第十話

さて…どうするべきだろうか。詩織ちゃんは今、なんというか…ヤバい状態になっている。だから自分の状態を説明することはできないだろう。だから僕がなんでこうなったのか、説明するしかないのだが…。




うん、それっぽい説明が思いつかないね。真実を話せばいいのではって?ムリムリ。僕の顔を見たらああなりましたって言ったところで、信じてもらえると思う?さすがに無理があるでしょ!!僕だって信じれないもん。




だけどここで嘘をついて、それがバレたりしたらもっと酷いことになる気がする。ほんとに、どうするべきだろうか。僕が返事に窮しているのを見て、鈎宮ファザーがさらに言葉をつけ足した。




「皐月くんが詩織を助けてくれたのは見ていたよ。その直後から詩織が今の状態になっているのも、見ていたからよく分かっているさ。だからどうしてこうなったのか、分かるのなら教えてくれないか?」




仕方ない、か。さすがに真実を話したほうが良さそうだ。まぁ信じてもらえるかは別問題だけどね。




「詩織ちゃんと走ってた子どもがぶつからないように、詩織ちゃんをこっちに引き寄せたの。そしたら詩織ちゃんと至近距離で目が合っちゃって…そしたらこうなっちゃったんだ。」




ポカンとした表情を浮かべる鈎宮ファザーと鈎宮マザー。そんな沈黙が5秒ほど続く。突如として鈎宮ファザーが肩を震わせたと思えば、彼の大きな笑い声が響いた。




「フフッ、ハハハッ、アーハッハッハッ。なるほど…たしかに前世で神様を籠絡したというのも嘘ではないかもしれないね。じゃないと詩織がこんなことになっている理由が説明つかないしな。」




ひどく楽しそうな笑顔でそう言う鈎宮ファザー。が、すぐにマジメな顔に戻って、僕に忠告らしき言葉を告げた。




「皐月くん。今の君には難しい話かもしれないけど、君の容姿は飛び抜けて優れている。だから身の回りのことには注意するようにしたほうがいいぞ。」




ほんとに難しいことを言ったね!?僕がただの六歳児だったら、まったく伝わってなかったと思うよ?意味は理解できたが、わからないフリをするためにコテンと首を傾ける。




「鈎宮さんはわるい人について行くなって言ってるのよ。」




なにを言ってるのか分かっていない(実際は分かっているのだが)僕に耳打ちで教えてくれる母様。ここは子どもらしく、元気に返事をするところだね。




「うんっ、わかった!!」




ワシャワシャと僕の頭を撫でる父様。そんな僕たちを見て、嬉しそうに目を細める母様。この時間がずっと続けばいいのに。そう考える僕であった。




✚✚✚




「んんっ、ここは?」




視界に急に光が入ってきて、若干身悶えする。ぼんやりとしている寝起き特有の頭を働かせて、覚えている限りの記憶はさかのぼる。




「たしか父様と母様に入学祝いをしてもらって……はっ!!今日から学校だ!!」




入学式が終わった後、僕は父様と母様と合流して、詩織ちゃんたちに別れを告げて車に乗った。そして父様が予約していたレストランでお昼ご飯を食べて、家へと帰ったのである。




そしたら次は父様や母様、使用人たちから入学祝いのプレゼントを渡された。そうして始まる入学祝いパーティー。それは午後八時くらいまで続き…そこで僕の記憶は途絶えている。




服はパジャマに変わっているし、ちゃんとベッドにいるので、お風呂には入っているだろう…たぶん。記憶がないからたしかなことは言えないんだよね。




まぁお風呂には入ってると思うので、どうやって戻ったのかに関してはまた後で考えるとしよう。重要なことは、今が何時か…それだけである。ないとは思うけど、これで9時とか言われたらヤバいからね。




すぐそこに置いてある呼び鈴を手に取り、チリンチリンと鳴らす。ほんの数秒後に部屋のドアがノックされる。僕が許可を出すと、メイド服を着た若い女性が入ってくる。




「お目覚めになられたのですね、皐月様。登校時間まではまだ1時間以上余裕がありますが、いかがいたしますか?」




その女性…綾原美南あやはらみなみさんは僕専属のメイドである。彼女が僕の専属になったのは前世の記憶が蘇って少ししてからであり、父様と母様からも多大な信頼を寄せられている。




「父様と母様は、もう朝ご飯食べてたの?」




「旦那様は。奥様はまだ食べておりません。奥様にご一緒したいとお伝えしますか?」




「そうだね…お願いできる?」




「えぇ、お任せください。少々お待ちください。」




そう言って、部屋から出ていく美南さん。と思ったら、一瞬で戻ってきた。たぶん近くにいた使用人の誰かに伝言を頼んだのだろう。




「それではお召し物を変えさせていただきます。」




いつの間にか持っていた部屋着を、近くの机に置く美南さん。ほんとにどのタイミングで取ってきたのだろうか?たぶん言伝に行った時だと思うけど…相変わらず、速すぎるんだよねぇ。




そんなことを考えながら、両手を上げる。えっ?女性に着替えされられるのは大丈夫なのかって?うん、もう慣れたよ。




最初はさ、抵抗感があったんだよ。でも美南さんにやってもらったほうがなぜか速いし、シワとかも付かないんだよね。怖くない?自分の身体じゃないのにだよ。ここに務めてる使用人は特殊能力でも持っているのだろうか?




そんなことを思う僕であった。




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悪役令息転生妄想譚〜シナリオ通り悪役令息にならない(シナリオは知らない)ために〜 @888fab

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