第3話 二十一世紀経済企画会議の裏側で:沖ノ鳥技官の記録
「では、本日の会議は以上となります。ありがとうございました」
そう司会担当の官僚が告げた。経済省 特例経済調整局 局長や商務経営省 大臣官房 経営産業調査室 室長が退出していく中、私含め動かない者が数十名ほどいる。
「さて、これで全員ですね」
超事調整委員会の
「なぜ、我々は残されたのか、説明してもらおうか、官僚どの」
彼は
「一旦、席を整理させていただきます。皆様、ご起立願います」
新たに整理された席に座る。ちゃんと自分の名字である
「
三大歴史企業、二大巨頭、六大企業グループ。つまり残ったのは、大手企業グループといった具合だ。
「こちらから、超事調整委員会、大幻洋庁、そして特別内部部局の特例経済調整局、経営産業調査室、超常公安局、特別設備局」
内閣府外局の超事調整委員会と大幻洋庁。そして経済省、商務経営省、内政省、運輸通信省の外局相当の権限を持つ特別内部部局だ。
「以上のメンバーで改めて会議を開催します。と、いっても、目を通して欲しい資料があるだけなのですが」
その一声で手元に資料が配られ始める。
*****
——超事調整委員会——
【エリアC開発プロジェクトについて】
皆さんご存知の通り、
ここで一つ、事前情報を。
新神奈川こと裏神奈川とは元々、旧アメリカに敗戦する以前、町田市や横須賀、横浜港から接続する軍事施設群でした。しかしあるとき、何らかの災害? が発生したことで神奈川県と同等の広さ・形状の異空間が生成され、それが現在の裏神奈川と呼ばれる地域です。海からの接続は大幻洋を介しています。そう、大幻洋に浮かぶ神奈川なのです。
エリアCとは、そこを開発する計画名でした。エリアA〜Dまで存在した計画でしたが、それぞれが違う経緯を持っていました。現在、それは関係ないので省略します。
問題は裏神奈川・エリアCの整形過程にあります。超事調整委員会の研究チームは、県の名称を由来とするのではないかという結論に至っています。神奈川。
問題のもう一つとして、なぜこの二地域なのか。それは現在も研究中です。そう研究中なのです。
皆様には、このことを深く記憶に刻んでプロジェクトに参加してほしいと思い、このような場を設けました。
本資料は部外秘のため、その場に置いていってください。
*****
資料を読む間、誰一人として声を発さなかった。私も含めて。これはどう解釈すべきか、皆頭の中で考えていたのだと思う。
特例経済調整局の国土開発の部署にいる官僚として私は何を考えるべきなのだろうか。
私は資料を何度か読み返した。この内容を、深く深く刻み込むように。
「皆様、もう資料の全てに目を通されましたね。こういうことです。質問はありますか? ……無さそうですね。では、皆様。これを踏まえた上で、ぜひ開発プロジェクトを遂行してください」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます