第八話

「今日やるべきことは…そうですね。これから一年間、クラスメイトとしてともに過ごす仲間たちの顔を覚えてください。」




まぁ典型的な内容だろう。父様に聞いた話だと、自己紹介とか教科書配布は明日以降。今日は自分のクラスを確認するだけだ。父様に言われたことと言えば、六歳児にはなかなか難しいことを言ってたんだよね(と精神年齢大人の者が申している)。




自分が良いと思った人材にはツバをつけとけ…的なことを。まぁ人材はどんな時代にも不足しているものの一つだから、小さい頃から審美眼を鍛えろと言っているのだろう。子どものころなら、まだやり直しが利くからね。




あぁ、そうだ。人材といえば私立神野寺高校付属小学校には、特待生枠っていうのがあるらしいんだ。めちゃくちゃ高い学費を払わなくていい、一般家庭のための制度である。




その枠にもさまざまな種類があって、学力だけを求める枠や芸術性などを求める枠など、ほんとに多岐にわたる枠がある。一貫して言えることがあるとするなら、どれもすごく審査が厳しいということだろう。




全ての枠が埋まったりすることはなく、基準に至ればだいたい入ることができる…と言われている。その枠の基準を何十人も超えたなんて事態になったことがないらしいのでなんとも言えないが。




僕の隣に座る美少女さんも、おそらくは特待生枠で入ってきた生徒の一人だろう。いや、わかんないけどね?釘時くんに平民って言われてたから、一般家庭出身だと思うんだけど。




まぁ釘時くんの言う平民の基準がどこからどこまでかわかんないからさ。大企業の社長の子息じゃないと平民っていう基準だったら、ある程度金持ちの家でも平民になるんだよね。




まぁ特待生なのか、だとしたらどの枠で入ってきたのか知れるまでは、気にかけるくらいのことをしておこう。その後?それは要検討だね。特待生であろうとなかろうと、またいじめられたりするようなら助けたりはするよ?




特待生じゃなくても、すごい才能があるなら気にかけるし。つまるところ自分に害が及ばず、将来に期待できないのなら放置するってことだ。僕の在籍するクラスでいじめが起きたりしたら、いろいろと困るだろう?




なんで止めなかったのかって言われて炎上するかもしれない。そしたら父様と母様に迷惑がかかる。それにいじめが自分と同じ空間で起きていたら不愉快だからさ。おわかりいただけたかな?




✚✚✚




「それじゃあ今日はこれにて終わりにします。親からどうするのか言われている生徒はそれに従ってください。それ以外の生徒は校舎の入り口あたりに保護者がいるはずですので、そこで合流をしてください。」




僕は後者だね。だってなんにも言われてないんだから。そう結論づけて、教室を出ようとする。が、その前に見たことある顔の少女が教室へと入って僕の名前を呼んだ。




「ここにいたのね、橘皐月。お父様たちが待ってるから、さっさと帰るわよ。」




採りたてりんごお嬢様こと鈎宮詩織ちゃんである。そういえば言い忘れてたね。詩織ちゃんと僕は別クラスなんだよ。いやー、知り合いがいないとさびしいものだね。えっ?詩織ちゃんと知り合ったのも今日だろって?それはそう!!




それにしても、どうして詩織ちゃんがここにいるのだろうか?もしかして僕と一緒に帰りたかったとか?まぁそれは冗談だけど、言動から察するに父様と鈎宮ファザーが一緒にいるから、僕を連れて帰ろうという魂胆だろう。




「詩織ちゃん、どうしたの?」




まぉ確認しておくけど。コテンと首を傾け、可愛らしい仕草を意識して問う。先ほど天代くんで同年代にも僕の顔は利くと知れたため、安心してこういうことができるよ。




「はうあっ!!」




そんな愛嬌のある声とともに、顔を赤くさせて悶える詩織ちゃん。それを必死に抑えようとしているのだが、なんというか…丸わかりである。




「んんっ!!お父様とお母さんと貴方の両親が一緒にいるらしいので、お父様に貴方と一緒に帰ってこいと言われたのです。この私と一緒に帰れることに感謝しなさい。」




ふふんと胸を張るような仕草を見せる詩織ちゃん。そこだけを切り取れば立派なんだけど、僕からの視線に気づくまでだらしない表情をしていたことは知っているからね。




詩織ちゃんは教室から出て、さらにその先へと進んでいく。僕もその後を追うように、教室を出ていった。なんか忘れてる気がするのだが、まぁ気のせいだろう。




話は変わるんだけどさ、なんか詩織ちゃんの立ち振る舞いに既視感を覚えるんだよね。今生の記憶じゃなくて、前世で見たことある気がするんだ。なんだったっけ?




思い、出したっ!!アレだよ、悪役令嬢だよ。話し方がなんかそれっぽいし、家柄も申し分ないだろう?つまり詩織ちゃんは悪役令嬢ということだ(あくまで個人の推測です)!!




いやぁ、僕ってやっぱり天才(阿呆の真髄を極めた者)だったのかな?前世で嫁に馬鹿って言われまくってた気がするけど、彼女の言ってることは見当違いだったんだね。今生で才能が開花したって可能性もあるから、まだわからないか。




僕の才能問題はともかく、彼女が悪役令嬢(とは全く言ってない)だと気づけたのは凄まじい進歩だ。彼女がまともな人間になるよう育てれば、僕の悪役令息化をさらに止められるかもしれない!!




さらに悪役令息への道から遠のく(近づいてすらいない)方法を見つけ、内心でそうほくそ笑む僕であった。




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