1章:対策班の仕事①
今から150年前。世界は変わった。
突如として、地球に飛来した小惑星『デイモス』。
ギリシャ神話に登場する恐怖の神の名を与えられた隕石は、地球を滅ぼすとされ世界は大混乱に陥った。
しかし、地球に落ちることはなかった。
落下する直前に小惑星は砕け散り、光だけが世界へと散らばった。
地球の危機は回避されたかと世界各国は安心したのも束の間、世界各地に異能を持った人達が突如として現れ始めた。
最初は混乱していた各国も幾度となく、調査と話し合いを重ね、争いまで起きてしまったが異能者との共存に踏み切った。
そして、世界各国は異能者を共同で管理する組織『ユスティーツ』を創設した。
これが、かの有名な『デイモス事変』と『ユスティーツ』創設のお話である。
◇◇
あれから150年。
ユスティーツが異能者を管理し、平和な日常が日々過ぎる中、ユスティーツに在籍する少年ーーー
「こらっ! 待て!」
「うるせぇ! 待てって言われて待つ奴がいるかよ」
雑踏をかき分けながら追跡を続けて5分以上が経っているが、未だ犯人を確保できていなかった。追っても中々距離が縮まらないので、いらだってくる。
「(くそっ……!。探知の異能しか使えないのに犯人を追跡なんて僕の仕事じゃないだろ)」
彼は異能者であったが、探知系の異能であり、肉体は一般人と変わらない。
しかし、追われている犯人は肉体強化で脚力を強化しており、捕まえれる気がしない。逆に言えば、よく振り切られずに追っている方だ。
「(
今この場にいない同僚のことを思う。
いつも「
初めて霧島先輩に感謝したいと思う。
しかし、それでもそろそろ限界である。異能者相手に追いかけっこもこれ以上は続けてられない。
「(
容疑者を追う際に「俺は先回りをするから!そのまま追え!」と言って別の方向に消えていった同僚に文句を言う。
あれから姿を見せる気配がなく、逃げたんじゃないかと思えてくる。
彼のことだから、ちゃんと先回りしてくれているとは思うが、疲労でネガティブに考えてしまう。
「ハァ……ハァ……どけっ!」
「うわっ!」「きゃっ!」
同僚に文句を言っている間にも容疑者は歩行者にぶつかり、弾き飛ばしながら逃げる。
「クソっ!ハァ……ハァ……皆さん……き、危険ですから……ハァ……離れてください……! 」
息も絶え絶えに周囲に注意するが、犯人が前を走っている以上、意味をなしていなかった。
追えども追えども距離は縮まらない。それどころか、段々と距離が離れている。
もう体力も限界に近い。
「(くそ……ここまでか……)」
ダメかと思って足が止まりそうになる。
すると、前方で突如閃光が走った。
「さ!止まりな!」
「ぐあっ!?」
「相沢さん!?」
光が起きた方向では犯人が転倒しており、上から文句を言っていた同僚が押さえつけていた。
ぜぇぜぇと息を吐きながら膝に手をあてて、頑張って息を整える。
ようやく現れた同僚は笑顔で、こちらに親指を立てる。
「亜希! よくやった! 霧島のゴリラの訓練も役に立ったな!」
「ハァ……ハァ……ハァ……えぇ……ほんと感謝ですね……」
「さぁ、もう観念しなよ? これ以上、暴れるなら今以上に痺れることになるからな……って言ってももう聞こえないか」
追われていた男は同僚の下で気絶していた。
◇◇
「どうぞ。気絶しちゃってますが、引き渡しますね」
「ありがとうございます。ご協力感謝します!」
引き取りに来た警察に男を引き渡す。
男は気絶したままパトカーで運ばれて行った。
「いや~、ナイスコンビネーションだったな!」
彼、
髪を金髪に染めており、女性にだらしない一面もあるので遊び人と思われがちだが、意外としっかりとしており責任感も強い。容姿もそこそこいいので、女性にモテるらしい。しかし、女にだらしないこともあり、付き合っても直ぐに別れることが多いとのこと。
「亜希もそう思うだろ?」
まったく調子のいい人だ。
こっちがどれだけ頑張って追っていたのか分かっているのにナイスコンビネーションだなんて、良く言えたものだ。
「……何がナイスコンビネーションですか!? こっちは大変だったんですよ! 勝手に二手に別れるし……僕はあくまで容疑者を見つけるだけのはずですよ! 追うのは相沢さんの役目でしょ!?」
「こわっ! そう起こるなって! 可愛い顔が台無しだぞ。ほら、美人は笑顔が一番似合うんだからさ!」
「(……コイツ……!)」
「ほ~ら、笑顔!」
彼は両手こちらの顔を触り無理やり笑顔を作らせようとする。
流石に我慢の限界だ。
右足を思いっきり前へと蹴りとばす。
もちろん相手の下半身の大事な場所へと。
「うっ……!? あ……き……そ、それはアカンやつ……だ」
遺言を言い残し、大事な場所を押させながら前のめりに倒れた。
「さっきの追跡の件はいいですが、女の子扱いするのは許せませんね。僕はれっきとした男ですから」
うずくまる彼を放置し、車へと戻り、スマホを取り出す。
追跡した容疑者を捕まえたので、報告をするためだ。
スマホを操作し、目的の人物に連絡する。
何回かコールした後、繋がった。
「もしもし。こちら東雲です。無事、容疑者を捕まえました。既に警察に引き渡してますので、これから相沢さんと戻ります」
「了解しました。……お疲れさま、亜希くん。美味しいコーヒーを淹れてまってるからね」
「了解です。西園寺さん」
大人びた声の主に報告を終え、スマホをしまう。
すると、痛みから復帰した相沢さんがゆっくりと歩きながら車に乗り込んでくる。
「大丈夫ですか? ひ弱な男の蹴りで大袈裟ですよ。まったく……」
「ひ弱なんて関係ないだろ! ここを蹴られたら男は皆、卒倒するんだよ! お前だってわかるだろ!?」
「さぁ? 私は女の子なんでしょ? だからわかりませんよっと。さぁ帰りますよ」
「都合のいい時だけ利用しやがって……ちくしょう……」
相沢さんは涙目のまま、車のエンジンをかけ、署へと走らせた。
帰りの車の中では、彼はずっと内股だったのは見て見ぬふりをした。
だって自業自得だし。
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