世界最強の極悪魔王、眷属コツコツ育成中〜転生特典の【魂操作】で眷属を育てたら剣と魔法の異世界を征服してた件〜

ウサギ様

プロローグ

 いつだって俺の見る夢は数字と文字の羅列だった。


 多くの場合は自身の願望や経験や記憶から夢を見るらしい。

 ならばなるほど、俺の見る夢が数字と文字に埋め尽くされているのも納得である。


 俺は人との関わりなんて少なくていつも自分の世界に潜り込んでいた。

 理由は覚えていない。


 親しい人がいないことも一因だろうが、親しい人がいないのは俺が自分の世界の中にいるからだろう。

 人間関係で傷つくのが嫌という話を聞かないわけではないが、俺は早々に人間関係を絶っていたからそんなトラウマになるような経験もない。


 それらしい理由も見当たらないが……まぁ、普通に好きなのだろう。真理の追求というものが。


 深い理由も激しい動機もないただの関心が理由だろうと思えばスッキリする。


 ……最期にスッキリ出来てよかったな。と、空中で動かない自分の身体と迫ってくる電車を見ながら考える。


 酔っ払った男女の痴話喧嘩に巻き込まれて線路に落ちかけた女性を引っ張った勢いで代わりに落ちてしまったのだが、そのおかげで視界の端にいる女性は上手くホームの方に転がったらしい。


 代わりに線路に落ちた俺を見る見知らぬ女性は悲鳴をあげている。

 ……失敗したな。もう少し対人関係に時間を割いていれば笑顔でも作って恨みはないと示せたのに、長年サボりきっていた表情筋は硬くて仕方がない。


 不恰好な笑顔を作って見せて……。


 ふと、思う。

 そういや、俺はなんで助けたんだろうか。

 人間なんて別に大して興味もないのに自分の命を投げ捨ててまで。


 ああ、一度スッキリしたのに気になってきた。

 思ったよりも人好きなのか? 熱血漢なのか? 社会的な生物としての本能か?


