第2話 トゥルーエンド?

 さて、大変だ。


 なにがって?

 ずっと悠真の横顔を見ていたら、首を左に向けたまま固まってしまったのだ。


 痛い。すごく痛い。

 でも、目線をはずすのはもっとつらい。恋って残酷。


 まぁ、いいだろう。

 僕の首のことなんてどうでもいい。今は悠真だ。


 ふと、テレビ台の隅に置かれたデジタル時計に目が留まる。

 チカチカと点滅していた無機質な液晶の数字が、音もなく『23:59』から『0:00』へと切り替わった。


 日付が変わった。12月25日。


 メリークリスマス。


 世間が寝静まり、恋人たちが愛を囁き合う時間だ。


 悠真のゲームも、いよいよクライマックス。

 最後のCGを回収するための周回。

 これで全ルートのシーン回収も完了だ。


 おつかれ、悠真。かっこよかったぞ。


「おおお! これ、全コンプじゃない? トゥルーエンドでしょ!」


 座布団の上で軽く跳ねるくらい喜んでいる。

 ふふふ。こんなにうれしそうな顔が見られるなんて。なんて幸せなんだ。


「結局、この悪役令嬢ってさ。このぶっ飛んだ世界では悪役だったけど、現実世界だったらめっちゃいい子じゃない? 正直、ヒロインよりこの子の方が圧倒的に好きだったな」


 まてまてまて、何かを間違えた!

 なぜまともな女キャラが残っている……!


 そうか!

 ヒロインをぶっ飛んだ性格にして、悠真を女性不信にする。

 悪役令嬢はその対比役。対極の性格に……。


 ……つまり、逆。

 あれ? 悪役令嬢って、めっちゃいい子になるじゃん。

 僕、何してんの。


 この鳳城隼人……不覚……!


「そ、そうかな? 僕には、女なんて結局ろくなもんじゃないって印象だったけど?」


 とりあえず方向性だけは死守しておく。


「まぁ、このゲームの女キャラは性格が大体やばかったけど……この子だけは、なんか嫌いになれなかったな。できれば救済ルートがあってほしかったなぁ」


 っく。悠真はこんなところでも優しいのか! 素敵だ……。

 だがダメなんだ、悪役令嬢も女なんだよ!


 そうこうしているうちに、ゲームの最後のシーンが始まった。


 王子『君との婚約を破棄する!!』


 悪役令嬢に婚約破棄を宣言する王子。


 国王様『こんな女は国外追放とする!!』


 テンプレだが、これで最後のルートも終わりだな――と、思ったその時。


 ――ザザザッ。


 ん? ノイズ?


 王子『父上。国外など生ぬるい。異世界追放にしましょう』


 ん? そんなセリフ、入れてないんだけど?


 国王様『確かに。エレオノーラ・ヴァン=グラディス。お前を異世界追放とする!!』


 ???


 なんだなんだ?


 おい、部屋が、まぶしい!!





――――――――――――――――


お読みいただきありがとうございます、久澄くずみゆうです。


隼人の計画、早くも崩壊の危機です。

というか、ここからが本当の「崩壊(物理)」です。


少しでも楽しんでいただけたら、ぜひ【★評価】やブックマークで応援していただけると嬉しいです!

次回、「想定外の来訪者」。 お楽しみに!

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