第6話:ランクとスキル

 『ホームのランクアップ条件を達成しました。』

 

 あの声が聞こえてきたが、ランクアップ条件?ランクとは何?

 また分からない事が増えてしまったが、それよりも今は外の様子が気になる。

 そーっとドアを開け、外を確認してみる。

 するとそこには追いかけてきていたゴブリンがナイフと共に倒れていた。


 パッと見では外傷は見られない。血も出ていないし、気絶しているのか?

 慎重に近づき、ナイフを蹴り飛ばす。これでナイフで刺される心配はなくなった。

 蹴り飛ばしたナイフを拾い、再度ゴブリンへ近づく。気絶していた場合は、ここで殺しておかないとまた追いかけられて危険だ。危険因子は早急に対処すべきだ。それが激務でもしっかり仕事をこなす中で身につけた能力。小さな問題を放置していると後々で大きな問題となって現れてくる事が多々あった。その苦い経験からいつの間にか排除できるリスクは排除する癖がついていた。


 近づいてもゴブリンは倒れたままで動かない。ここでやらないとやられる。その思いで倒れたままのゴブリンの首にナイフを刺す。

 すると、刺した所から緑色の液体が溢れ出てくる。ゴブリンの血は緑色なのだろうか。念には念を入れて首だけで3箇所、その他に頭部3箇所、心臓があるであろう箇所周辺を4箇所、手足それぞれに1箇所ずつ刺した。

 ここまで念入りに刺せばさすがに死んでいるだろう。

 そう思った時、

 

 『レベルが1に上がりました。スキルポイントを3獲得しました。』


 あの声が再び聞こえてきた。レベルアップ?スキルポイント?本当にゲームの世界みたいだな。

 謎の声、ワープ、ゴブリン、レベルアップ、スキルポイントとここまで来れば、さすがにここが元々の世界とは異なる事は明白だろう。一体どうしてこんな世界にいるのだろうか。それは考えても分からない。今の状況を冷静に把握して、今後どうすればいいかを考えるしか無いのだ。




 現状、確認・対処しないといけない事は以下の4つ。

 ①ホームのランクアップとは何か。どうすればいいのか。

 ②レベルアップとスキルポイントとは何か。どうすればいいのか。

 ③この倒したゴブリンをどうしようか。

 ④食べ物はどうしようか。


 時間もまだ昼前だ、とりあえず①から順番に取り掛かろう。

 そこでホームに戻る時と同様にホームのランクアップについて念じてみる事にした。

 ”ホームのランクアップとは何なのか。どうしてランクアップできるようになったのか”


 すると、

 『ホームのランクアップとは、ホームの大きさを変えたり、能力・機能の追加を行ったりする事です。ランクアップができるようになったのは、特定の条件を満たしたためです。現在満たしている条件は、モンスターをホームの能力で無力化する事、です。』

 とあの声が聞こえてきた。


 念じれば会話できるのかな。そう思うほどに的確に念じた質問に対する回答が返ってきた。

 回答を聞く限り、ランクアップは良い事のように思う。とりあえずランクアップしておくべきかな。ゲームでもガンガンレベルアップして、スキルをとっていくタイプだった。後々でスキルポイントが足りなくなって苦労する事もあったけど、それはそれで楽しかった。


 “よし、じゃあホームのランクアップをしてくれ”

 迷う事なく、ランクアップを選択した。

 

 『ランクアップをしてよろしいですか。』


 今回もタッチするのね、念じるだけで進めてもいいんだが。

 こういうシステムなのは仕方ないか。頭を切り替えて、視界の右端にあるYesをタッチする。


 『ホームのランクアップを行いました。

  ホームのランクが1になりました。

  ホームが小屋からワンルームになりました。

  ホームにライトが設置されました。

  ホームに電気が供給されました。

  ホームに水が供給されました。

  スキルポイントを使って、スキル追加を行えるようになりました。』


 長々と聞こえてきたあの声。ふと振り返ると、小屋が一回り大きくなっていた。

 声の通りだとすると、小屋がワンルームに変わったという事か。ベッド2台分の広さがワンルームになったのだから、数倍の広さになったという事なのだろうか。もう驚かなくなってきた。うん、慣れって怖いわ。

 とりあえず小屋だったものの周りを1周してみる。思った通り、数倍になっている。

 そしてドアを開けて建物の中に入ってみる。中も思った通り、ワンルームになっている。だいたい6畳くらいだろうか。大学生の頃に住んでいたアパートを思い出すな。

 まずは設置されたライトだ。声の通り、部屋の中央には昔ながらの蛍光灯と思わしきライトが設置されていた。壁をよく見るとスイッチらしきものもある。早速スイッチを押してみると、思った通りに明かりが付いた。これで夜も明るいわけか。電気が通っているという事は他にも何かできるのかな。

 そう思い、声の最後の言葉を思い出す。

 “スキル追加を行えるようになりました”

 スキル追加で一体何ができるのだろうか。そう思うと、


 『現在行えるスキル追加は以下の通りです。』


 再び聞こえてきたあの声。やはりどこかで聞いた事のある声だ。思い出せないけど、どこか懐かしい。

 声の後、視界の右側にずらっと文字が浮かんできた。


+++++++++

 所有スキルポイント 3/3

 取得可能スキル

 ・3点式ユニットバス 0/3

 ・小型キッチン 0/2

 ・電気温水器 0/1

 ・洗濯機 0/1

 ・冷蔵庫 0/1

 ・電子レンジ 0/1

 ・電気ケトル 0/1

 ・エアコン 0/1

 ・家庭菜園 0/99(1ポイントごとに効果発動)

 ・迎撃機能 0/99(1ポイントごとに効果発動)

+++++++++

 

 どこかの家電量販店かな?と思うようなラインナップである。途中までは。

 最後の2つが謎である。家庭菜園?確かに家に関係あるけど自分で作るものではないのか?ポイントで作るものなのか?

 そして迎撃機能。これは更に謎だ。まず内容が曖昧すぎる。具体的に何が起きるのかが全く想像できない。このスキルポイントというものを使っても、それにふさわしいリターンがあるのだろうか。無難にユニットバスを獲得して、トイレや水を出せる設備を手に入れる方がいいのではないか。

 しかし、先ほどのゴブリンを見てしまった。この森にはあのような異形のモンスターが他にもいるのではないか。安全確保が最優先なのではないか。どのような効果があるか分からないが、これに賭けるしか無い。その思いが、リターンの不確実性を上回ってしまったのだ。


 “3ポイントを迎撃機能に割り振りたい”

 そう念じると、

 『スキルポイントを用いて、迎撃機能 0→3 とします。よろしいですか。』

 再びあの声が聞こえてきた。だいたいこの能力の使い方が分かってきた気がする。

 視界の右端にあるYesにタッチする。

 『迎撃機能 0→3 となりました。』


 …パッと見、何も変わらない。

 迎撃機能というのだから、部屋の中ではなく、外に影響するものであろう。ドアを開けて外の様子を見てみると、そこには建物を囲うように木の柵ができていた。



----------------------------------------------------

ランク:1

レベル:1

取得スキル:迎撃機能3

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