第2話

魔王様に日記を見せたら思いのほか喜んでくれた。

何回か吹き出しそうになっていたが、我慢していたところが最高に可愛かった。

「さすが魔王様今日も可愛い」

略して「さすまお」である。

これを流行らせたいが、魔王様に遠慮してしまう者が多いので現体制だと無理だろう。

幸い私も魔王様も普通の魔族10サイクル分は寿命があるので、いつかは国のスローガンが「さすまお」になるはずだ。


さて、村に結界を張った話をしただろう。実はあの村には他のエピソードがほとんどない。

当時の人間は12歳で成人を迎え、その後は長男以外の男子は街に出稼ぎ、女子は男子と結婚するか長男以外の男子と同じように街に出稼ぎするのが普通だった。


私は12歳を迎えた時、父に「ベスのしたいようにしなさい」と言われた。

父は農業のような継げる職業はやっておらず、私が「結婚するなら強い人とがいい」と言ったからだろう。

正直に言うと結婚したくないから言ったのだが、父はそこの辺りもわかっていたのだろう。

当時としては珍しい、子供を単なる労働力や自分の後釜として見ていない人物だったのは私にとって幸運だった。


私は世界を見て回るため、冒険者というものになることになった。

「無理に父さんと一緒にしなくてもいいんだぞ?」

と父は心配してくれたが、私には他の仕事は無理だと思う。


私は朝起きるのがとても苦手だった。

空気中の魔素が、人間界は薄いから仕方ないのかもしれない…

いや、他の魔族はそんな事ないな。これも魔王様の言う「個性」ってやつなんだろう。


そんな理由で冒険者を選んだ私だが、冒険者になるにはギルドに入る必要があるらしい。

父に付き添ってもらい、登録しに行った。


なんでも「ベスが可愛くていちゃもんつける輩がいるかもしれない。流石に娘が1日目で殺人犯になるのは嫌だ。」とか。

訳がわからないが、殺人は良くないことだとわかっている。

時には仕方ないこともあると父も言っていたし私もそう思っているが、基本的にしない。


だが、ギルドに登録するだけで殺人とは人間の街は修羅の国なのか?


そんな事はなく、無事に登録が終わった。

受付嬢のお姉さんが可愛かったので、

「お姉さんかわいい」

って言ったら照れてて更に可愛かった。

「ベスの方が可愛いよ」

親バカの父は無視する事にした。


冒険者登録も終わり、冒険者人生1日目である。

なんでも父が付き添ってくれるらしいので、最高難易度のものを選びたい。

父は親バカではあるが、英雄なので最高難易度の依頼を受けられる。


「ん、これにする」


ギルドの中の視線が集まってきて怖かったが、父を見ると皆散っていった。

父すごい。

紙に背が届かなかったので、父が受付に持っていってくれた。

「ギルドカード更新に金貨3枚が必要になります」

「ツケでいいか?」

父ださい。


英雄の信用によってギルドへのツケが成立したので、依頼を受ける事ができた。

「初めての依頼がドラゴン討伐か〜」

簡単すぎた?

「いや、俺は薬草採取だったからな。文字通りレベルが違うよ。」

薬草?

「色々な薬に使うんだ。ベスの場合魔法が万能すぎるけど、普通の人は違うんだからな〜」


私は怠惰を極めた結果、喋らなくても意思が伝わるようになった。

喋らないのは楽でいい。

歩くのもめんどくさくて飛んで移動することもあるけど、父との散歩は楽しい。


そろそろ着くかも

「了解、後ろで見とくよ。危なくなったら言ってくれ、転移魔法でベスだけは飛ばすから。」

私も転移魔法使えるよ?

「転移魔法だけは負けてないからな『死人0の英雄』の力は伊達じゃないぜ。」

父は謙遜が上手い。

私は父が回復魔法もめちゃくちゃ上手いことを知ってる。

魔族は回復魔法じゃ回復しにくいのに、指を切った時回復してくれた。

魔族の特性を教えてくれたのも父だ。

父すごい。好き❤️

「パス繋いだまま言うのやめてくれ、恥ずか死しちゃう」

繋がってた、照れる。


「全部終わり」

照れを誤魔化す為に普段よりだいぶ速いペースで討伐してしまった。

「じゃあ素材しまって帰ろう。」

疲れた。転移してほしい。

「しょうがないなあ」

この感覚、父に包まれてるみたいで好き。

「パス繋いだまま言うのやめて⁉︎」

アレスに包まれてるみたいで好き。

「なんで言い直した⁉︎」

ここぞと言うときは名前呼びが刺さるって、村のおばさんが言ってた。

「おばさんは何を教えてるんだ…」


ギルドに直接着いたとき一瞬見られたけど、父を見てまた元に戻った。

父、便利だけど直接はやめた方がいいと思う。

いつか人にぶつかりそう。


「金貨30000枚ですね〜あはは、こんな桁見ることないと思ってました。」

受付嬢さんが苦笑いしている。


父、これってどれくらい?

「一生遊んで暮らせるな。普通の人間の場合は。」

私は魔族だから足りないかもしれないな。魔族はどれくらい生きるんだろうか。

「…」

答えづらい質問だったか。ごめん。


それは置いておいて、お金はどうしよう。

「一旦ギルドに預けるか?保管してると狙われ…それはないか、少なくともドラゴンを討伐できない奴は来ないだろ」

無限収納魔法使えるから自分で持っとく。

「それがいいかもな」


「父、依頼してもいい?」

「なんだ?金貨3枚以上だと嬉しいぞ」

父が冗談混じりに言った。

「世界中の父が行った事がある場所を案内して欲しい。私は転移魔法は使えるけど、行った事がない場所が多すぎる。報酬は金貨10万枚。お願い。」

「金貨10万枚⁉︎」

ギルドが途端に騒がしくなる。

そりゃそうだ、3万枚でも遊んで暮らせるなら10万枚なら何ができるのだろうか。

「そもそも10万枚なんて持ってるのか?いや持ってるんだろうなあ」

トカゲさんを潰してまわった時に回収していったものが1000万枚はあると思う。

トカゲさんたち全員1万枚は持ってたからね。

「その依頼、S級冒険者アレスの名において受けよう。」


ギルド、通す?

「いや、A級以上は個人依頼が認められているからそれでいこう。じゃあ早速出発しようか、ご主人様?」

それ、嫌だ。お姫様の方がいい。

「じゃあ小さいプリンセスで行こうか」

父との楽しい旅が始まった。


「先に金貨3枚払ってからでいい?」

むう…父ださい


魔王の感想 : 今更だけど…ベス何歳⁉︎






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