1章:対策班の仕事③



「……よし。終わった。」


真っ白になった相沢あいざわさんには触れずに報告を完成させる。

あれから30分も経つが、白いままだった。


「おっつかれーい!」

「お疲れ様です。只今、戻りました」


2人の女性が支部に帰ってきた。

席から立ち上がり2人の方へと向かう。


「お疲れ様です。藤宮さん、朝倉さん」

「……お疲れ様。東雲」

「あ、しのっちじゃーん! お疲れー!」



藤宮さんは嫌そうに挨拶しそそくさと自分のデスクへと向かい、朝倉さんは元気に両手で手を振ってくる。

彼女たちも同じ対策班のメンバーだ。

自分のデスクへとそそくさと向かったのは、藤宮ふじみや まこと

きりっとした目に、斜めに整えられた前髪。髪の毛先が鎖骨にかかるほどまで伸びており、目元の泣きぼくろが印象的な女性だ。

そして何より彼女は僕と同じ17歳だ。ユスティーツで働くのに年齢は関係ない。働く意思があり、テストに合格することが出来れば異能者でなくたって誰でも働ける。

彼女は異能者ではないが、わずか15歳でテストに合格した言わばエリートだ。僕は16歳だったので、彼女の方が1年先輩だ。

それが理由なのかは不明だが、何故か僕をライバル視しており、何かと比べたがる。

こちらとしては、同僚なので仲良くしたいのだが、中々難しい。

そして、もう一人。元気に両手で手を振ってくれたのは、朝倉あさくら 美音みおん

彼女は僕と同じ異能者だ。異能は重力操作で体に触れている物体の重力を自由自在に変えることができる。

見た目は可愛らしい女の子で、たれ目に特徴的なピンク色に染めた髪を左右の同じ位置で肩にかからないよようにまとめており、いわゆるツインテールに近い。明るく元気もよく誰とでも仲良くなれるほどフレンドリーであるが、少し気が短いので直ぐに犯人にキレてしまい、愛用の武器であるハンマーで叩き潰そうとするので、相棒である藤宮さんは苦労しているらしい。


「そちらはどうでしたか?」

「いやー。何もなくてチョー暇だったよー。まこっちも構ってくれないしさー」

「それは災難でしたね」

「でしょー? さっさと見つかれば、私のペコちゃん6号で叩き潰してあげたのにさ。残念だよー」

「……あはは……残念でしたね……」


朝倉さんは、手に持ったものを振り下ろすように何度も縦に振っている。

ちなみに朝倉が言っているペコちゃん6号は、彼女が愛用する武器のハンマーに付けられた名前だ。6号とつくのは、もちろん6代目だからだ。


「それで、しのっち達の方はどうだったのー? 指名手配されていた異能者は見つかったの?」

「はい。おかげさまで相沢さんと協力して捕まえることができました。今ちょうど報告書を書き終えたところです」

「えー! すごいじゃん! やるねー、しのっち!」


藤宮さんは、褒めながらこちらの背中をバシバシ叩く。

すると、先にデスクに戻っていた藤宮さんが勢いよく椅子から立ち上がった。


「え!? 東雲、指名手配犯を捕まえたの!?」

「え、はい」

「そんな……また負けたというの……」


藤宮さんは、頭を抱えてデスクに突っ伏す。

どうやら相当ショックだったようだ。こちらとしては、競争なんてしていなし、どちらが上かなんて関係ないと思っているのだが、彼女の中では違うらしい。


「あちゃ~……。まーた、まこっちが閉じこもっちゃったよー。しのっち何してんのさー」


朝倉さんは手で頭を押さえながら、こちらにもたれかかってくる。

別に悪いことはしていないのに、そう言われると何故か罪悪感に駆られる。


「いや、別に僕のせいでは……」

「なーにいってんのっ! しのっちが可愛くて優秀すぎるから、まこっちはあーなっちゃってんの! まこっちは、可愛さも能力も負けて、勝っているのはささやかなお胸だけ……。ショックを受けるに決まってるでしょ!」

「ちょっと! 朝倉先輩!」


朝倉さんの言葉を受け、藤宮さんは胸を押さえながらまた勢いよく立ち上がる。


「胸だけってなんですか! 胸だけって! 胸以外も東雲に勝ってますから! それにささやかってなんですか! ささやかって! ちゃんと年相応のボリュームはありますよ!」

