気持ちの妄想

気づき……


アイエムは、無事帰還した。


…「あ。 え。」


待機センターで、スタッフと共に、少し場を借りる。


アイエムには、帰る「居所」など無かったのだ。


そこへ、とっと現れた...


「俺の事、忘れてないよな?」


…「あ。」


体を少し前に倒して、アイエムを覗き込む、見慣れた青スーツと黄色の星ピン。


自らの顔に人差し指。


「“知らないよ”って。 明らかに忘れているだろう! この俺様、エイムを!」


「君の居所はもう確保された。 俺に付くのがいい!」


…「え。」


「“あっち行って”? 何が何でも付いてくるのだ、!」


「あっ。 あ。」


腕を強引に引っ張られる。


この度は、目的がある様だ。


****

…「あ。 え。」


「ここなら、俺達は自由だ。」


見慣れない、施設の一角。


「分かるだろう。 俺は君の監視役だ! 君の全ては、既に見通している。」


…「え。 あ。」


「“ウザイ”? そりゃあそうだな。 俺は...」


「俺は... おれ...」


…「あ。」


「ううう。 何なんだ、この感情は!」


「いや、好きだ!」


「いや、誰がその様な事を言ったのか?!」


…「あっ。 あ。 え。」


「ほほう... どうやら困っている様だね?」


「やはり生き返りの産とは、純粋で可能性の秘めた夢ある者だ!」


「あいや、別に君をあやかしている訳では無い。 俺は単純に...」


「俺は...」


…「あ。」


****

エイムは、アイエムに抱いた。


計算外で、上手く表現できない。


「ぐぐぐ。 俺はアイエムに付いて行く事で彼女の安全と可能性を見出す、人間アンドロイドだ、バティサスにより開発された、今一番の技術を計算中...」


…「!」


…「あ?」


バティサスが?



見守られてるんだ。


…「あ。 え。」


「」


気づけば、エイムは機能不全に至っていた。


体を前に倒して、腕も垂れていて、何者でもなくなった。


…「あ。」


それを助けるアイエム。


****

スタッフが見つけたアイエムは、エイムを後ろから抱いて、包囲していた。


「大丈夫か?」


…「あ。 あ。」


「...そうか。 ここへは、いつでも来るんだぞ。」


「ああ。 待ってるからな。」


「あなたの立派な一員です! では、またの機会に。」


スタッフに挨拶を交わした後、エイムの修理を探す為に、一人で道路へ飛び出る。


比較的忙しい、ビル群。


窓の電灯に、クリスマスの様な電飾の風景。


それでも、道路や道だけは閑散としていた。



****

歩く。


歩く。


歩き歩き...?


者。


顔を、合わせる。


者。


顔を、合わせる。


バティサス。


…「あ。 あっ。」


バティサスは、アイエムが担ぐエイムを見て、嬉しそうだ。


二人、気が合う。



ありがとう。


…「あ、え。」



そうして、バティサスは彼女を「居所」へと受け入れた。


****

…「あ。 あ?」


ここは、私の「居所」。


周りの機械には、触れないでね。


私は機械技師として、この世界を動かすの。


…「あ。 え。」


エイムの技術も、「世界技術」の一つよ。


この技術は、心の力で動くの。


愛する者、守りたい者、目指すもの、夢見るもの...


全ては、気持ちよ。


…「あ。」


****


ごめんね、彼はどうしようもないみたいで。


でも、きっとあなたの事が好きなんだよ。


私の、あなたへの強い親近感と同じくね。


…「あ。 え。 え。」


きっと、私たちは運命なんだよ。


どこかで、出会ったのかもしれないね...


なんてね。


…「」



懐かしい。 暖かい。


その気持ちこそが、アイエムにとって、ノスタルジーだった。



…「あ。」


さあ。 彼の修理を終えたよ。


二人で、正直に和解しなさい。


正直な気持ちを伝えるの。


心の中心から、繋がっている所から。


****

「...ふうう、長い眠りであったのだ、俺は...」


「は! バティサス... アイエムもここに?」


そう。


私が受け入れたの。


「なんて事だ! 俺達の陰謀は破られた!」


いや、これは私の気持ちよ、エイム。


あなたも正直になりなさい。


「...ええ?」


見つめるアイエム。


…「あ。」


…「あえ。 あ。」


「お?! ”好きだよ“って、ほほう! なんて清々しいのだ!」


「俺は、君の事が...」


ニヤリ。


「嫌いだ。」


こら。


冗談は、ダメよ。


****

「っ、何でも良い! 俺には愛というモノはない!」


「ましてや生き返りの産である、この女性と...  恋をするわ訳にいかない!」


「...そんな君が、好きだ!」


「今のは、何だね?」


…「あっ。 あえ。」


「ええ? ...ううう。」


「ぐあああ! 分からない! 俺はアイエムに振り回されている!」


「好きになってくれ!」


…「あ。 あ、ん。」


「?!」


キス。


****

バティサスは、今にも嬉しそうだ。


「んんん。 ん...」


…「」


合わさる、顔。


二人、深めて。


終わった。


「...」


「好きだ...」


…「ん。 ふ。」


あら、どんどん口を覚えていくね、アイエム。


良いよ。 それも気持ちなの。


さあ。 旅を続けなさい。 次どこへ行くかは、分かるでしょう。


「......ああ、面白くなってきたぞ! もうアイエムは私の虜だ!」


「さあ! アイエムよ、どこまでも行くのだ!」


…「あえ。 い。」


****

次にビル群を二人で歩いた時は、道路や道が人で溢れかえっていた。


みんな、何かを祝う為に忙しい様だ。


…「あ。 い?」


「ああ、分かるだろうアイエム。 これは”クリスマス“と言う喜ばしき祝いだ。」


「みんなで美味しい食を共にして、ツリーをキラキラにさせて、プレゼントを迎えたら、気持ちを共感させるのだ!」


…「あい。 し。」


「ほう? ”私も参加したい“、て。 もちろん、この世に存在する限り、皆が共有するものだ。」


「だからなあ? 俺達で、準備をしようではないか!」


…「いい。 あ。」


「さあ! クリスマスはすぐそこだ!」


頭に、冷たい何か。


「...お?」


…「あえ?」


星の光る夜空に、散らつく白。


どうやら、雪が降ってきた様だ。


それが、この世にとって、初めての雪であった。

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アニムス テヴェスター @tvstar_1999

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