第24話




 アジトに戻ると、全員が驚いた顔で出迎えた。

「結衣! 紫苑!」

 明日香が駆け寄ってきた。

「戻ってきたんだ!」

「うん……戻ってきちゃった」

 結衣は苦笑した。

「逃げられなかったの」

「そっか……」

 明日香は複雑な表情を浮かべた。

「でも、戻ってきてくれて嬉しい」

「ありがとう」

 三人は抱き合った。

「全員、集合しろ!」

 冴子が叫んだ。

 全員が集会室に集まった。

「これから、重要な話をする」

 冴子は全員を見回した。

「我々は、これまで防戦一方だった」

「政府に追われ、逃げ回り、隠れていた」

 冴子の声が、力強くなった。

「だが、もうそれは終わりだ」

「これからは、我々が攻める」

 全員がざわめいた。

「攻める? 政府に?」

「ああ」

 冴子は頷いた。

「我々は、革命を起こす」

「革命……?」

「そうだ。この腐敗した政府を倒し、覚醒者の自由を勝ち取る」

 冴子は拳を握りしめた。

「もう、道具のように扱われるのは終わりだ」

「我々は、人間だ!」

 冴子の言葉に、全員が拍手した。

「では、具体的な作戦を説明する」

 冴子は地図を広げた。

「第一段階――覚醒者の解放だ」

 地図には、全国の覚醒者収容施設が示されていた。

「全国に、覚醒者を収容している施設が十箇所ある」

「ここを襲撃し、全ての覚醒者を解放する」

「十箇所も……?」

「ああ。だが、同時襲撃する」

 冴子は日付を指差した。

「一週間後の夜、一斉に襲撃する」

「そんなことできるの? 人数が足りないんじゃ……」

「心配ない」

 冴子は微笑んだ。

「実は、他の解放戦線グループと連携している」

「他のグループ?」

「ああ。全国に、我々と同じような組織がある」

 冴子は説明した。

「彼らも、政府の暴政に反対している」

「今回、連携して一斉襲撃を行う」

「すごい……」

 結衣は驚嘆した。

 こんな大規模な作戦を、冴子は準備していたのか。

「第二段階――」

 冴子は続けた。

「解放した覚醒者たちと合流し、兵力を増やす」

「そして、第三段階――」

 冴子の目が、鋭くなった。

「東京の政府中枢を襲撃する」

 全員が息を呑んだ。

「政府中枢……それは……」

「ああ。覚醒者対策本部だ」

 冴子は真剣な顔で言った。

「ここを制圧すれば、政府の覚醒者管理システムが崩壊する」

「そして、我々の勝利だ」

 冴子の言葉に、全員が沈黙した。

 壮大な計画だ。

 成功すれば、本当に革命が起きる。

 でも――

「できるの? 本当に?」

 一人のメンバーが聞いた。

「できる」

 冴子は断言した。

「いや、やるんだ」

「これが、我々の最後のチャンスだ」

 冴子は全員を見回した。

「もし失敗すれば、全員死ぬかもしれない」

「だが、成功すれば――」

 冴子は窓の外を見た。

「自由を手に入れられる」

 全員が沈黙した。

 しばらくして――

 一人が立ち上がった。

「俺は、やる」

「俺も」

「私も」

 次々と、メンバーが立ち上がった。

 全員が、冴子の作戦に賛同した。

「ありがとう」

 冴子は涙を流した。

「では、準備を始める」

「一週間後――革命が始まる!」

 全員が拍手した。

 そして――

 それぞれの準備に取り掛かった。


 その夜。

 結衣と紫苑は、部屋で二人きりだった。

 明日香は、作戦会議に参加していた。

「すごい計画だね……」

 結衣が呟いた。

「うん……本当に、革命が起きるかもしれない」

 紫苑も同意した。

「怖い?」

「うん……正直、怖い」

 結衣は認めた。

「失敗したら、死ぬかもしれない」

「……私も怖い」

 紫苑も認めた。

 二人は沈黙した。

「でも」

 結衣が口を開いた。

「やるしかないよね」

「うん」

 紫苑も頷いた。

「もう、逃げられない」

「だったら、最後まで戦おう」

 結衣は紫苑の手を握った。

「一緒に」

「うん、一緒に」

 二人は抱き合った。

「ねえ、結衣」

「ん?」

「もし、全てが終わったら……」

