第4話:再度森へ

 光が弱くなったように感じたため、ゆっくりと目を開ける。

 前回とは異なり、今回は焦点が合わない事も無かった。というか立っている状態だった。


 場所は、、、あの小屋だった。

 一瞬で戻ってきたよ、あの声の通りになったよ、どういう原理だよ?ワープ?

 ワープとか現実で起きるわけがないよな。え、え、どういう事??


 ・・・


 深呼吸して落ち着いてから、今起こった事について考える。

 “ホームに戻りますか?”

 その声に対してYesを選んだ結果として、この小屋に戻ってきた。つまり、この小屋がホームという事だと思う。そして、あの声によって実際にホームに戻ってくる事ができた。まるでVRゲームだ。


 今の出来事をまとめるとそうなる。

 現実ではありえない出来事だ。ゲームの中にでも入ったのか?河川敷から先の記憶が無いだけで、いつの間にか家帰ってゲーム買ってプレイしている、という事なら理屈は合う。けれど、ビールも飲まずに記憶を無くして、ゲーム買って、なんて無理に決まっている。帰宅途中にゲーム売っている所なんて無いしな。


 うーん。お腹空いたし、ビール飲んでおつまみ食べて、寝て朝になってから森を抜けよう。朝から動けば今日とは別方向に進めるだろうし、そっちには道があるかもしれないしな。不安な気持ちを抱えつつ、疲れからすぐに眠りについた。


 『…初日は慣れなくて疲れたでしょう。ゆっくりするのよ…』


◇◇◇


 目を覚ましたが、やっぱりあの茶色の天井が目に映った。起きたら元通り、なんて事起こらないよな、そりゃ。

 昨日のおつまみの残りを食べて、早速小屋を出る。相変わらず木だらけだ。


 朝から小屋を出る。昨日は時間的に昼過ぎから出たから南西の方に行ったはずだ。そして今日は朝からだから東に進む。とにかく進んでみる。

 何かあれば小屋に戻れるはず。念のため、森に入るギリギリで、ホームに戻りたい、と念じてみる。


 『ホームに戻りますか?』


 再びあの声が聞こえた。よし、念じれば戻れそうだ。これがあれば一安心。

 とはいえ、もう食べ物がない。どうにかして食べ物を確保しなければ立ち行かなくなる。

 安心感と危機感がごちゃまぜになったまま、再び森の中へと足を踏み入れる。



 歩き始めて数分、小さな川を見つけた。幅は1mもない。ただ、これで水の確保はできた。ビールとカバンに入っていたペットボトルのお茶以外飲み物が無かったため、正直キツかった。満足するまで飲んでから、ペットボトルに水を入れる。


 更に歩くこと数分。

 視界に入ってきたのは、森の中には不自然に土がむき出しな場所。他は草が生えているが、ここだけは生えていない。昨日、数時間歩いてもそんな所は見なかった。直径1.5mあるかどうか、という小さい範囲だが、何か違和感を覚える。

 嫌な予感がするが、進まないわけにはいかない。この小屋に留まっても、食べ物が無いのだ。

 意を決して再度足を進める。


 その時、視界の左端に何か動くものが見えた。

 この森に来て初めて見る生き物。人かもしれないし、とにかく近づいてみよう。

 戻る手掛かりになるかもしれない。そんな思いから、思わず走り出してしまった。


 確かこの辺りのはず。

 周りを探してみると、木の裏からガサっと音が。誰かいる。


 慎重に木の裏を覗いてみる。

 そこにいたのは、ゲームでよく見る緑色の生物。


 そう、まさしくゴブリンというやつだ。

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