アニムス

テヴェスター

始まり

始まりの妄想

気づき……


アイエムは目覚める。


産の顔に最初に触れ気づいたのは、みずみずしい葉。


葉の下で眠っていた様だ。


起き上がる。


…「あ。」


どこまでも続く、草草。


暗い影と、明るい緑色が開いた口に射し込んでくる。


……


目の前の事を頬張って。


歩こう。


****

布一枚姿のアイエム。


未知の素足を一歩一歩、確実に掻き分けてゆく。


緑と、線路の見えるところ。


出口は、遠くて、近い。


…この森は、比較的暗い。


きっと、この外も暗い世界なのであろう。


葉を掻き分けたこと数何十歩。


星が輝く、夜空の砂漠へと到達した。


線路は示唆を続けて、オーロラが出迎えてくれた。


…「あ。」


****

まず、近い岩にスサッと姿をくらます。


大きな、岩石。


アイエム。


横顔を突き出して、見る。


サボテンの数々と、光り続けるオーロラ。



とりあえず、確認した。


ここには、「自分」しか居ない。


…歩こう。


****

砂漠の清々しい砂が足を躍らせる。


線路を側に、歩く。


サボテンも、後を付くように。


…「あ。 え。」


音に気付いたアイエム。


線路から離れる。


走る、電車。


赤帯の、特定。


どこか、懐かしい。


…他の存在?


電車は止まる事無く、後を去る。


気になる?


後を付こう。


****

ステップ、ステップ。


先を急ぐかの様に、砂を弾く。


…「あ。」


見えてくる、乗り場。


急ぎ足を確実に、地面に下ろす。


丁度、止まっている電車に見合う高さ。



上がっていく。


乗ろう。


****

ドアが開く。


車内は、明るい。


座ると、閉めてから発進。


……


丁寧に重なる、手と姿勢。


横側。


誰かが一緒。


横側。


見てる。


二人、顔合わせ。


…「え。」


バティサス。


二人、気合わせ。



気が合う様だ。


****

暗い運転室。


ハンドルから手を離す、運転士。


席を立つと、車内を歩く。



…「あ。」


二人で、窓を見る。


…「あ。 あ。」


目の前に気づくと、運転士。


「チケットは持ってるかい。」


……


…「え。」


おどおど。


バティサスが、見せるのは、赤い紙。


それを確認して納得いく。


「ちょっと、来てくれるかな。」


連れて行かれるアイエム。


…「え。 あ。」


****

辿り着いた運転室。


制御を再開する。


…「あ。」


綺麗な夜空の風景。


ここは、一番見栄えがいい。


走り続けるノスタルジー。


警笛を、一つ。


線路は、どこまでも。


星が光る。


…彼方?


****

席に戻ると、バティサスは居ない。


…「あ。」


そのうち電車は、止まる。


辿り着いた、果てしない目的地。


ドアが開く。



降りよう。


階段を、一つひと段。


電車に、さようなら。


暗くて濃い青の空に、立ち込める霧が激しい。


ビル群が立ち並ぶ。


…「あ。」


閑散とした道路を、産の素足で制覇する。


来る者を受け付ける、一室。


…「あ。 え。」


覗くと、狭い。



入ろう。


****

「こんにちは。」


…「あ。」


狭い資料の集まった視覚室の奥に座る、白衣の中年くらいのおじさん。


「ここに座ればいいよ。」


向かい合わせの、黒いスツール。


指示通りに従う、アイエム。


「じゃあ、ちょっとテストを受けようか。」


…「あ。」


目に当てられる、ビューワー。


見る。


色々映り過ぎていく。


「もう少し。」


シャシャシャ。


「うん、もういいよ。 こっち見て。」


…「え。」


顔の位置は、戻った。


****

結果。


「君ね。 視力がとても良い。」


「力があるよ。 でも、まず着替えようか。」


…「あ。 あ。」


貰った、服装の一式。


「隣のドアが着替え室だよ。 焦らずに、待ってるよ。」



着替え室に、入室。


服装の一式を確認したら。


今まで纏っていた、布を巻き下ろす。


鏡に映るのは、綺麗な肌色。


ささっと、履いたパンツ、ソックスとブラジャー。


少し、最近の人間の感じになる。


ズボンとタンクトップも、着る。


もうそこら辺の、女性みたいだ。


お決まりに、黒い靴と、白いグローブに、黒と青のジャンパーを着れば...


気分は、パイロット。


****

…「あ。」


着替え室を、退室。


「良いね。 座って。」


着席。


「君ね、操縦が一番得意そうだから。 それを目指すと良いよ。」


…「あ。」


「一定の場所に行けば、みんなそこで待機してるよ。 君の事は、伝えてあるから。」


「じゃあね。 以上です。」



ありがとう。


一室を後にする。


霧のビル群を、また歩く。


確実な、一歩の足で。


****

…「あ。」


近寄ってくる、棒マイクを持って、青スーツと星ピンの、おおらかな、男。


少し機械的な匂いもする。


「なあ。 びっくりするなよ。」


…「え。」


「なになに? “あなたは誰?”って。」


「俺はエイムだ! AI.M.と書く。 この俺が君の会話の司会を務める事になった。」


「さあ! 行くが良い、アイエム! 君の目的地は決まっている。」


…「あ。 え。」


「“どこに行けば良いの? 分からない”って。」


「そりゃあ、また電車に乗って、操縦の出来る所さ! 待機センターだ!」


…「え。 あ。」


「“ちょっと、しつこいな”? この俺に、何様で...」


エイムが、アイエムの背中を包囲した上、腕と手を開いて。


「俺たちは、良い相棒になるさ、なあ?」


「これからが始まりだ!」


……「」


勝手に解釈まで入れば、事に何も言うことがない。


ただ、しつこいのは確か。


****

とりあえず、二人で歩く。


乗り場の所までナビゲートして、来るべき電車を待つ。


「ああ、電車はすぐにでも来るさ。 環状運転だからな!」


…「あ。」


「“あなた、本当に誰? 知らないんだけど”?」


「ああ、気にするな。 俺は、君の会話を訳すためにいる、ただの人間アンドロイドだ!」


…「あ。 え。」


「“誰が作ったの? 変な奴”... 揶揄もいい加減にしろよ、なあ! それは秘密だ。 ただ一つ、俺の技術は素晴らしい!」


「君の、産のポツポツした会話よりは優れてると思うぞ。 それにしては、布一枚だと思ってたのがフル装備だ!」


…「あ。」


「“さっき、テストを受けて、着替えてきた”? そうだろうな。 君の可能性はそれくらいに、永遠だ!」


「あ、いや。 別に君の事を過大評価する訳ではない。 君はまだ、生き返ったばかりの産だ!」


…「あ。 あ。」


警笛。


電車が来た。


「さあ! 乗るがいい! どこまでも行くのだ、アイエム!」


「ああ、俺も付いて行くがな!」


****

電車は、一通り走って、目的地に着いた。


この間、バティサスは一度も姿を現さなかった。


電車を降りると、忙しい待機センターに辿り着く。


「さあやって参りました! “待機センター!”」


…「あ。」


「”何をするの? 分からない“って。 分かるだろう! あのエアークラフトに乗るのだ!」


アークバイパー。


二人の目の前に、そびえる戦闘機。


スタッフも、待ちわびていたかの様に、誘導してくれる。


「ああ、とりあえず、最後に一つ。 俺はこの先、付いていけない。」


…「あ。」


「”いや、しつこいからいいよ“、て。 俺が居ないと、君は話せないだろう! まあいい、それで何とかなってるみだいだからな!」


体を少し前に倒して、手を背に添えた上、もう片手をフイフイ振るエイム。


「じゃあ、行ってら!」


……


****

段を上がる上がるアイエム。


それで、コクピットに着席した。


メンテナンスの後、準備ができる。


「発進準備。」


スタッフの合図で、気を引き締める。


目を瞑る。


集中。


前を向くと、目が青白く光って。


さあ、行くんだ。


****

飛行する、アイエムとアークバイパー。


上手く操縦できている。


高度は上がって、夜空は近寄って、もう空を制覇した。


見下ろすと、様々な風景。


森、砂漠、ビル群、センター。


様々な、思い出や出会いが、見える。


前を見ると、彼方の星星が光る。


目指すのは、そこだ。


****


人生よ、永遠にある。


世界よ、果てしなく続く。


世は、限りなく。

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