Ⅱ. 後編

 そこには、スカイブルーのネグリジェ風のひざ丈ワンピースを身に纏った色白の女性が、やや大きな紙袋を両手に持ち立っていた。

 彼女の傍らには、ベビーピンクの頭頂部にはまるでユニコーンのような大きな角が生えた、彼女とあまり変わらない程の身長のイルカのような生き物が、ここは陸だというのにまるで水中に居るかのように空気中を浮遊している。


 ジェーンは薄暗い店内を通り抜け、正面の引き戸を開く。


「ごめんください、今日はお休みでしたか?」

「やあエマ、暇だからちょっと休憩してただけさ。それより何の用だい?」


 ジェーンは女性改めエマに用件を尋ねる。


「新作ができたのでお持ちしました。それから……」


 そう言って、エマは自身の手に持った紙袋を差し出し、右側へと視線を移す。


「この子はコーラルといって私のペットなんです」

「おや、はじめまして。そんなことよりここで話すのもなんだから二人ともお入り」

「おじゃまします」


 そう言って、ジェーンは二人と一匹を奇抜で不思議な商品が大量に陳列された店内へと招き入れ、奥にあるテーブル席へと案内する。

 この店を何度も訪れたことのあるエマとは裏腹に、コーラルは初めて見る光景に辺りをきょろきょろと見回した。


「荷物はその椅子に置いて。適当に座って待っていておくれ」


 そう言ってジェーンは店の奥へと入って行った。

 彼女らは丸い木製のテーブルを取り囲むように置かれた四脚の椅子のうち二脚へ荷物を置き、空いている二脚の椅子に腰掛ける。

 

 暫くすると、ジェーンが二脚のカップを乗せたトレーを両手で抱え戻ってきた。


「これはさっき作った特製のお茶だよ。よかったら味見しておくれ」


 ジェーンがローズピンクの液体が入ったカップをテーブルに置く。


「ジェーンさんの開発される商品はいつもユニークで面白いですね! いただきます」


 そう言ってエマはカップを手に取りお茶を一口飲んでみた。すると、甘い香りと共に何ともいえない味が口いっぱいに広がる。

 隣ではコーラルがひれのような右手で器用にカップを持ち、お茶を飲む。


「キミ、すごいね!」


 それを見たダリアが感心し、エマは自身の顔に少し垂れかかっていたブロンドのロングヘアを左手で払い微笑む。


「ところで、今日は何を持って来てくれたんだい?」

「その大きな袋は、大型のテラリウムです。」


 エマはそう言って紙袋の中身を取り出し、緩衝材のような梱包を剥がす。

 それは、大きなガラス製の、透き通ったスカイブルーの丸い水槽だった。底には白い砂の上から貝殻が散りばめられ、傍らにはミニチュアのヨットや、反対側にはパラソルとアウトドアタイプのロッキングチェアが置かれている。


「神秘的だねぇ…… きっとお客さんも喜ぶよ」


 ジェーンは感嘆を漏らす。

 そしてエマは残りの紙袋から様々な大きさの白い紙箱を取り出し、テーブルの上に置いた。


「他はいつも通りのものです」


 エマがその中の一つである小さな箱を開ける。

 それは淡いブルーの光を放つ、ハート型のシーグラスによく似た、けれども少し違うようにも見える装飾がトップに施されたペンダントだった。


「きれいだねそれ」


 ダリアがそう言ってペンダントトップに触れる。すると次の瞬間、そこから発せられたまばゆい光が店内を包み込んだ。

 

 そして空間がマリンブルーに染まり、まるで水中のような模様が浮かび上がる。それを見たコーラルが自身の手前に泳いできた立体的に見える魚を追いかけようとした。

 それを見たエマは、自身が生まれ育ち長年暮らした海を懐かしく思うのであった。

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