 ああ、足りない。

 その疑問をハッキリさせるためにはあまりにも時間が足りない。


 知りたいんだ、俺は、真理を。

 知りたい、知りたい、知りたい、知りたい。


 脳内を埋め尽くす欲望に思わず口角が自然にあがる。

 ああ、まだまだ知りたかった。


 俺は、まだ、何も知らない──。



 ◇◆◇◆◇◆◇


 白い世界だった。あるいは一面真っ黒で。雲のない空のように青く染まっていて、マーブル模様で幾何学的で人工的で自然物の混沌とした──。


 存在していて、存在しない。


 それが死の世界であることはなんとなく分かった。

 あらゆるものが同列に同等に存在していて同時に存在していない。


 ああ、これが死でこれが魂か。

 俺と似たような白いものがふわふわと浮いていて、人間の形はしていないがなんとなく気分がよさそうだ。


 俺も気分は悪くないし、肉体のしがらみがないから不快感というものがない。

 死んでしまったのは後悔ばかりだが、こうしているのも悪くないように思えてきた。


 ただこんな風にぼーっと浮かぶのも……ふと、遠くに何か違うものがある気がする。

 ……気になる。気になってしまう。

 他の誰も気にしていないが俺だけはそれが気になって、動いてもがいて、気が遠くなるほどの時間をかけてこことは違う何かに向かう。


 好奇心のまま向かったそこは、光だった。


 俺はその光に触れて……。


「おぎゃあ?」

「奥様! おめでとうございます! 元気な男の子ですよ」


 失っていたはずの肉の感覚に、ただただ困惑していた。



 ◇◆◇◆◇◆◇



 どうやら異世界で人間の赤子として生まれたらしい。

 らしい……と不確かなのは情報収集の難易度が非常に高いからだ。


 目は上手く開かないし、無理矢理開けてもぼやけて上手く見えない。音は多少聞こえるが、肝心の人の話し声は言語が理解出来ない。


 もちろん手足もマトモに動かないので本当に何も出来ない状態だ。


 ……外国語どころか異世界語か。

 日本にいる限り大概のことが日本語で学べるから外国語に興味を示すことがあまりなかったので、それを学ぶときにどうすればいいのか分からない。


 よく耳にするのは乳母らしき人が話しかけてくる言葉だが、おそらくちゃんとした言葉ではなく幼児が発音しやすい音で作られた幼児語だろう。


 めちゃくちゃ話しかけてくれているがこれは無視でいい。

 優先して覚えるべきは大人同士の会話だろう。


 聞いた言葉を穴埋めパズルのように覚えていく。


 ■■■は頻出する。おそらく人を指す単語で、俺もしくは俺の世話をしてくれている乳母のことだろう。

 個人の名前なのか乳母や使用人、あるいは赤子などを意味する言葉かは不明だ。


 ◇◇◇は俺の父母らしき人と話す乳母の口からよく出る。父母のことなのか俺のことなのかは分からないが人を指している可能性が高い。もしかしたら一人称かもしれない。


 ◆◆◆はおそらく食事のことだと思う。だが幼児語だと思われるので情報収集には不向きだし、俺に話しかけるときにしか使わない。


 ○○○と◎◎◎も幼児語だ。

 幼児語はわかりやすいため二、三日で覚えられたが、通常の会話には出てこない。


 ■■■という言葉も俺に話しかけるときに使われることが多いので、これを俺の名前であると仮定するのがいいだろう。


 ルシオン……それが俺の名前らしい。


 自分の名前が判明してからは早いものだった。変わり映えしない赤子の生活で使われる言葉の語彙が少ないのも幸いして簡単な言葉なら理解出来るようになっていた。


「メイル、ルシオンの様子はどうだ?」

「旦那様……また見にこられたのですか? 奥様に怒られますよ? 前に見にきてから1時間も経っていないので何も変わりませんよ」

「そうかそうか。それはよかった。ルシオーン、パパだぞー。■■■■■(解読不能の単語、おそらく解読の意味がない)」


 と、こんな具合だ。

 幼児の生活リズムはあまりに不安定でいつのまにか熟睡していることもあるが、正確な時間は分からないが一月は経っていないだろう。


 多少目は見えるようになってきて、ぼやけもマシになった。

 あまり体を動かせないので思うように周りを観察出来ないけど色々見える。


 簡素な子供用の部屋だが、見たこともない照明器具が使われている。窓から外が少しだけ見えて広葉樹の姿が確認出来る。


 乳母は優しそうな人で、父は威厳があるが俺にはデレデレしている。

 母はあまり見ないが、どうやらまだ体調が回復しきっていないらしい。

 線が細くとても綺麗な人だと思う。


 兄弟姉妹はおらず、現状ひとりっ子。乳母と父母以外にも人の気配が多数あるので使用人がかなりたくさんいるらしい。

 あとは医者らしき人が何人か様子を見に来るぐらいか。


 ──で、まあ今のところ地球の知らない国の富裕層でもあり得るが、ここを異世界だと思った理由も当然ある。


 乳母のメイルから白い湯気のようなオーラが軽く漂っているのだ。初めは視力の低さと脳の未発達による幻覚かと思ったがどうにもそうではなさそうだ。


 父や母も同じようなオーラを漂わせていて、メイルとは違って父は赤色、母は青色をしている。

 それに父の赤いオーラは非常に大きく揺らぎ方が少ない。反対に母の青いオーラはなんとなく弱々しい。

 時々見に来る医者達は全員白色で、揺らぎが少ないという特徴がある。


 もちろん地球人はこんな目に見えるオーラを纏っていないので異世界だろうという判断だ。


 そして俺自身は……薄黒いオーラを纏っている。赤子だからかは分からないが、大人の中で一番弱い母よりも弱々しいし途切れ途切れで不恰好だ。


 オーラの観察を始めてから半日、暇つぶしにオーラを触ろうとしてみるが触れない。どうやら物理的な実態はないらしい。


 まぁ触れるものだったらみんな普通に動き回るのは無理だろうし、そもそも呼吸しようとしても窒息するよな。

 どうにかアプローチ出来ないかと考えていると、乳母のメイルが俺をコロンと寝返りを打たせる。


 そのときに確かに見た。メイルの白いオーラと俺の黒いオーラがぶつかって、白いオーラが俺のオーラを押し除けた姿を。

 どうやらオーラ同士は干渉するので全く干渉できないわけではないようだ。


 それに加えて、メイルが驚いたときや俺の父に呆れたときなどにオーラの歪み方が変化する。

 つまり人の意思や反応でもある程度は動くようだ。


 まず感情を揺らすようなことを考えてオーラの変化を確認し、なんどもそれを繰り返してどう考え、どう思えばオーラがどう動くのかを確認していく。


 実験のつもりだったが……ずっとそんなことをしていたからか、オーラを動かすことが出来るようになっていた。

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