 紫苑は結衣の目を見た。

「やっぱり、南の島に行こう」

「今度こそ、誰にも邪魔されずに」

「うん」

 結衣は微笑んだ。

「約束だよ」

「約束」

 二人は指切りをした。

「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ます」

 何度目の約束だろうか。

 でも、その度に――

 二人の絆は強くなっていった。

「じゃあ、寝よう」

 紫苑が言った。

「明日から、訓練が始まる」

「うん」

 二人はベッドに入った。

 抱き合ったまま。

「おやすみ、結衣」

「おやすみ、紫苑」

 二人は目を閉じた。

 でも――

 なかなか眠れなかった。

 一週間後のことを考えると、不安で。

「結衣、起きてる?」

「うん……眠れない」

「私も」

 紫苑は結衣を抱きしめた。

「怖いよね」

「うん……」

「でも、大丈夫」

 紫苑は結衣の額にキスをした。

「私が、絶対に守るから」

「私も、紫苑を守る」

 結衣も紫苑にキスをした。

「一緒だから、大丈夫」

「うん」

 二人は抱き合ったまま、いつの間にか眠りに落ちた。


 翌朝から、地獄の訓練が始まった。

 全員が、戦闘能力を最大限に引き上げるために、必死に訓練した。

 結衣は、魔法の訓練を続けた。

 ヒューゴの指導の下、さらに強力な魔法を習得した。

『新スキル習得:聖域展開(サンクチュアリ) Lv.1――味方全員の防御力+50%、HP回復速度+100%――持続時間:10分――消費MP:200』

『新スキル習得:光の裁き(ジャッジメント) Lv.1――対象に大ダメージ+悪属性に特効――消費MP:150』

 強力なスキルだ。

 これで、結衣の戦闘力は格段に上がった。

 紫苑も、訓練を続けた。

 堕天者の力を、さらにコントロールできるようになった。

「【魔剣解放(ダークブレイド)】――持続!」

 紫苑は黒い剣を長時間維持できるようになった。

 以前は、数分で限界だったが――

 今は、三十分維持できる。

『新スキル習得:堕天の翼(フォーリンウィング) Lv.1――飛行可能――持続時間:20分――消費MP:100』

 翼も、自在に出せるようになった。

「すごい、紫苑!」

 結衣が感嘆した。

「もう、完全に堕天者の力をコントロールしてる!」

「まだまだだよ」

 紫苑は首を振った。

「でも、これで革命に貢献できる」

「うん」

 二人は笑い合った。

 明日香も、訓練を続けた。

『新スキル習得:暴走モード Lv.1――全ステータス+100%――持続時間:5分――代償:HP半減』

 危険なスキルだ。

 だが、強力だ。

「これで、私も戦える!」

 明日香は拳を握りしめた。

「絶対に、勝つ!」

 全員が、それぞれの方法で強くなっていった。


 訓練三日目。

 結衣は一人、川辺で休憩していた。

 疲労が溜まっていた。

 体も、心も。

「大丈夫?」

 背後から、冴子が来た。

「あ、冴子さん……」

「無理してない?」

「大丈夫です……ちょっと疲れただけ」

「そう」

 冴子は結衣の隣に座った。

「結衣、聞きたいことがある」

「何でしょう?」

「お前、なんでここに残ったんだ?」

 冴子は結衣を見た。

「南の島に逃げるチャンスがあったのに」

 結衣は考えた。

 なんで、残ったんだろう。

「……わからないです」

 結衣は正直に答えた。

「でも、逃げたくなかった」

「どうして?」

「みんなを置いていくのが、嫌だったから」

 結衣は川を見つめた。

「冴子さんも、明日香も、他のみんなも」

「みんな、大切な仲間だから」

「そっか」

 冴子は微笑んだ。

「お前、優しいな」

「そんなことないです……」

「いや、優しいよ」

 冴子は結衣の肩を叩いた。

「だから、みんなお前のことが好きなんだ」

「冴子さん……」

「でもな、結衣」

 冴子は真剣な顔になった。

「革命が成功したら、紫苑と二人で逃げろ」

「え?」

「もう、十分戦った。後は、他の奴らに任せて――」

 冴子は空を見上げた。

「お前たちは、幸せになれ」

