第2話
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俺はこいつの家を知らない。
今の現実はこいつが寝てしまったということだけだった。揺すったり叩いたりしたがぐーすか寝てやがる。明日も仕事だし俺はとりあえず帰りたい!仕方がないので自分の家に連れて帰ることにした。嫌だよ。ホント嫌だよ。でも仕方ないだろ?だいたい俺は他人を自分の家に招き入れたことなんてない。
俺より大きい男を介抱しながら自分の家に入れ、少し乱暴にベットに投げる。なんて重たいんだ!岩のようだった。
「つ……疲れた……」
俺もベットに倒れ込みたい所だが、シングルのベットに男二人。幅もきついが、精神的にもこんなのきついだろ。そして大問題がある。この家にはソファーがないのだ。一人暮らしの1LDK。眠れればそれでいいと思っていた。ベットと一人用の机と椅子。そしてTV。俺のベットにはすやすや眠る結城。
えー俺どこで寝ようか。家主なのに床かよーと冷たい床に転がる。
今日は疲れたなぁ……うとうとしたと思ったら記憶がなくなる。
しばらくすると温かいことに気がつく。今は11月だ。夜は肌寒い。そして聞こえるのは規則正しい胸の鼓動音。なんで温かいのかなとうっすら目を開けると向かい合った状態で結城に抱きしめられていた。
声にならない悲鳴が一度喉に詰まったが、きちんと悲鳴になった。
「ぎゃーーーーー!!!」
結城を勢い余って突き落とす。
「……えー……なんだよ……いってぇなぁ」
「俺床で寝てたのに!なんで?」
パニックになりながら起き上がる。
「夜中に目覚めてさ、トイレ行こうと思って。そしたら善斗床で寝てたから、申し訳ないなぁと思って、ベットに移動させたんだよ。」
「それならお前が床で寝ろよ!俺のベットだぞ!なーにが悲しくて男二人で寄り添って寝なきゃなんねーんだよ!ふざけんな!」
ついカッとなってしまい言葉が止まらなくなってしまった。
「だいたい昨日酔い潰れたから仕方なく俺の家に連れてきたんだ!目が覚めたならでてけ!」
結城はいつも笑顔でヘラヘラしているがムードメーカーな所があった。だから今こうしてショックを受けて悲しそうな顔をしている姿を見て、言ってしまった言葉を取り消すことができず後悔が押し寄せてきた。
「すごい体冷たかったからさ……気持ち悪かったよな……ごめん」
静かに出ていく結城を見つめしばらく呆然とする。ドアの閉まる音が悲しく響いた。
俺はあまり思ったことを口に出すタイプではない。人と距離を置くのには理由がある。感情が高ぶると言葉が止められなくなる。
だから嫌なんだ。人と関わるのは。
ふと時計を見てまた叫ぶ俺。
翌日苦情の通知がきていたのは言うまでもない。ここは壁が薄いのだ。
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