Bはまだ覚醒しない。


 Aは自身が買い集めた物を物色し、天面が透明のプラスチック製の中型の箱を取り出した。行儀良く並ぶ工具類の中からニッパーを取り出し、それをクルクルと廻しながら辺りを物色し始めた。

 Aはデスクライトを掴む。台座から伸びるコードの付け根をペンチで切り落とし、二本で対になっているその間に切り込みを入れ両手で割く。一方のコードの端をニッパーで優しく掴み外周を何度か回転させるとゴム製の外皮が剥けるように引っ張った。綺麗な銅線が露出する。

 続けてもう一本も同様にした。

 顕になった銅線を注射針にグルグルと巻き付けると、それを握った手をBの右足の甲に力一杯振り下ろしす。

 左右対称にBの足から伸びるコードの先はプラグソケットで繋がっていた。

 Aはそのソケットをポータブル電源へと差し込み通電スイッチをオンにする。刹那、パンと爆ぜるような音と共に煙が上がった。

 Aは慌ててプラグソケットを引き抜くと言った。

 「やだごめんなさい、お願い眠らないで」

 その懇願は叶わず、Bはぐったりと脱力した。

 Bが再び意識を取り戻す。

 それに気付いたAは話し始める。

 「ごめんなさい、私あんまり知識が無いから間違えてしまったみたいなの。でも今度は大丈夫だと思うの。見てこれ急速充電器を解してみたの。少し痛いくらいなら良いな」

 先ほどのプラグの頭が解体され剥き出された銅線と、充電ケーブルの銅線がよじり合わされ繋がっている。

 「このポータブル電源ね、凄い高かったの。災害時とかキャンプ用みたいで、大きいし重いし運ぶのが大変だったわ。でも確か二年前とかに満充電にしたきりなのに残量がまだ九割も残ってるなんて凄いわよね」

 Aは目を輝かせてポータブル電源のスイッチを入れた。

 先ほどとは違い大きな変化はなかった。

 だが通電時間が長くなるにつれBの筋肉は痙攣を始める。

 Aはそれを眺めながら語りかける。

 「これも確か映画だったかしら。椅子に縛った男に釘を刺してそれを照明用のスイッチへ繋げてね、スイッチを入れると電球が光って男は感電するの。私ね、やってみたいって思ってたの。でも無知だから随分と違う感じになってしまってごめんなさいね」

 ヒコヒコと硬直するBにはAの声など聞き取れてはいなかった。

 「でもつまらないわね」

 そう言ってスイッチを切ろうと手を掛ける、とその時Bは失禁をし始めた。

 Aはそれが足にまで伝えばどうなるか観察しようとも思ったが、また気を失わせてしまうのは可哀想だとスイッチをオフにする。

 「可哀想に、気持ち悪いわよね」

 そう言ってAはドライヤーを持ち出しプラグを繋ぐと温風の弱風にスイッチをスライドする。手をかざして温度を確認するとBの股の間に差し込んだ。

 AはBの股が乾き上がるまでその手を退けはしなかった。


 AはBの座る椅子を通路窓と平行になるよう回転させる。

 そしてナイロン製の布ベルトを取り出すと肘掛けのBの左手の親指以外の四指を肘掛と共に巻き付けきつく締め上げた。

 「布のベルトって無段階に締められるから便利よね。ねぇ、ピアノってどれだけ指が開くかが大事だって言うじゃない。私に何かしてあげれる事がないかしらって考えてたの」

 Aは残された親指を別の布ベルトで締め付ける。親指のベルトの端は解いたトラロープに編み込まれ強固に結び付いている。

 そのトラロープは通路の窓際でとぐろを巻いており、Aそこまで歩くと一際に大きいコンクリート片を持ち上げた。Aがそれを開かれた窓から放るとぱきゃんと音がした。

 そのコンクリート片には先程のトラロープが括りつけられており、長さの調整されたロープは地面へ到着する寸でに布ベルトを引く。僅か数センチの指の可動域を超えて引かれた親指はクニュとひしゃげていた。

 この日、ぱきゃんと云う音が十度この広間に響いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る