、最深のボスを倒すことで防げる。
以前、本で読んだ。
「場所は?」
「帝都に一番近い、二人組専用のダンジョンだ」
二人組専用?
バディもパーティーもお互いの苦手分野を補うために組むものだ。自分にはそれがない。
だから、ソロ冒険者だ。
それに、自分は社交的ではないし、協調性もない。
そんな自分に二人組のダンジョンを依頼するのは、良くない選択だと思うが。
「それなら初対面の俺たちじゃなくて、バディを組んでいる人に頼むべきじゃないか?噂では片方が欠けると、出られないという話だぞ」
「頼んだが、諸事情で断られた。それと、その噂は事実だ。しかしお前らの実力なら十分、攻略可能だ」
まあわざわざソロ冒険者に頼むぐらいだから、そうだろうとは思った。
それよりも片方が欠けたら出られない、
これがかなり厄介だ。
下手をすれば、自分が相手を守りながら進むなんてことも考えられる。
ヴァイスという人は少し悩んでいる。
「……はあ、そうか。懸念点はあるが……分かった、引き受ける。ルネは?」
引き受けてみるか?
二人組専用ダンジョンは今まで入ったことないし、どんな感じか気になる。
「……自分も引き受けます」
片方が死なないようにすればいいだけだ。
──その片方が余計なことをしないならいいが。
連携は、その時にどうにかしよう。
「そうか、二人ともありがとう」
これは礼を言われることなのだろうか。
予想外の仕事を追加されたのは事実だけれど。
「スタンピードの話の続きだが、金色のスライムがダンジョンから出てきたことが確認されて三日が経っている」
「ということは、あと22日後か」
「それにこのダンジョンは魔物だけでなく、トラップも多い。普通のダンジョンよりは攻略に時間がかかるだろう」
トラップか…
さっきまでいたダンジョンを思い出すな。
「でもお前らの実力なら大丈夫だ。だが、念のため早めに話を通した」
「攻略時間が三週間もあるのはありがたい。前は一週間で攻略しないといけない、なんてこともあったしな」
「ああ、その節はすまなかったな」
「ははは、間に合ったからいいさ」
ふと、ヴァイスが自分が腰元にさしている魔剣に視線を向ける。
しかし、すぐに視線を元に戻してマスターと話し始めた。
………?
「さて話は以上だ。今日は帰ってゆっくり休んでくれ。明日は準備、明後日から攻略を頼む」
話が終わり彼は部屋から出て行った。
するとヴァイスに話しかけられる。
「……なあルネのその剣、なんだか見ていると安心するんだが、そういう効果をもたらす魔剣だったりするのか?」
安心?
警戒するべき気配をしている、この魔剣に?
普通の人なら恐怖で離れるぐらいだぞ。
「……そんな効果は全くないです」
「そうか…他の魔剣を見たことがあるんだが、その時は背筋が冷たくなるような、ゾッとするような感じだった。だから不思議に思ってな。変なことを聞いてすまない」
なるほど、違う感覚だから驚いたのか。
この剣の正体がバレていないなら大丈夫だ。
ギルドを出た。日差しが眩しい。苦手だ。
二人組専用のダンジョン攻略──
他人との行動が何か面倒を引き起こさなければいいが……
そう考えていた。
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