第11話
解放戦線のアジトでの生活が始まって、三日が経った。
結衣、紫苑、明日香の三人は、他のメンバーとも徐々に打ち解けていった。
朝は六時起床。
全員で朝食を取り、その後は訓練。
昼食を挟んで、午後も訓練。
夕方は自由時間。
夜は、作戦会議やミーティング。
規律正しい生活だった。
「おはよう、三人とも」
食堂で、冴子が声をかけてきた。
「おはようございます」
三人は挨拶を返した。
「昨夜は眠れた?」
「はい、ぐっすりです」
実際、結衣はよく眠れていた。
ベッドは固かったが、安心して眠れる場所があることが何より大きかった。
「今日は、特別な訓練をするわ」
冴子は真剣な顔になった。
「実戦訓練よ」
「実戦?」
「ええ。近くの街に、中級ダンジョンが出現した。それを、みんなで攻略する」
「ダンジョン攻略……」
結衣は緊張した。
あの呪いのダンジョン以来、ダンジョンに入っていない。
「大丈夫。今回は、私も一緒に行く」
冴子が微笑んだ。
「レベル45の私がいれば、安全よ」
「……わかりました」
結衣は頷いた。
紫苑も明日香も、同意した。
朝食を終えると、全員が武器と装備を整えた。
総勢十五人のパーティー。
これだけの人数なら、どんなダンジョンでも攻略できるだろう。
「じゃあ、出発するわよ」
冴子を先頭に、一行はアジトを出た。
ダンジョンゲートは、小さな町の郊外にあった。
すでに警察が規制線を張っていたが、冴子が何か言うと、すんなり通してくれた。
「顔が利くんですね」
結衣が言うと、冴子は苦笑した。
「まあね。この辺の警察とは、協力関係にあるから」
「協力関係?」
「ええ。政府の方針に反対している警察官も多いのよ。彼らは、私たちを黙認してくれている」
なるほど、と結衣は納得した。
政府に反対する人々は、思ったより多いのかもしれない。
『ダンジョンゲート――階層:中級――推奨レベル:15~25』
中級ダンジョン。
結衣のレベルは26。
紫苑は30。
明日香は18。
十分、対応できる範囲だ。
「じゃあ、入るわよ」
冴子を先頭に、十五人がゲートに飛び込んだ。
ダンジョンの中は、氷の洞窟だった。
壁も床も、全てが氷でできている。
「寒い……」
結衣は震えた。
気温は氷点下だろう。
「魔力で体を温めて」
冴子がアドバイスした。
「そうしないと、凍死するわよ」
結衣は魔力を体に纏わせた。
体が温かくなる。
『MP消費:毎秒0.5』
呪いのダンジョンの時よりは、消費が少ない。
「敵が来るわ」
冴子が警告した。
前方から――
氷の獣が現れた。
狼のような姿。
全身が氷でできている。
『アイスウルフ――レベル20――HP:600/600』
レベル20。
そして、五体いる。
「散開! 各自、一体ずつ担当して!」
冴子の指示で、全員が散らばった。
結衣は一体のアイスウルフと対峙した。
「来い……!」
アイスウルフが飛びかかってきた。
結衣は魔法を放った。
「ファイアボルト!」
炎属性の魔法。
氷には、炎が効果的なはずだ。
火球がアイスウルフに命中――
『アイスウルフ:HP 300/600』
半分のダメージ!
「やった!」
だが、アイスウルフは怯まなかった。
爪を振るってくる。
結衣は【土壁(アースウォール)】で防御した。
土の壁が出現し、爪を受け止める。
その隙に――
「サンダーボルト!」
雷撃の魔法。
電撃がアイスウルフを貫いた。
『アイスウルフ:HP 0/600――撃破』
「一体、撃破!」
周囲を見ると、他のメンバーも次々とアイスウルフを倒していた。
紫苑は魔剣で一閃。
明日香は拳で粉砕。
冴子は双剣で瞬殺。
あっという間に、五体全てが倒された。
『経験値+500』
「みんな、強い……」
結衣は感心した。
解放戦線のメンバーは、皆、実戦経験が豊富なのだろう。
動きに無駄がない。
「先に進むわよ」
冴子を先頭に、一行は洞窟の奥へと進んだ。
ダンジョンの奥深く。
一行は、いくつもの戦闘を乗り越えてきた。
アイスゴーレム。
フロストドラゴン。
スノーエレメンタル。
強敵ばかりだったが、十五人の連携で全て撃破した。
結衣のレベルも、28に上がった。
そして――
ボス部屋に到着した。
「ここがラストね」
冴子が扉を開けた。
部屋の中は、巨大な氷の広間だった。
天井は高く、氷柱が無数に垂れ下がっている。
そして、中央に――
巨大な氷の玉座があった。
玉座に座っているのは――
人型の存在。
いや、人ではない。
全身が氷でできた、氷の女王。
『氷雪の女王――レベル35――HP:8000/8000』
「レベル35……!」
結衣は緊張した。
高レベルのボスだ。
「私が前衛を務めるわ。みんなは後方支援を」
冴子が指示を出した。
「了解」
全員が配置につく。
冴子が前に出た。
「さあ、始めましょうか」
冴子の体から、凄まじい魔力が溢れ出した。
これが、レベル45の力。
冴子が走り出した。
速い!