「えーそうなのー? だって、私より小さいんだからささやかで間違っていないでしょー?」


朝倉さんは、ニヤニヤしながら自身の胸を寄せてアピールしている。

藤宮さんは、その様子を見てか顔を真っ赤にして、悔しそうに「ぐぬぬ……」と唸っている。

正直、居心地が悪くてしょうがない。下手にフォローをしても、こちらに被害があるだけだし、一応話題の中心でもあるので無視もできない。

どうしたものかと考えていると、朝倉さんがこちらの腕に絡んでくる。もちろん胸をガッツリと押し付けくる。


「しのっちもそう思うでしょ? ほら~こんなにも柔らかいんだよ~」

「あ、朝倉さん!? 当たってますって!」

「当ててんだから、当たり前でしょ~? ほらほら~」


朝倉さんはされに腕をギュッと抱く。胸が余計に押し付けられる。

これ以上はまずい。男子である以上、否が応でも大切な部分が反応してしまう。

何とか腕をほどこうとするが、離れてくれない。


「朝倉さん!? これ以上はまずいですって!」

「え~、何がまずいの~? ほら、お姉さんに教えてごらんって!」

「あさ……」

「いい加減にしてください!!」


肩を震わせていた藤宮さんが、物凄い形相で睨んでくる。


「朝倉先輩。それ以上はやるなら、覚悟してくださいね……」

「覚悟って~。ただしのっちと腕をくんでいるだけだよ~? 別に何も悪いことはしていないしー」


朝倉さんはとぼけるように人差し指を顎に当てる。


「……そうですか。わかりました。では、橘副隊長に前回の器物破損の件を報告させていただきますね」

「なっ!?」

「……器物破損? ……もしかして朝倉さん。また何か壊したんですか……?」

「えっ! ち、違うよ? 何も壊してないよ! しのっちもまこっちの嘘を信じるなんておバカなんだから~」

「は、はあ……」

「ほら! まこっちも適当なこと言わないの!」

「……そうですね。何も証拠が無ければ噓になってしまいますね……」


藤宮さんはそう言うと、ポケットからスマホを取り出し、操作し始める。

何をしているのだろかと疑問に思っていると、僕と朝倉さんのスマホが鳴る。

通知を見ると、正面にいる藤宮さんからであった。中身を確認するとどうやら写真が何枚か送られてきたようだった。

それぞれの写真には、建物などが写されており、どれもこれも壊れていた。

朝倉さんは送られてきた写真を見て、酷く動揺していた。


「ま、まこっち!? こんなのいつ撮ったの!?」

「いつって、朝倉さんが容疑者を追っかける際にハンマーを振り回していた時ですよ?」

「あ、あん時は容疑者確保の為に必要なことだからって、全部容疑者のせいにして、もみ消してくれるって言ったじゃん!」

「(また、もみ消そうとしたんですね……)」


彼女は少し気が短いので、直ぐに愛用のハンマーであるペコちゃん6号を振り回す。もちろん、あんな物を振り回そうとするものなら、周囲にも被害がでるのは当然のこと。その為、彼女が関わると建物や物などに被害がよくでてしまう。もちろん、容疑者を追っているからといって許されるわけはなく、いつも橘副隊長と西園寺さんに𠮟られている。(橘副隊長からは公共の物を壊すなと。西園寺さんからは修繕費がかかるので控えてほしいと。)だから、彼女は何かを壊すと、なんとかもみ消そうとすることがある。


「そうですね。あの時は私が足を引っ張ってしまいましたし、危うくの怪我するところを助けてもらったりもしたので、今回だけはと思い協力しようとしましたよ」

「ほら!」

「……でも、やっぱり隠蔽は良くないですよね? 秩序を守るものとして私たちが守られなけれいけません」

「で、でも! そんなことをすれば、まこっちだって……」

「ええ、私も同罪ですし、足を引っ張ってしまったことも露呈します。でも……隠し事をして生きていく位なら、正直に話して怒られた方がマシです」

「そ、そんな……」


藤宮さんは、まるで聖母のような笑みを浮かべながら、足りない胸に手をあてて懺悔する。一方、朝倉さんは真っ白になり膝から崩れ落ち地面に座り込んでいる。

短時間に真っ白になった人物が2人にもなった。


「あはは……。朝倉さん、ご愁傷様です……」

「ふん! そのまま放っておいてあげてください。それと、東雲も私の胸はささやかじゃないわよね? ちゃんと年相応よね?」

「っ!? は、はい! ちゃんと年相応で綺麗だと思います! 」

「そうよね。ありがと。これからも正直に生きなさい。長生きしたいならね」


そう言うと、藤宮さんは再び椅子に座り、ノートPCを開いて業務に戻っていった。

取り残された僕は、真っ白になった相沢さんと朝倉さんを見て、手を合わせる。


「(きっと良いことがありますから、頑張ってください)」


そう唱え、自分のデスクに戻った。























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