第2話 依頼達成


ダンジョンは魔物の巣窟だ。


今も魔物が飛び出してきたが一瞬で灰になる。

戦闘中、判断を鈍らせる余計な事は考えない。



もうすぐで結界の張ってある安全な空間に着く。

何とか夜中までに到着できそうだ。



外に戻ったときのために、

ある程度の体内時計は整えておかないといけない。



攻略を進めていくと、予定通りに空間に到着した。



結界の中は人の姿は無く、自分の出す音しか聞こえないほどに静かだ。


地上へ戻れる魔方陣の位置を把握する。

これの欠点は、地上からはここに来れないことぐらいだ。




改めて誰もいないことを確認する。


ようやくフードが取った。



……はあ、やっと休める。



そこには深緑の目の平凡な顔立ちの少女がいた。

亜麻色の髪を三つ編みにしている。

背は女性の平均より高く、男性よりも低い。


地面に腰を降ろし、壁を背もたれ代わりにして、

一息ついた。


服越しに伝わる冷たさが心地良い。



──こうしていると考えてしまう。


自分は何でまだこんな所にいるんだろう。

本当なら今頃、旅をしているはずだったのに。


それが自分を生かしている唯一の欲なのに、と。



でも、倒した魔王とは別の魔力に気付いてしまった。


その魔力の持ち主を対処して、ようやく自分の人生が始まる。



その後は?



自分は加護のせいで、老衰以外では死ねない身体になってしまった。

だから人生に終着点がある状態にする、それだけでいい。



首を振った。



……今日は、早めに休もう。


すぐにテントや寝袋の準備をし、夕食を食べる。


疲れのせいか、夢は見なかった。




朝、目を覚まし準備を済ませ、ひたすら前進する。



しばらくして自分の身長の何倍もある扉が現れた。 今までの経験上、ここがダンジョンの最深部だと分かっている。


目的はここのボスから得られる素材。



自分は躊躇うことなく扉を開ける。



明らかに空気が変わった。

それに加え、このフロアの真ん中には他の魔物と段違いの存在感を放つウロボロス。



さすが最深のボスというべきだろうか。



だが倒せない敵ではない。



辺りの様子を窺う。


敵はこのウロボロス一体のみ。


必要なのは、これが脱皮した皮。

詳しくは知らないが研究用だそうだ。



戦う理由はない。無視しよう。


あり得ないと思うが、失敗したら積み重ねた時間が無駄になる。


無意味な死は失敗だ。

有益にならないから。



思考を振り払うように、辺りを見回し皮を探す。



……あった。  



最近のものらしく大きさも十分ある。


やはり気配隠蔽は便利だ。

ボスの目の前を歩いても気付かれもしない。


しかし、意識しないと使えない。

雑魚と戦う時に何度も使っていたら、今ここで発動できなかっただろう。


皮を異空間に収納した。 もうここに用はない。




昼前にギルドに着いた。



一階は酒場と受注所が併設されていることもあって、沢山の人で賑わっていた。


それぞれお酒を飲んだり、依頼を選んでいる。



「……お願いします」



受付嬢に皮を渡す。

彼女にこちらを見られている気配がする。


しかし目は合わない。自分が合わせないようにしている。



誤解しないで欲しいが、この人が嫌いというわけではない。



全員に対してそうなってしまう。



「お疲れ様です!ルネさん。いつも綺麗な素材をありがとうございます!他の子からも評判なんですよ~!」



褒められた。



「……そうなんですね」



返し方が分からない。



「これで、手続きは終わりになります。……あ!そういえば、先程、マスターがあなたを探しているようでしたよ」


「……彼はどちらに?」



何故、マスターが自分を?

自分は全く心当たりもないし、話すのも苦手なのに。




「この時間は、おそらく二階にいらっしゃると思います。よければ、案内しますよ!」


「……大丈夫です」



面倒ごとになりそうだと思いつつも、自分は二階に向かった。



何かが狂う予感を無視して。

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