一瞬で、女王の目の前に到達した。
双剣を振るう。
女王が氷の剣を出現させ、受け止めた。
キィィィン!
金属音が響く。
「はあっ!」
冴子の連続攻撃。
双剣が閃く。
女王の体に、無数の傷が刻まれる。
『氷雪の女王:HP 7000/8000』
だが、女王も反撃してきた。
氷の槍を無数に生成し、冴子に放った。
「【影分身(シャドウクローン)】!」
冴子の姿が、五つに分裂した。
氷の槍は、全て分身に命中――
分身が消えた。
本体は無傷。
「今だ、攻撃!」
冴子の指示で、全員が魔法を放った。
ファイアボルト、サンダーボルト、ウィンドカッター――
無数の魔法が、女王に降り注ぐ。
『氷雪の女王:HP 5000/8000』
大ダメージ!
だが、女王は怒った。
「愚かな人間どもめ……我が怒りを知れ!」
女王が杖を振るった。
周囲の温度が、急激に下がった。
「まずい、全体攻撃だ!」
冴子が叫んだ。
「【絶対零度(アブソリュートゼロ)】!」
女王の魔法が発動した。
広間全体が、凍りついた。
結衣の体が――凍る。
「っ!」
動けない。
全身が氷に覆われた。
『HP:150/280――凍結状態』
「結衣!」
紫苑の叫び声が聞こえた。
だが、紫苑も凍っている。
全員が、氷漬けになった。
「ふふふ……これで終わりだ」
女王が笑った。
そして、氷の剣を振り上げた。
このままでは――
全員、殺される。
「させるか……!」
結衣は必死に魔力を集中させた。
呪いの指輪が、熱くなる。
「闇の力よ……氷を溶かせ……【暗黒の炎(ダークフレイム)】!」
結衣の体から、黒い炎が噴き出した。
氷が溶けていく。
結衣は動けるようになった。
「みんなを助けないと……!」
結衣は暗黒の炎を広げた。
炎が、全員の氷を溶かしていく。
「結衣……!」
紫苑が自由になった。
他のメンバーも、次々と解放されていく。
「ありがとう、結衣!」
冴子が笑った。
「さあ、反撃よ!」
全員が、女王に向かって攻撃を仕掛けた。
冴子の双剣。
紫苑の魔剣。
明日香の拳。
そして、結衣の魔法。
「【暗黒の炎(ダークフレイム)】!」
黒い炎が、女王を包み込んだ。
『氷雪の女王:HP 1000/8000』
「ぐああああああっ!」
女王が悲鳴を上げた。
そして――
冴子が最後の一撃を放った。
「【暗殺剣(アサシンブレード)】!」
冴子の剣が、女王の心臓を貫いた。
『氷雪の女王:HP 0/8000――撃破』
女王の体が――砕け散った。
氷の破片が、床に散らばる。
『ダンジョンクリア――経験値+2000』
『レベルアップ! レベル28→30』
「やった……!」
結衣は喜びの声を上げた。
レベル30に到達した。
大きな節目だ。
「みんな、お疲れ様」
冴子が全員を労った。
「特に、結衣。あなたのおかげで、全滅を免れたわ」
「いえ、私なんて……」
「謙遜しないで。あなたの魔法は、本当に強力よ」
冴子は結衣の肩を叩いた。
「これからも、頼りにしてるわ」
「はい!」
結衣は嬉しかった。
認められた。
必要とされた。
この感覚が、たまらなく嬉しい。
「さ、宝箱を開けましょう」
ボス部屋の奥に、宝箱が出現していた。
冴子が開けると――
中には、大量の金貨と、装備品、そしてスキルブックが入っていた。
「これは……」
冴子が一冊のスキルブックを取り出した。
『スキルブック:時間停止』
「時間停止……!?」
全員が驚いた。
時間を止める魔法。
伝説級のスキルだ。
「これ、誰が使う?」
冴子が聞いた。
「結衣が使うべきだ」
紫苑が言った。
「結衣が一番、魔法使いとして優秀だから」
「で、でも……」
「いいから。受け取って」
紫苑は結衣にスキルブックを押し付けた。
「……ありがとう」
結衣はスキルブックを使った。
『新スキル習得:時間停止 Lv.1――効果範囲:半径10m――持続時間:5秒――消費MP:全MP』
全MPを消費する、超高コストのスキル。
でも、その分、効果は絶大だろう。
「これで、私ももっと強くなれる……!」
結衣は決意を新たにした。
紫苑を守るために。
みんなを守るために。
もっと、もっと強くなる。
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