いずれあなたの前に敵として現れるでしょう
まれいぐま
第1幕 こうして物語の幕は上がった。
プロローグ
「ハァ……ハァ……」
1人の男が街中を走っている。
「ハァ……ハァ……くそ……」
運動の為に走っているわけではない。
「ハァ……どけっ……!」
「きゃ!?」
人をかき分けながら、逃げていた。
「(くそ、なんで俺がこんな目にあわなきゃいけないんだ……!)」
彼は必至に何かから逃げ回っている。
しかし、後ろを振り返っても追ってくる人物はいない。
でもわかる。間違いないなく追われ続けていると。
「(なんで見えないのに追われていると思ってしまうんだ!?)
彼は理解が出来なかった。
ずっと見えないものに追われている。
いや、追われていると感じている。
その恐怖が消えない。
気のせいだと思いたいがそう思えない。
「くそ……!」
通りを逸れ、路地裏の方へと向かう。
「(このまま逃げても埒が明かない……。だったら迎え撃つしかない!)」
どんどん奥へと進み、人気のない場所まで来た。
「おい! 姿を見せろ! 追いかけっこは終いだ!」
逃げてきた方向へと叫ぶ。
しかし、誰も現れることはない。
でも、わかるあれはそこにいる。
「……くそっ!……さっさと出てこい!」
もう一度、叫ぶ。
もう相手を呼んでいるのではなく、自身の恐怖を誤魔化すのが目的になっていた。
本能でわかる。気を緩めればやられることが。
「……っ!?」
突然、胸に違和感を覚える。
咄嗟に胸を押さえるがどんどん違和感が増すばかり。
「(なんだ、この感覚は……?)」
男は恐る恐る視線を下げ、手で押さえている胸を見る。
しかし何もない。
「気のせいか……くっ!?」
すると違和感が突然に痛みへと変わり立っていられなくなる。
男は痛みに苦しみながら、その場へとうずくまってしまう。
「(なんだ……なんなんだ、これは!?)」
痛みに苦しんでいると、前のほうから足音が聞こえてきた。
その音はどんどん近づいてくる。
そして、男の目の前で止まった。
今、顔をあげれば誰であるか確認できる。
しかし、痛みで顔を上げることができない。
だが、男にはわかる。今、目の前にいる人物こそが自分を追ってきた奴であると。
「お……お前は……な、なんなんだ……なんで俺を付け回すんだ……」
男は苦しみながらも必死に問いかける。
すると返事があった。
「僕ですか? そうですね……只の善良な市民です」
「ぜ、善良な市民だと……」
意味が分からない。
善良な市民? そんな奴この世に存在なんてしない。
人間なんて欲にまみれたゴミばかりだ。
だから殺して回っていたんだから。
「ふ、ふざけるな……俺を誰だと思っているんだ。俺は……俺は……」
そうだ。俺はこんなところで野垂れ死ぬ人間ではない。
これから人の上に立つ人間だ。
だから、何をやっても許されてきたんだ。
今回だって……
「あなたのことは十分に知っていますから、言わなくていいですよ?」
「ぐっ……なら……なんで……」
「なんで、ですか……それはあなたが一番わかっているのではないですか? だってあなたは……」
この世に不要な悪人なんですから。
男にはそう聞こえた気がするが、もう確認することはできなかった。
薄れゆく意識の中で、必死に手を伸ばして後悔する。
「(ちくしょう……ちくしょう……なんで俺がこんな目に……)」
そこで男の意識は途絶えた。そして二度と覚めることはなかった。
◇◇
目の前でうずくまる男の首元に手をあて、死んだことを確認する。
「まったく・・・・・・・自分のしたことすら理解していないなんて、ほんと救いようのない人だ」
多少なりとも罪悪感があればと思ったが、やはり罪悪感なんて持ち合わせていなかった。
「まぁ終わったことだし、どうでもいいか」
すべてが片付いたのでスマホを取り出し、とある人物に連絡する。
「あ、もしもし?片付きました。……うん。……うん、大丈夫。どこも怪我はしてないから安心してください。……ええ。わかってますよ。自分で選んだ道ですから、後悔なんてしていませんよ。 ……うん、そうですね。 その時は……喜んで世界の敵になりますよ」
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