第九話
たくさんの生徒たちの流れに僕たちは身を任せる。この生徒たちも玄関出口に向かっているのだろう…たぶん。いや、だってしょうがないだろう?
教室を出たらたくさんの生徒が同じ方向に歩いてたんだもん。そしたら当然玄関出口に向かってると思うでしょ?今さら違うと思っても抜け出せないしさ。
しかし…すごく注目を集めている気がする(本日四回目)。でもこれは僕だけのせいじゃないと思うんだ。たしかに僕の容姿は整っている(極度のナルシスト)。でも詩織ちゃんの容姿もすごく整ってる。
つまりこれの原因の半分は詩織ちゃんということだ。まぁ責任の半分が詩織ちゃんにあるからなんだっていう話なんだけど。えっ?お前がこの話を始めたんだろって?すみません。
っと、ようやく着いたね(唐突な論点ずらし)。どこに着いたのか?まぁ分かるよね。玄関出口である。とりあえず父様たちを探そう。キョロキョロと周りを見渡すと、子どもの一人がこちらの方へと駆けてきた。
その子どもは正面を見ずに走っており、その進路上には詩織ちゃんが立っていた。詩織ちゃんも突進してきている子どもには気づいておらず、このままいけばぶつかりそうである。
脊髄反射で詩織ちゃんの手を掴み、こちら側へと引っ張った。詩織ちゃんは驚いた顔をしたが、抵抗することなく(できなかったのかもしれないが)こちら側へと引っ張られる。
その直後に詩織ちゃんがいたところを子どもが通り抜けた。ふー、間一髪だったね。詩織ちゃんに目を向けると…すぐ近くに彼女の焔のような紅い瞳があった。
僕の双眸が彼女の双眸を射抜き、彼女の双眸も僕の双眸を射抜いている。詩織ちゃんはぼーっとした顔で、僕の赤と金の瞳を見つめ続ける。静寂が場を支配する。
どれくらいの時間が経っただろうか?ほんの数秒?それとも数分程度?わからない。わからないが、とても濃密な時間を過ごしたことだけは分かる。そんな時間を終わらせたのは、やはり詩織ちゃんの可愛らしい声だった。
「へっ?はっ、はわ、はわわわわ!!」
急速に顔を紅潮させる詩織ちゃん。たしかにこの美しい顔は、君みたいな子どもにとっては刺激が強すぎたかもね(自惚れんなカス)。んん?なんかひどい罵倒が聞こえた気がするぞ?まぁ気のせいか。
「きゅう…。」
イルカの鳴き声みたいな音を発して、詩織ちゃんはうつむいてしまう。うーん、それでも手は握ったままなんだね…。別に構わないのだけど。とにかく、父様たちを探さなければ。
とはいえこんな人だかりの中では探すこともできないか。とりあえず人の少ないところに行こう。詩織ちゃんと繋いでいる手を引っ張ると、従順についてくる。なんか今までの言動からは想像できないね。
人混みから抜け出したと思うと、突然視界が黒に塞がれた。これはあれかな?視界を塞いでいるのは誰か当てるゲーム的なやつかな?
「皐月の目を塞いでるのは誰でしょう?」
僕の推測通り、この手の主であろう女性の声が響く。でもさぁ…いくらなんでも簡単すぎじゃない?僕のことを皐月って呼ぶ女性は一人しか存在しないんだから。
「なにをしているのですか…母様。」
母様であろう手の主に対して、僕はそう告げる。僕の言葉を聞いた手の主は、僕の目を抑えていた手をゆっくりと解く。答えが合っているかどうか確認するべく後ろを向くと、そこにいたのはやはり母様であった。
「ふふっ、気分よ…皐月。貴方も一子の親になればわかるわ。」
楽しそうな笑顔でそんなことを言う母様。ここで僕が言うべきことは…そうだね。母様の笑顔をさらに加速させる言葉かな?
「今の母様はすごく楽しそうなので、僕はなんでも構いません!!」
こんなところだろう。僕の思惑通り、母様は感極まったような笑顔を浮かべた。母様の手が僕の頭を優しく撫でる。なんでかわかんないけど、母様に撫でられると気持ちいいんだよね。これが母の力ってやつなのかな?
「やっぱり皐月が世界一可愛いわね。そうは思わないかしら、あなた?」
「音羽…皐月は世界どころか宇宙で一番かわいいと僕は思うんだ。もしかしたら前世はこの美貌で神様を魅了していたのかもしれないね。」
前世はただの一般人でしたよ、はい。神様を魅了なんてしてないし、できもしませんね。そもそも会ったことすらないのだから、容姿が伝わるという前提にたどり着いてない。
どう対応するか迷っていると、詩織ちゃんの両親…鈎宮ファザーと鈎宮マザーがやって来た。二人は呆れたような表情を浮かべており、その反応に僕も心のなかで苦笑するしかなかった。分かるよ、すごい分かるよ。さすがに親バカが過ぎるよね、うん。
「天弥…それと音羽さんもなにを言っているんだ。もう少し場をわきまえて発言したほうがいいぞ。今の発言…年頃の子どもなら、お父さん嫌いって言われるかもしれないからな。」
やはり鈎宮ファザーはまともなようである。この中だったら、僕の考える良心枠一位だよ。父様と母様は親バカだし、詩織ちゃんは宣戦布告してくるし、鈎宮マザーは芸能事務所に勧誘してくるし…改めて考えると、個性がすごいね。
鈎宮ファザーは次に僕のほうを向いた…って、僕?なにかしたかな?やらかした記憶はないんだけど。鈎宮ファザーはにっこりと笑みを浮かべて、僕にとっての死刑宣告と同意義の言葉を告げる。
「それで…どうして詩織がこんな状態になってるのかな?」
うーん……やばい、どうしよ。ハハッ…僕、死ぬかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます