第5話:邂逅

 仕事が激務だったため、土日は体力回復で終わる事が多かった。

 その中でも、少しだけだがゲームはやっていた。有名シリーズは一通り買って積みゲーになっているが。

 そのゲームの中でも頻繁に出てくる前半のザコモンスターで、ひたすら通常攻撃をするだけで必ず勝てるモンスター。それがゴブリンに対する認識である。


 それが目の前にいる。

 ザコモンスター?何言ってるの!?メッチャ怖いじゃん!!顔怖いし、不気味だし、ナイフみたいなの持ってるし!大きさは1.5mくらいで小さいけど、纏っているオーラが怖いんだよ!

 内心ビクビクしていると、そのゴブリンと目が合った。


 ヤバい!訳が分からないけど、とにかくホームに戻ろう、危険だ!

 その一心で、ホームに戻りたい、と念じた。

 

 『現在はホームに戻れません』


 はい?え、戻れないの?なんで?どうして?何故?何故?何故?

 もうパニックである。

 そして、こちらに気づいたゴブリンがナイフを持ちながら、こちらに走ってきた。


 悪い事は重なるものである。


 とにかく逃げよう!ホームに戻ろう!あそこ以外に見を守れそうな所はない!

 一心不乱に走り出した。

 が、適当に走り出してしまった。この広大な森の中からホームに走って到達するとか無理だ。山手線の内側のどこかに置いてある自転車を探すようなものだ。

 でもゴブリンから逃げなければ!殺される!ホームはどこだ!

 

 その思いに応えたのか、ワープの際に出たYes・Noのように視界の端に別の表示が現れた。

 これは矢印?左斜め前を指している。そしてその下に数値が書いてある。数値は“800m”とある。

 もしかして、ホームの方向と距離か?念じてホームに戻れるなら、それの劣化機能として、方向と距離が分かってもおかしくはない。いや、そういう機能なはずだ。


 目の前に現れた一筋の光明に賭けて、矢印の方向へと走り出した。

 後ろからはゴブリンが追いかけてくる。走るスピードとしてはこちらの方が早い。身長差が有利に働いているのかな。

 とはいえ、ずっと走り続けられない。追いつかれたら死ぬ。そのプレッシャーは半端ない。800mなら5分も掛からないはず。なのに何十分も走っているのではないか。そう感じてしまう。その影響で体力の消耗も半端ない。

 逃げ切れるか。死にたくない死にたくない。

 その思いだけで走り続けた。


 そして数値が20mを切った所で、小屋のある開けた空間が見えた。

 あの矢印と数値は思った通りだった。そして後ろから追いかけてくるゴブリンとの距離もまだ余裕がある。

 小屋まで辿り着き、急いでドアを開けて中へ入る。ドアを閉めた時、追いかけてきたゴブリンは小屋まで残り10mという所だった。あと3秒遅かったら危なかった。ギリギリだったな。。。

 そしてドアを閉めて、ドアが開けられないように体でドアを押さえる。

 数秒後・・・何も起こらなかった。あのゴブリンだ、ドアを開けようとしたり、小屋にぶつかったり、小屋に殴りかかったりするだろう。なのに音一つしない。

 意外と知性があって、外から様子見をしているのか?いや、だとしたら尚更ドアを開けようとするはずだ。

 とりあえず少し時間が経ってから外の様子を見てみよう。


 そう思った時、あの声が聞こえてきた。


 『ホームのランクアップ条件を達成しました。』

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