第3話

俺は急いでシャワーをしながら歯を磨き、最低限の身だしなみを整え家を出る。

 プレゼンは最悪なものだった。ダメだしの嵐だった。何も伝わってこなかった。この言葉がぐさっときた。俺自身何を伝えたいのかわからなかった。だから相手にもそりゃぁ伝わらないよなと思った。

 しょんぼりしながら廊下を歩くと、結城とばったり会ってしまった。

 ゲッと顔にでていたと思う。結城はにかー!と笑いかけてきた。

「よー!プレゼンうまくいったか?」

 昨日のことを気にしていないような笑顔が少し怖かったが、俺はむっとして

「お陰様で散々だったよ」

 と言い返した。すると結城は表情を変え、申し訳なさそうな顔をしながら

「昨日眠れなかっただろ?俺のせいだな……悪かったな……」

俺は驚き慌てて首を振った。

「違うよ!俺の力不足さ。あまり調べてなかったし……」

 なんとなく気まずい空気が流れる。

結城はにこっと笑い

「昨日は泊めてくれて助かったよ。今度お礼するわ。何がいい?」

 関わらないでほしいとは言えず、気になっていたことを聞く。

「家ってどこなの?」

「え?俺ん家?善斗の家から10分くらいのマンション。近かったから助かったよ。あ、今度俺の家くる?」

 結城の顔があまりにも優しかったので頷いてしまった。人の家に行くことはほとんどないので正直興味はあった。

「いつがいい?」

 え?いつがいい?もう決めるの?内心焦りながら、もう一つの疑問を聞く。

「彼女と会わない日で」

 結城は驚いた顔をして

「しばらくは彼女とは会わないつもりだからいつでもいいよ。いつがいい?」

 いつがいい?いつがいい?えーと

 今日は水曜日だから

「金曜日はどう?」

「金曜日ね。了解♪また連絡するわ」

 去る背中を見て少し思う。

 彼女としばらく会わないっていってたけど、うまくいってないのかな?

 考えた後、俺には関係ないと言い聞かせてデスクに座る。

 人の家に行くってことは菓子折りとかいるのかな?お酒でも持っていくものなのか?

 誰かに聞きたかったが、聞く人がいないことに気が付きGoogleに聞いてみることにした。

 ふむふむと読んでからはっと我に返る。

 何を楽しみにしてるんだ。いかんいかん。

 と一人首を振り仕事に戻る。

 なんだかんだ、結城と何食べようかなとか、菓子折り何にしようかなという、金曜日のことを考えながら過ごした。

 いつも長いと思っていた時間があっという間に過ぎ去っていったのにびっくりした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る