「でも……」

「いいから」

 冴子は結衣を見た。

「お前たちには、未来がある」

「戦いだけの人生じゃなく、幸せな人生を送る権利がある」

 冴子の目には、涙が浮かんでいた。

「だから、逃げろ」

「……わかりました」

 結衣は頷いた。

「でも、冴子さんも一緒に来てください」

「私は……」

「お願いします」

 結衣は冴子の手を握った。

「冴子さんも、幸せになってください」

 冴子は驚いた顔をした。

 そして――

 微笑んだ。

「ありがとう、結衣」

「考えておく」

 二人は川辺で、しばらく話し続けた。


 訓練五日目。

 全員の戦闘力は、最高潮に達していた。

 結衣はレベル40。

 紫苑はレベル45。

 明日香はレベル32。

 他のメンバーも、軒並みレベルが上がっていた。

「よし、最終確認だ」

 冴子が集会室で、全員に説明した。

「明後日の夜、午後十時に一斉襲撃を開始する」

「我々は、東京の収容施設を襲撃する」

 冴子は地図を指差した。

「ここだ」

「侵入チームは、私、結衣、紫苑、明日香、ヒューゴの五名」

「他のメンバーは、周辺で陽動作戦を行う」

「わかりました」

 全員が頷いた。

「では、明日は休息日だ」

 冴子は微笑んだ。

「ゆっくり休んで、明後日に備えろ」

「了解!」

 全員が解散した。

 結衣と紫苑は、部屋に戻った。

「明後日か……」

 結衣が呟いた。

「うん……ついに、来るね」

 紫苑も緊張していた。

「大丈夫かな」

「大丈夫」

 紫苑は結衣を抱きしめた。

「私たちなら、できる」

「うん……」

 二人は抱き合った。

「ねえ、結衣」

「ん?」

「今夜、最後まで愛し合おう」

 紫苑は結衣の目を見た。

「明後日が、本当に最後かもしれないから」

「……うん」

 結衣は頷いた。

 二人は服を脱ぎ始めた。

 そして――

 夜通し、愛し合った。

 お互いの体を。

 お互いの心を。

 全てを。

 確かめ合った。

「愛してる、結衣」

「私も、愛してる、紫苑」

 何度も、何度も。

 朝が来るまで。

 二人は、愛し合い続けた。


 革命前夜。

 全員が、それぞれの時間を過ごしていた。

 武器を磨く者。

 祈る者。

 手紙を書く者。

 結衣と紫苑は、外で星を見ていた。

「綺麗だね……」

 結衣が呟いた。

「うん……」

 紫苑も同意した。

「こんな綺麗な星空、久しぶりに見た」

 二人は手を繋いでいた。

「ねえ、紫苑」

「ん?」

「もし、明日死んだら……」

「やめて」

 紫苑は結衣の口を塞いだ。

「そういうの、禁止って言ったでしょ」

「でも……」

「大丈夫」

 紫苑は結衣を抱きしめた。

「絶対に、二人とも生き残る」

「そして、南の島に行く」

「うん……」

 結衣も紫苑を抱きしめた。

「約束だよ」

「約束」

 二人は指切りをした。

 最後の約束。

「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ます」

 二人は微笑み合った。

 そして――

 唇を重ねた。

 星空の下で。

 深く、深く。

 魂が溶け合うようなキス。

「愛してる、結衣」

「私も、愛してる、紫苑」

「ずっと、一緒だよ」

「うん、ずっと一緒」

 二人は抱き合ったまま、星を見上げた。

 明日――

 革命が始まる。

 生きるか。

 死ぬか。

 全てが決まる。

 でも――

 今は、この瞬間を大切にしよう。

 紫苑と一緒に。

 二人は、そう思いながら星を見続けた。

 夜が明けるまで。

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2026年1月13日 12:00
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深淵の狩人たち ―Abyss Hunters― 家守 廃人 @NEET_KING

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